社長の営業

赤字の会社の経営幹部は、赤字をなくすための努力をしなくてはなりません。

「並行在来線だから赤字は仕方ありませんね。」

何てことは私には言えません。
なぜなら言ったとたんに自分の存在意義を失うからです。

「じゃあ、お前なんか要らないよ。」
ということになりますから。

では鉄道会社の営業とは何かというと、鉄道会社って、基本的には何も営業活動なんかしなくたって、売り上げの90~95パーセントは自動的に上がるようにできているんです。
つまり、黙っていても切符を買って乗ってくれる人たちが売り上げの95%ぐらいいるんです。
一生懸命営業活動をして、例えば貸切列車を仕立てたり、地域の皆様方を旅行に連れて行ったり。そういうことを一生懸命やっても、数字としてはせいぜい1~2パーセント上がるかどうかなんです。

だから、鉄道会社は熱心に営業活動なんかしなくても大丈夫なんです。

というのは実は過去のお話しで、コロナがあって都会の鉄道会社も今は必死です。
田舎の鉄道会社なんか、何でもやらなければならないし、やることが無ければ落穂拾いのように細かなものを拾っていくことをしなければ生き残ってはいけないのです。

ではどうするかというと、実は黙っていても95%のお客が来てくれていた業界ですから、自分から営業をしてお客様を探して来ることができない。
どこに需要があるのかもわからない連中の集まりですからね。
で、営業数字の伸びが見込めなければどうするか。
決まってますよね。
余分な経費をかけないように業務縮小です。

最近、都会の駅ではみんなみどりの窓口を廃止してるでしょう。
お客さんの事なんか考えていない。
オンラインシステムだってまともに機能しないような会社が、まず最初にやるべきことはそういう所じゃないと私は思いますが、売り上げを伸ばせない以上他に何か数字を出すには、経費削減。
現場を縮小してお金が出て行くことを防ぐことしかありません。

でも、よく考えてみてください。
みどりの窓口の客単価っていくらでしょうか?
新幹線とか特急列車のお客様ばかりですから、一人少なくとも数千円。
1万~2万の人だってたくさんいるでしょう。
それだけ客単価が高い商売をやめてしまうのですから、「この人たちはお役所以上にお役所的だ」と揶揄されているのも納得できますね。

で、皆さん多分鉄道をやめて他の移動手段に移行する人たちも出て来る。
もしかしたら、そういう逃げて行くお客様が買っていただけたはずのキップの金額が、窓口閉鎖で浮く費用よりも大きくなるかもしれませんが、おそらくそんな計算はしているはずもなく、したとしても敢えてやるぐらいですから、まあ、どうでも良いのでしょう。
目先の数字を減らせれば。

確かに、長期的に見れば窓口に駅員さんを置く必要はないかもしれませんが、とりあえず今はキャッシュが必要な時期のはずですから、改札口の横で切符を手売りしてでも目の前の列車の空席にお客様を乗せるのが仕事だと私は考えますが、お客様を並ばせておいてその間に列車が出発しちゃうぐらいですから、どうもそうじゃないようですね。

そう、長期的に見れば人口が減るわけですから、電車に乗ってくれるお客様の数も減るのです。
上越市は数年前まで20万都市でしたが、20万を割り込んで19万都市になった。と思ったらすでに19万を割り込んで18万人台に突入しているわけで。これってわずか5~6年の出来事ですからね。

こういうことは加速していきますから、多分5年後には15万人台になるでしょうけど、それを食い止める具体策を講じている話は聞きませんから、つまり、長期的に見たら高校生も減るし、電車に乗る人も減るんです。

だったらどうするか。

電車に乗ってくれる人を他所から連れてくるしかないんです。

そのためにはわざわざ出かけて行ってまで乗りたくなるような列車を走らさなければなりません。
それが、雪月花であり、観光急行なのです。

そして、他所からお客様が来てくれれば、電車だけ乗って帰る人はまずいませんから、地域で飲食をして、おみやげを買って、何人かに1人は泊ってくれるかもしれませんから、地域にお金が落ちる。

人口が減少する分、こうしてお客様を増やす努力をしなければ、田舎の鉄道は地域と共倒れになるし、逆に増やす努力をしてお客様にいらしていただければ、地域とともに浮上することができる。

これが社長としての私の考え方であり、方針なのであります。

ていうか、現時点でこれ以上の方法があれば、その人が社長をやればよいのですが、日本全国を見渡しても、田舎の鉄道会社で私のやり方以外でうまく行っているところはないのではないか。
それゆえに私はあちらこちらから「どうしたらよいか」という相談を受けて、あるいはお客様のいそうなところへ出かけていって宣伝をしたりしているのです。

駅長さんなら地元の商店街を回って「ビール列車乗りませんか?」と集客して歩くのが営業活動でしょうけど、社長としての営業活動は、直接的な誘客はもちろんですが、インターネットで情報を発信することや、鉄道には縁がないようないろいろな業界を回って会社の知名度を上げることなど、どんどん外に出て、自分の足で歩くしかないのです。

社長室に居たってお金はやってきてくれませんからね。

ということで、コロナが明けて世の中が急に動き始めましたので、今まで止まっていたものが一気に動き出した感があるのが7月なのですが、私は今日も営業活動で、いろいろなところで会社の宣伝をして、皆様方にえちごトキめき鉄道を知っていただく努力をしているのであります。

で、本日お会いしたのはこの方。
工藤公康さんです。

雪月花の宣伝をして、パンフレットをお渡ししたら、「おぉ、いいですね。」

しばらくお話をさせていただく時間がありましたが、うちの息子が野球をやっていたことにも興味を持っていただきました。

WBCの監督の話はどうなのよ?
と皆さん思うでしょう?

ない、ない。

ご本人の所には何の話も来ていないそうですよ。
マスコミがネタ探しで騒いでいるだけのようです。

本人がそう言うのですから生情報です。

でもって、工藤監督と私には3つの共通点があることに気が付きました。

・子供の頃、貧乏だったこと。
・お互いに子供が5人いること。
・奥さんには頭が上がらないこと。(奥さんのおかげで立派になれたという意味ですよ。)

3つも共通点があるのですから、これも何かのご縁ということで、奥様御同伴でぜひ、雪月花に乗りに来てくださいまし。

本日はありがとうございました。

シーズンが終わりましたら新潟でお待ちいたしております。