飛行機を強制着陸させちゃったお兄さんのこと

先週、マスクをするのを拒否してすったもんだのやり取りの挙句、飛行機を強制着陸させてしまったお兄さんがいました。

昨日は同じようなことで離陸前に機内からつまみ出された人がいたとか。

う~ん。

実は私もマスクは嫌い。
好き嫌いの嫌いというよりは、マスクをしているとなんだか具合が悪くなる。
でも、それが病気だかどうかはわかりませんよ。
だから一人の時はマスクはしない。
そういう点では、マスクをしたくない人の気持ちはわかります。

また、特に昨今の自粛要請に従わない人をいろいろ揶揄する風潮も気になります。
いわゆる自粛警察の皆様方のお話ですね。
皆と同じ態度をとらない人を問題視するような感覚は、正直おかしいと思います。

でも、だからと言って無視はできません。
昨日の夜、湯上りに冷蔵庫をのぞいたらビールがない。
どうしても飲みたいので徒歩10分のコンビニに出かけました。
そうしたらお店に入る直前に気が付いた。
「マスク忘れた。」

さあ、どうしましょう。
お店に入るときはマスクは必需品。
でも、10分歩いてお家には戻りたくない。
そして、ビールが飲みたい。

そこで私、マスクなしでコンビニに入りました。
そしてかごを持ってビールを入れて、一緒にマスクを入れました。
そう、マスクを切らしちゃったんで買いにきました的なおじさんになったのです。
なんでそんなに気を使わなければならないのかなあ。
ありがたいことにレジのお兄さんは黙ってお会計を済ませてくれました。

マスク、当面足りてるんですけど、7枚入りだから、まあ、そのうち使うでしょう。

ということで、なんだか自分が悲しくなったのです。

だから、マスクをしなければならない風潮に異議を唱えるお兄さんの気持ちはよく解かります。

でも、お兄さん、やっぱダメだろうなあ。
気持ちはわかるけど同情も同調もできない。

なぜなら、飛行機の中は議論の場でもなければ個人の見解を主張する場でもないからです。

マスクをするのは「協力要請」だから、拘束力はない。

とか何とか言ったって、飛行中にトラブル起こして、前方のギャレーにまで行ってクルーともめてたっていうじゃないですか。
まあ、当然アウトでしょうね。

鉄道も航空もそうですが、輸送の現場には輸送を預かる責任というものがありますから。
協力要請だとか努力義務だとか言われて罰則があるなしにかかわらず、問題がある人、あるいは問題を起こしそうだとクルーが判断したら飛行機には乗れません。
ただそれだけのことです。
離陸前に散々もめて、飛行中にがたがた言い始めたら、私が機長だったらやっぱり途中で緊急着陸しますね。
なぜならば、当然のことですが、お客様はその人ひとりじゃありませんし、このまま飛行し続けたら目的地まで安全が維持できないと考えられるからです。

離陸前に散々もめて、離陸したら席を立って前方のギャレーにやってきて自分の主義主張を延々とクルーに言っているとすれば、完全に業務妨害でしょうし、そういうお客は何をするかわかりませんから、いつクルーにつかみかかるかもしれない。クルーは電話で操縦室の機長に状況を報告しているけど、こういう時は機長が操縦室のドアを開けて機内の様子を確認するなんてことはできませんから、CAさんからのインターホンの内容だけで状況を判断して決断しなければなりません。

「そのお客様の座席番号は?」
「21Cです。」
「ああ、離陸前からもめていた人ね。」
「はい。」
「で、今はまだもめてるの?」
「はい。」
「収まりそうにない?」
「ちょっと難しいです。」
「もう一度警告出して座席に戻るように要請して。」
「やりましたが、聞いていただけません。」

とまあ、暗号を交えてこんな感じでインターホンでやり取りして判断しなければなりません。
そして機長が下したのが緊急着陸という判断です。

つまり、お兄さんが言いたいことはわかるし、正しいかもしれませんが、飛行機の中は議論をする場所でもなければ、お兄さんの主義主張や見解を聞く場でもないのです。

飛行機の運航が乱れればたくさんのお客様に迷惑がかかる。
あるいは危険を及ぼすことになるかもしれない。

どうしてそのぐらいのことがわからなかったのでしょうか。
そして、そのぐらいのこともわからない人の主義主張って、何なのでしょうか。

ということで、ネットの世界ではお兄さんのご意見に賛成の人たちもたくさんいるようですが、冒した行為を擁護することはできませんし、航空会社の運航乗務員の判断を非難することもできません。
航空の現場というのは限られた時間の中、限られた情報で判断しなければなりません。
つまり、飛行機というものはそういうものなのです。

まして、マスクの件は急に言われたわけではなくて、十分に事前告知を行っているわけですから。

次に航空会社として考えるのはこういうことが連続して起こらないようにしなければなりませんね。
だから、お兄さんには実質損害分の損害賠償が行くでしょうね。
いくらになるかは知りませんが、A320だし、お客様半分程度だったようだし、飛行機の運用も今の時期はそれほどタイトでもなさそうですから、200万円ぐらいでしょうかね。

いつだったか成田からアメリカに向かっていたUAの飛行機の中で、ゴミをCAに渡すときに「This is Bomb」(爆弾です。)と言って手渡したおじさんがいましたが、クルーは飛行機を成田に引き返して緊急着陸をしたことがありました。
おじさん的には「ジョークのつもりだった」らしいですが、許されないんですよ。
飛行機って、それだけピリピリしている乗り物なのです。
おじさん、確か航空会社から800万円の損害賠償を請求されたと思います。

まあ、一つだけ言えることは、国が中途半端な要請文ではなくて、航空会社に対してきちんとした規則として通達を出す必要があることは事実でしょう。
飲食店やイベント開催、夜のお店もそうですが、すべて協力要請であって、あとは事業者任せというのは、やっぱりこの国のおかしなところだと思います。

皆さん、コロナも何となく先が見えてきた感がありますが、もう少し頑張りましょうね。

ご協力をよろしくお願いいたします。