私のDX、あなたのDX

最近DX、DXと言われていますね。

DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。
トランスフォーメーションというのは「変わっていく」ということですから、デジタルによって私たちの生き方や生活がどう変わっていくかということが、すなわちDXであると私は考えています。

でもね、60を過ぎてくると、そういうことがなかなか難しい。
何が難しいかというと、BCPはわかっていてもBTSは「???」という年代ですから、すなわち世の中の変化についていくことが難しいわけで、多分ですけど、自分がわかったつもりになっていることの半分ぐらいは間違えて理解しているのではないかと不安になるのであります。

今日も会社の会議で各部署の管理職の皆さんに向かって、「私たちは変わらなければなりません。そういうことを理解してください。」などと偉そうに言いましたけど、たぶん言われた側は「???」って人が多かったのではないかと思います。

ということで、私なりのDXの理解の仕方をお話ししましょう。

つまり、デジタル技術で私たちの生き方はどう変わっていくべきかということでありますが、これは仕事のやり方の変更ではなくて、生き方の変更であって、そのための考え方の変更なのであります。

ということで、60歳を過ぎたお爺さんにわかりやすいように、自分なりのDXの解釈。

昭和39年に東海道新幹線が東京から新大阪間に開通しました。
これで、東京の人は大阪に日帰りが普通にできるようになりました。
何しろ片道3時間ですからね。

それまでは在来線の特急列車が最速で6時間半かかっていました。
往復で13時間ですから、朝6時に東京駅を出たら、大阪に行って帰ってくるだけで13時間。現地に2時間滞在したとして戻ってくるのは夜の9時です。
まぁ、現地2時間滞在など現実的ではありませんから、東京の人にとって見たら大阪というところは1泊2日で行くところだったわけです。

でも、新幹線ができて片道3時間になったら、大阪日帰りは楽勝ですよね。

ということで、今では大阪日帰り出張は当たり前の世界です。

でもって、私は子供のころから不思議に思っていたのですが、それまで2日間かかってやっていた仕事が1日でできるようになったのですから、残りの1日は会社に行かないでお休みできるはずなんですが、実際にはそうではない。
2日間でやっていた仕事が1日でできるようになったら、次の1日は別の仕事をするんです。
だったら給料が倍になるかといえば実はそうではない。

2日間かかってやっていた仕事が1日でできるようになったら、空いた1日は別の仕事をして、給料は同じなんですね。

では、誰が儲かるかというと、同じ給料で倍働いてもらえるわけですから会社が儲かる、はず。
ところが、それは自分の会社だけがそうならば儲かるかもしれませんが、世の中すべての会社が2日間かかってやっていた仕事を1日でやれるようになったのですから、それが当たり前になって、どこの会社も特別儲かるわけではない。
逆に、今まで2日間かかってやっていた仕事を、今までと同じように2日間かけてやっていたら、どんどん世の中から遅れてしまい、会社の競争力がなくなって、生き残っていくことができない。

つまるところ、新幹線ができて世の中が便利になったばかりに、みんな忙しくなってしまって、誰も幸せになることができない世界になったのです。

これは新幹線だけじゃなくて、飛行機もそうだし、電話もそうだし、インターネットもそう。
それが当たり前になってしまうと、今までよりは効率は良くなったかもしれないけれど、じゃあいったい誰が得をして、誰が幸せになったのでしょうか?

そして昭和の頃からそういう時代が多分50年以上続いてきて、今日があるわけです。

そこで出て来たのがDX。

「これからはDXの時代だよ。」

つまりデジタル技術を上手に使って仕事のやり方や考え方を変えていくことで、何がその延長線上にあるかというと、「私たちが幸せになること。」なのだと私は考えます。

新幹線の例に戻りますけど、新幹線ができて今まで2日間かかっていた大阪出張が1日で済むようになったら、空いた1日は自分が自由に使って、やりたいことをやる。こういうことを追及していくのがDXということなのではないか。

60歳を過ぎたお爺さんとしては、自分の凝り固まった脳みそで理解するためには、そんな風に考えてみるわけでして、そうなるとAIとかIoTとか、いろいろな技術革新というのは新幹線や飛行機のようなもので、つまりはツール。
そういうツールを上手に使って働き方というものを変えていくことで、自分の時間や家族と過ごす時間が増えて、自分たちが幸せになっていくということが、すなわちDXなのだと私は考えることにしています。

例えば、この8月15日にトキめき鉄道で企画している「全駅停車の急行列車」や、8月中4週連続で土曜日に走る夜行列車などは、「何のためにそういう列車が走るのですか?」と言われても、目的地へ行くために利用するためでないことは明らかで、つまりは自分の時間というものを列車の中で過ごしてみたいという「トキ消費」の商品なのでありますが、ふだん一生懸命お仕事や勉強をして、空いた時間にトキ消費を楽しむなんて言うのもDXだと思いますし、最近ではダムでワ―ケーションなどということもあるようですが、それも技術革新あればこそ。

会社へ行かなくても、空気がきれいで雄大なダム湖のほとりで仕事ができれば、その人にとっては、それはそれは幸せでしょう。

そういうことがDXなんだと私は思います。

そして、そういう価値を見つける人たちがどんどん増えてきているわけでして、その証拠に、全駅停車の急行列車も毎週土曜日の夜行列車も、ご予約好調で満席近くになっているのでありますから、世の中は確実に変化していると私は確信しているのです。

さて、あなたにとってDXは何でしょうか?