常識の違いではなくて感覚の違い

四国の県議会の先生たちが南米に視察へ行く。
1人当たりの旅費が260万ということで世の中が大騒ぎになっていますね。

私は不思議です。
なぜならば金額ばかりが先歩きして、その視察そのものの意義や、決定に至るまでの経緯は論じられず、東京に本社があるマスコミまでが、旅費ばかりをトップニュースで報じているからです。

まず、日本から南米を往復しようと思ったら、飛行機代だけで百万円以上です。
議員旅行は格安航空券を探している観光旅行者ではありませんから、基本はビジネスクラスでしょう。
何のためにビジネスクラスが存在するのか。

まず、予約の変更や経路変更ができること。
これが一番大きい。
もちろん航空会社の変更もできます。
そして、疲れが少ない。
日本から飛行機を乗り継いで南米に到着したら、便にもよりますが、20時間近くかかるでしょう。
着いたらクタクタです。
そしてすぐにスケジュールが詰まってる。
帰りも同じ。
日本に帰ってきてすぐにスケジュールがあるでしょう。

エコノミーだって予約変更できる航空券はノーマル券ですから10万15万では買えません。正規運賃ならビジネスとさほど変わりはないはずです。

エコノミーで行って、着いてから1日休養、帰ってから1日休養したら、2日が無駄になります。
そう考えると、重要な任務を持っているお仕事の方でしたら、ふつうはエコノミーは使いません。
これ、海外出張の常識です。
そのためにビジネスクラスがあるのです。

ホテルだって今どきは高い。
先進国の中で日本が一番物価が安い。

コロナが明けて私も台湾に行きたいですけど、今まで泊まっていた台北のホテルが2万以上するんですよ。
4泊したら10万。
だから躊躇してますけど、治安の悪い南米で、セキュリティーがしっかりしたホテルだったら、最低でも5万8万はするでしょう。
訪問先との位置関係などを考えたら、ホテルも限られるのではないでしょうか。

ちなみに私、会社の規定金額の範囲内でホテルを取ろうとして、目的地からちょっと離れたところに取ったことがありますが、結局目的地までタクシーですから、だったら最初から少し高くても目的地の近くにホテルを取った方が合理的です。
なぜなら、観光じゃなくて仕事だからです。

東横インがいつまでも6800円で泊まれると思っているような人たちが、「税金」という伝家の宝刀で「けしからん」と言ってるのは、彼らにお仕事で行く海外出張という常識が無くて、おそらくビジネスクラスなんて乗ったことがないから、聞いた話、想像で「豪華な食事、ゆったりとした座席」だけをイメージして、「けしからん」と言っているのでしょうけど、だとしたら常識の違いではなくて感覚の違いから来ているのでしょうね。
なぜなら重要な任務を持った海外出張は、基本、ビジネスクラスでというのが世界の常識ですから。

その県議会の出張規定がどうなっているのかはわかりませんが、一つだけ言えるとすれば、出入りの旅行業者がここぞとばかり正規運賃、正規料金で見積書を出していることは十分に考えられますから、私だったらあと1割程度は安くなるような気がしますが、それでも1人200万は越えますから、本当だったら、その出張の意味をもっと議論するべきではないかと私は思います。

昔話で恐縮ですが、今から30年以上も前のこと。
K国の次期大統領が特使としてモスクワを訪問したんです。
当時のK国はロシアとは国交がありませんでしたから、もちろん直行便はありません。
成田空港経由で私が働いていた航空会社でモスクワを往復しました。

私はどちらの会社にも精通していましたから、まだ30そこそこでしたけど、スムーズな乗継ができるようにお手伝いをする任務を仰せつかりました。

会社としては、K国出身のアテンダントを前もってモスクワに送り込んで、帰りの便に乗務させるという手配までしました。

もちろんファーストですよ。

で、次期大統領の乗った飛行機が成田に着きました。

ドアを開けたら顔見知りのK国出身のアテンダントが笑顔で次期大統領に付き添って真っ先に降りてきた。
ファーストですから一番先です。
そのまま警護警察に付き添われて次期大統領は成田からK国へ行く飛行機へ乗継です。

私が先導して一緒に行きました。

そしてK国行の飛行機に乗り込んだんです。

もちろん、次期大統領ですからK国の皆さんみんなよく知っています。
機内で歓声が上がりました。

そして次期大統領は目の前の座席に座ったんです。
そう、エコノミークラスの一番前の座席に。

もちろんファーストが付いている便ですよ。
でも彼は座らなかった。

私は不思議に思って顔見知りのスタッフに聞いたんです。
「ファーストじゃないの?」って。

そしたら、
「彼は庶民派で売っているので、ファーストに座ったらイメージがくずれますから。」って。

なるほど、そういうことか。
自分の国に降り立つ時には、ファーストになんか乗ってたら何言われるかわからない。
でもね、モスクワから成田まで10時間ファーストに乗ってきて、K国までの2時間をこれ見よがしにエコノミーに乗っていくって、ずるいというか悲しいというか。

30過ぎたばかりの若造が、世の中というのはそう言うものかと知った瞬間でした。

ということで、今回の騒動を見ていると私はこの時のことを思い出すわけでして、バブル崩壊した後かれこれ失われた30年。
今の日本人は30数年前のK国と同じような感覚なんでしょうね。
ということはこの30年間足踏みをしていた日本は議論するところを間違えていて、多分それが国民の感覚としては「正しい税金の使い方」という伝家の宝刀がちょうどうまく収まる鞘になっているのでしょうね。

気が付いてみると日本は世界的に遅れた国になっているし、所得だってそのK国に負けています。

日本の教育そのものが標準的なマジョリティを基準として、抜きんでる者を伸ばす教育をしていないのと同様に、エコノミーが標準ということであれば、その標準を越えるビジネスクラスそのものが「悪」になっているのでしょうか。

この問題、日本の現状を考えるとおそらく全国共通ですから、かなり根が深いと私は考えます。

自分たちの代表を外国に送り込むのにエコノミーで良いの?
それだけで格下に見られるというのが私が知る限りの世界の常識ですが、「けしからん」と言われる人たちは、おそらく感覚的に嫌悪感を持たれていることが根本におありでしょうから、常識論的には議論にはならないと思います。

ビジネスクラスだって格安のものを探せばエコノミーより安いのが出て来るんですけど、そういう議論が盛んな地域ではビジネスクラスそのものが「悪」でしょうから、出張に行かれる皆さんは正規運賃のエコノミーで行かれていて、結果として格安ビジネスよりも高額な切符を買っているという現状も私は知っていますが、だとすれば「庶民の税金を無駄遣いしているのはどっちなんでしょうか?」となるわけで、本当は本末転倒なんですけどね。

えきねっとだって普通車指定席よりもグリーン車の方が安い列車がありますから、経費節減というのならばどちらを選択するかは言わずもがなですが、議員先生はそういう時に普通車に乗ったら「税金の無駄使い」になるのでしょうか。

私は民間人ですから、ビジネス、エコノミーにはこだわらず、その時その時でリーズナブルな方を選択するようにしております。
もちろん会社の規定との差額は自腹ですけどね。

あぁ、台湾行きたい!