コンテナ輸送とパンツマネージメント

交通論を勉強していた頃、コンテナ輸送の話を聞きました。
当時の貨物輸送は有蓋車(屋根のある貨車)や無蓋車(屋根のない貨車)に直接荷物を積み込んで運ぶスタイルが主流でしたが、コンテナ輸送というものに変わりつつある時代でした。
「戸口から戸口へ」
コンテナなら途中でトラックから貨車に荷物を積み替えたりすることなく、荷主のもとから届け先へ直接運べるということで、コンテナは優れものと言われていました。

時代はトラック輸送に向かっていましたが、主要都市間は鉄道で運び、ターミナルから目的地までの間をトラックで運ぶというスタイルに鉄道貨物が生き残りの道を探していたのだと思います。

その時、先生から言われたことを思い出しました。

「コンテナ輸送というのは、コンテナに荷物を積んで走るだけのコンテナ数では足りない。」と言うのです。

コンテナは、まず、荷物を積み込むためにお客様のところに向かっていくコンテナが必要で、荷物を積み込んで輸送中のコンテナが目的地の駅に到着するまでの鉄道輸送の後に、お届け先のお客様のところへトラックで運ぶ、そのコンテナも必要だ。
つまり、有蓋車や無蓋車なら鉄道輸送の部分の貨車だけで良いのですが、コンテナ輸送には少なくとも3個分のコンテナが必要である。輸送に必要な部分のコンテナだけではなく、3倍の数のコンテナが必要であるということです。
もちろん実際の輸送に使うコンテナは1個だけですが、戸口から戸口への行ったり来たりの段取りの中では、積み込んでいるコンテナもあれば降ろしているコンテナもあるということです。

今考えれば、確かに貨物のターミナル駅ではどこでも空のコンテナが積んである景色が見られますが、つまりはああいうことなのでしょう。
空のまま積んであるコンテナがあるということは、1個のコンテナで荷物を運ぶためには4個のコンテナが必要になるということかもしれません。

航空輸送もそうですね。
到着した飛行機からコンテナが出てきます。
そのコンテナは引っ張って行って、荷物や貨物を降ろします。
でも、そうしている間に、これから出発する荷物や貨物は既に別のコンテナに入れられて飛行機のそばでスタンバイしていて、さっさと積み込まれていきます。
ということは、コンテナは最低2個必要になります。
飛んでいった目的地でも同じですね。
つまり、1つの輸送に対してコンテナは最低でも3個必要なのです。

当時は国鉄の財政がひっ迫していましたから、コンテナをそんなにたくさん作らなければならないなんて大変だなあと思ったことを思い出しました。

では、なぜ、こんなことを思い出したかというと、60近くになって初めて単身赴任なるものをしてみると気がついたことがあるんです。

それは、パンツの数。

新潟の家と千葉の家と、行ったり来たりすると、パンツの数のコントロールが必要になるのです。

今はいているパンツがあります。

新潟から千葉に帰って来ると、千葉でパンツを脱いで洗濯してもらいます。
そのパンツは洗濯機の中に入るわけですが、パンツを脱いだらすぐに次のパンツを箪笥から出してはきますからパンツが2枚必要ということです。
何日か自宅に滞在してパンツをはき替えますが、帰る時に、当然パンツをはいて帰りますから、それだとちょうど行って来いで、パンツのバランスが取れます。

ところが、千葉から新潟へ直接帰るのではなくて、どこかでお仕事をしてそこに1泊してから新潟へ帰るとすると、その1泊分のパンツを1枚余分に持って千葉を出ますから、つまりは千葉のパンツが1枚減って、新潟のパンツが1枚増えるわけです。

逆もあるわけで、例えば新潟から出張で札幌へ行って、1泊した後に千葉へ帰るとすると、新潟を出る時にはいているパンツの他にもう1枚札幌ではくパンツを持って出ますから、つまりは新潟のパンツが2枚減ります。
ということは千葉から新潟へ帰る時に今はいているパンツ以外に1枚パンツを余分に持って帰らないと新潟のパンツが足りなくなってしまうのです。

つまり、これがパンツのバランスシート。

きちっとしたパンツ・マネージメントをしなければ、どちらかが不足することになる。
千葉のパンツが不足する分にはカミさんに買いに行ってもらえばよいのですが、新潟では基本的に車の生活をしていませんので、歩いて行かれるところに私のパンツを売っている店がない。
洗濯も毎日しているわけではないので、常にパンツが何枚残っているかを気にしながら生活しなければならないのです。

こういう経験は単身赴任特有のものでしょうが、60近くになって初めて気がついたわけです。

航空会社も貨物鉄道会社も常にコンテナのストックコントロールをしているわけでありますが、単身赴任のおじさんもパンツのストックコントロールが必須なわけです。
そして、コントロールが必要なのはパンツだけではなく、アンダーシャツもワイシャツもハンカチも、はたまたスーツもきちんと計算して行ったり来たりしなければなりませんから、なかなか大変なチョンガ-生活なのであります。

別宅にきれいなお姉さんがいる御仁は、パンツの数だけでなく、柄やデザインも統一しなければなりません。さもなければお家に帰って「あら、あなた。どこでパンツはき替えてきたの?」となりかねませんから、そういう御仁はきっと器用か、あるいはマメなのか。
さぞかし大変だろうなあと思う還暦おじさんでした。

ということで、22時半、高田帰着。

今日もよく歩きました。

明日から一週間頑張りましょう。