今年は暦の関係で、一度仕事始めをしてもまたすぐにお休みという方も多いことでしょう。まだ正月休みが続いている方もいらっしゃいますね。
ということで、お休みモードの皆様方へ初夢の続きをどうぞ。
昨日までは長距離を移動する観光列車のお話をいたしました。
客車列車で、できるだけ建造費を安くして利益が出やすい構造にすることで、他業種からの参入を得やすくして鉄道そのものを活性化するとともに、都市間輸送としての役目も補うことが北海道の観光列車に求められる姿です。というお話でした。
でも、北海道という土地柄や、札幌以外の地方へ観光客を呼び込むといいう点では、札幌を中心とした運行の観光列車だけではなくて、地方都市周辺の比較的短距離を走る観光列車も当然必要になります。
今日は、そういう地域内の観光列車としてはどういう列車を作ればビジネスにふさわしいのかというお話をしてみましょう。
こういう話をするときは架空の路線ではなくて、実際の路線を例にして話を進める方がイメージを抱きやすいと思いますので、私の大好きな釧路を発着する釧網本線と花咲線を走る列車を考えてみたいと思います。
まず、釧路ー根室、釧路ー網走、あるいは釧路ー白糠といった所要時間2~4時間程度で運行上折り返しが必要になるような区間ですから、終端駅で機関車を付け替えるような客車列車ではなくて、気動車による列車が必要になります。
また、もともと列車本数が少ない区間ですから、観光列車といっても地元の皆様や一般のお客様にお乗りいただける列車にしなければなりません。
そのうえで、わざわざ乗りに来たくなるような列車にするというのが、釧路を中心とした観光列車の定義になります。
そこで、まず問題となるのは気動車の製造コストです。
1両最低でも2億円、今話題の電気式気動車になると3億円以上します。
とてもじゃないけど、そんな金額を初期投資にかけたらいくらビジネスが軌道に乗ったとしても回収することは不可能です。
では、なぜJR北海道が、そんな1両3億円以上もして、その割には30数名しか乗れないような新型電気式気動車を導入したがっているのか。その理由は補助金で導入してもらおうという魂胆だからで、自己資金でビジネス展開を考えていないからです。
補助金で導入した車両は、当該年度一括償却の対象になりますから、翌年度以降の減価償却が発生しません。つまり、決算書上では黒字が出やすい構造になります。だから、補助金で新型気動車を導入したがっているのでしょうけれど、一般の民間事業者がビジネスに進出する場合は、そんな考えは通用しません。初期投資をいかに低く抑えるかということが重要なのは言うまでもありません。
別の話をします。
最近、快速エアポートで苗穂工場の横を通過すると、ついこのあいだまで使用していた特急用のディーゼルカーを重機でガツンガツン解体している姿を目にします。会社の人間に言わせると「もう使えないから解体する」という話ですが、本当にもう使えないのでしょうか。
そりゃあ、都市間を結ぶ幹線の特急列車として朝から晩まで時速100キロ以上のスピードで走らせる用途としては「もう使えない」かもしれませんから、補助金頼みで新車を手に入れることしか考えていない会社の人間の心理では「もう使えない」ということになるでしょう。でも、例えば地方のローカル線で、ゆっくり、のんびりと観光列車として、50~60キロぐらいの速度で片道3時間を1日1往復する程度の運用であれば、まだまだ使える車両たちが、「もう使えないから」という理由で、ガツンガツン解体されているのです。
だったら、それを頂けばよろしいのではないでしょうか。
JR北海道が新型特急を導入して、今まで使っていた特急用車両が不要になる。
その不要になった車両を譲っていただいて、それを種車にして観光列車として改造することで、2億円もあれば中間にハイデッカーグリーン車を組み込んだ4両編成が出来上がります。解体するのにだってお金はかかるのですから、タダだって良いはずです。
実は、JR北海道が使わなくなった車両をどんどん解体しているには理由があって、補助金で新型車両を導入する場合は、それまで使用していた車両を抹消しなければならないという規則があるのです。
補助金には使用目的があります。JR北海道の特急列車を新しく置き換えるための使用目的は、「新型車両に置き換えることで安全性や利便性が向上する。」というような作文になっているはずですが、こういう使用目的で置き換えたものは、そのまま使い続けることは認められていないんです。だから、目の前から消さなければなりません。補助金を使って新型車両が走り始めたあとで、古い車両が残っていて、まだ使っていたら、会計検査院がやってきて、「けしからん」という話になるのです。
では、どうして安平町にキハ183が譲渡されたのかというと、その譲渡金額が新車を購入するときの補助金から差っ引かれているわけで、例えばの話、新車が1両2億円だとして、国から全額補助が出ていたとして、キハ183を500万円で売却すれば、国から受け取る補助金の額が19500万円に減額されるということなのです。
JR北海道としてみたら、どっちだって同じですから、担当者としてせいぜい心配なのは「本当に買ってくれるのかどうか。」ということで、補助金の申請期日までに本当に買ってくれるかはっきりしてもらわないと仕事ができない。でも、買い主はクラウドファンディングで資金集めをしているから「買います。」とはっきり返事ができない。
まあ、せいぜいこんなところですったもんだしていたと思います。
だから、1両の金額なんてどうでもよくて、500万円でも50万円でも、いくらでもよかったというのが本当のところでしょう。
つまりはそういうからくりがあるのです。
であるならば、1両50万円で4両編成を2編成、プラス部品取り用に2両、合計10両もらっても高々500万円です。それに足回り改修して車体の造作をし直したとしても多く見積もったとしても1編成2億円程度ではないでしょうか。
現状の法律では、どこかの会社が車両を買い取ることはできても、その車両を再び営業用としてJR北海道の線路上で走らせることは不可能ですが、そんなことを言っているから北海道の鉄道はダメになったのですから、ダメにならない仕組みづくりをする必要があるわけで、だったら法律を変えていただきましょうというのが私の考えです。
さて、2億円で観光用気動車4両編成が出来上がりました。
でも、この4両編成には「地域需要にも対応する」という大切な使命が課せられています。
観光列車を走らせて商売をしようという新規事業者が、ビジネスとは全く関係ない「地域需要にも対応する」わけで、つまりは自社の資金で導入した設備を、全く関係のない地域住民が利用するのですから、ちょっと知恵を使って、国と、北海道庁と、地域自治体にお願いをしてお金を出していただきましょう。地域の観光振興に寄与し、地域住民の足にもなる観光列車ですから、国、道、自治体合わせて1億円ぐらいの補助金は出しても悪くないでしょう。釧路市2千万、根室市1千万、網走市1千万。残りの6千万を国と道で3千万出していただく。目的が目的ですから、それほど大きな金額でもないはずです。
そうすると、4両編成1編成の設備投資が1億円になります。
客車列車の場合は7両編成1編成で5億円でしたね。
それで十分に採算に乗るビジネス展開ができるのですから、気動車編成で4両で1億円の初期投資であれば、もっと採算に乗せやすいというのは明らかです。
こうすれば、驚くほど安い金額で、気動車観光列車の出来上がりです。
ついでにDE10も1両購入して釧路に置いておけば、車両が不調になった時の救援にも使えますし、そんな列車が走ったら、それだけで「わざわざ写真を撮りに来たくなる」地域になるでしょう。
とまあ、こんな感じで、釧路をベースにした観光列車の出来上がりです。
では、実際にどのように走らせるか、考えてみましょう。
****************************************************
釧網本線、観光列車【しれとこ号】
4両編成の内訳
1号車:普通車自由席
2号車:特別指定席、食堂車厨房
3号車:ハイデッカー食堂車
4号車:グリーン車
こんな感じでいかがでしょうか。
地域住民や観光客が利用できる一般列車であることから、1号車は普通車自由席とします。
現状、1両で走っていますから、その分ですね。
ただし、座れない心配が嫌だという観光客のために2号車に半室程度の特別指定席を設けます。4号車はグリーン車です。
指定席料金は3000円ぐらいいただきましょう。残り半室は食堂車の厨房として、特別指定席のお客様にはお飲み物のサービスをいたしましょう。
3号車はハイデッカー食堂車。座席定員は40名。
どうしてそれほど観光列車に食堂車をこだわるかというと、観光というのは食であるということ。食堂車が重要な体験要素であること。北海道には素晴らしい食材が揃っていることなどが理由ですが、一番大きな理由は単価が上がるということです。
おいしいお食事を完全予約制でロスが出ないサービスをする。そうすることで地域にお金が回りますし、この観光列車を運営する会社の重要な収入源になるからです。
そして、40名というのは団体の1バス対応の必須条件となります。その定員40名を確保するためには、厨房は食堂部分とは別に設けなければなりませんから、それを2号車に持って行くわけです。
釧路ー網走、釧路ー根室程度の乗車ですから、食堂車のお客様は食前酒、前菜、メインコース、デザートと、景色を見ながらお食事をお楽しみいただいている間に3時間ぐらいすぐに経過しますね。到着した先でバスが待っていれば、団体旅行のコースとして組み込んでいただくことは十分可能です。
一例として
釧路10:00発ーーー厚岸(11:30)--厚床(12:30)ーー根室13:30到着
根室到着後、バスが待っていて、納沙布岬、霧多布等を回って夕方釧路に到着するコースと
最初に釧路から根室へバスで向かって、
根室14:00発ーー厚床(15:00)--厚岸(16:00)--釧路17:00到着
という往路バス、復路列車という2コースを作れば、往復で2組の団体を入れることが可能になります。
往路列車のグループは車内で昼食をお召し上がりいただいて、午後は道の駅でお土産のお買いもの。
復路列車のグループは行きに厚岸のレストランで昼食を頂いて、沿線観光の後、帰りの列車の中でカフェ、バータイムをお楽しみいただく。
こうすることで、沿線にある、鉄道じゃなければ見られない絶景と、バスじゃなければ見られない絶景の2つをたっぷりお楽しみいただけるコースの出来上がりです。
釧路発の日帰りバスツアーですが、お食事の内容を工夫して特別感ある限定お土産を宅配するサービスを付ければおひとり様3万円コースができるでしょう。
食堂車を平日は団体貸切、土休日は個人向けに販売すれば個人のお客様でもお楽しみいただけますし、団体に出していた席の残りを2~3週間前に個人向けに開放すれば、ネットの時代ですからいくらでも販売するチャンスが出てきます。
グリーン車のお客様にはグリーン料金8千円ほどいただいて、特製駅弁とドリンクサービスをすれば、最果ての旅も今のJRよりははるかにましになるでしょう。
こうすることで、少なく見積もっても1日120万円ほどの収入になりますね。
別途バス代がかかりますが、1台のバスの使いまわしですから通常のバスツアーの半額の経費です。
一般のお客様が乗る地域の列車でもありますから、乗務員はJR北海道にお願いして、その分の人件費は不要でしょう。
だって、1両で走らせるのも、4両でも運転士を乗せることに変わりはありませんからね。
団体利用者の分も運賃をお支払いするのですから、燃料や車両の整備などもJRにお願いしましょう。
今、予備の乗務員として後ろの運転台でカーテンを下して寝てる人間にきちんと接客をする訓練の場を与えるのですから、ありがたいことのはずです。
1編成の車両ですが、1日交替で花咲線と釧網線を1往復するダイヤで運行すれば、同じお客さんが両方の路線を楽しむことも十分可能です。
根室から17時に帰着した列車をさらに白糠往復のチョイ飲み列車で運行すれば、季節によっては釧路の夕日を体験できる最高の列車になりますし、地元のおじさんたちも「これなら乗ってみたい」という列車になるでしょう。
おつまみと飲み物で3000円程度でいかがでしょうか。
釧網本線の場合は、現在片道3時間かけて運転している快速列車に1時間プラスして4時間運転とすれば、朝釧路を出て、夕方戻ってくる運行ができます。
あるいは、もっとゆっくり走って、
釧路ーー網走ーー知床斜里ーー網走(駐泊)
網走ーー釧路ーー標茶ーー釧路
という2日間の行程で走らせるのも良いでしょう。
釧路を10時に出て14時に網走着。その後お客様を入れ替えて網走ーー知床斜里を往復し夕方戻るコース。
翌日は網走を10時に出て14時に釧路着。同じようにお客様を入れ替えて釧路ー標茶を一往復して夕方釧路に戻るコース。
1日に2回3回お客様を入れ替えることで、客回転を上げて、売り上げを上げることが大前提です。
1億円で4両編成を1編成導入するだけで、これだけビジネスプランが膨らむのですからやってみない手はないですよね。
まして、地域輸送にも貢献するということになれば、会社のイメージも大きく上がるというものです。
道内7空港の民営化事業と合わせて、釧路IN、女満別OUT、あるいはその逆といったコースを組み立てることも容易です。
どちらかの会社さんで、そういう事業にご興味がある会社さんがいらっしゃいましたら、ぜひ、私までご連絡ください。
こういう事業は、最初にだれがやるかということが問われるものです。
人がうまくいっているのを見て、「じゃあ、うちも」というのでは大きく評価が分かれます。
今でしたら、パイオニアになれますよ。
鉄道や旅行の知識を持つ専門家集団が対応させていただきます。
国と道を巻き込めば失敗することはありません。
年の初めに大きな目標を持って。
ご興味のおありの企業様のご連絡をお待ちいたしております。
この路線に満員の観光列車がやってくる。
充分「正夢」になると思いますよ。
あとは描いた夢を実現する「やる気」の問題です。
最近のコメント