ものごとはシンプルに考えましょう。

週刊プレイボーイの記事の中で、JR北海道立て直し策として私は逆上下分離を提案しました。

 

日本で盛んに言われている上下分離というのは、地元の自治体が線路を所有して、鉄道会社が列車の運行を行うというスタイルですが、もともと上下分離という考え方は、アメリカやヨーロッパでは、国や公共企業体が線路を所有し、民間会社が列車の運営を行うものであって、地元の市や町がお金を出すというスキームではありません。

JRは考えてみれば公共企業体が形を変えたものですから、JRが沿線の市や町に上下分離の分担金を背負わせるなんて言うのはもってのほかで、私はまやかしだと申し上げているわけで、だからJRは下の部分、つまり、線路の維持管理をやりなさいということなのです。

するとここで、疑問に思われる方もいらっしゃると思います。

どうして運賃収入も入らないのにJRが線路の保守をやらなければならないのですか?

ということです。

 

まず、JR北海道は会社発足後30年間、上の部分の営業をやってきて、お客さんがいなくなり、商売がダメになったという現実があります。

そのJRに、今後、地元の行政が線路の維持管理のお金を出して、引き続きJRが列車のオペレーションをやるということは、何の合理性もありません。だって30年やってきてダメになったんですから、今後も同じ会社がやってよくなるはずなどないからです。

実は週刊誌では紙面の都合上割愛されておりますが、JRにとってみたら、現状は線路の保守点検(下部)をやりながら、列車のオペレーションや営業活動(上部)をやって、ローカル区間は上も下も赤字なわけですから、その上の営業赤字が無くなるだけでも、経営再建にとっては大きなメリットになるのです。

ではなぜ下の部分をやらなければならないのか。ここが問題なんですが、実はJRは30年前の会社発足時に、国から多額の経営安定基金を入れてもらっているのです。

国鉄が数兆円という大赤字を作って解散してJRに変わりましたが、民間会社になる時にJRはその国鉄の赤字を棒引きにしてもらいました。その上に、基金という大金を国からもらっているわけです。

JR北海道が国からいくらもらったかというと、細かい金額は忘れましたが約6800億円です。

良いですか皆さん。30年前の6800億円ですよ。

今の金額にしたら1兆円規模の金額を、国鉄の借金を棒引きにしてもらった上に、国からもらっているわけです。

 

基金というのは、そのお金を運用すれば、運用益で鉄道の赤字部分を補てんすることができますよというお金なんですが、当時の金利は7%とかありましたから、6800億円あれば年間500億円ぐらいの赤字なら何とかなると考えられていたのです。

ところが、その後のバブルの崩壊で予定通りの運用益が出ないから、いよいよ基金を取り崩すところまで来ているというのが今回の再建話の発端なのですが、その基金は原則取り崩しできない仕組みになっていますから、JR北海道としては困り果てているわけです。

そういう各種ストーリーが30年前に国鉄からJRになる時にあったわけで、30年経って、当時の事情を知る人が少なくなってきたのをいいことに、しらっと、なかったことにしようとしているというのが、どうも見え隠れしているわけです。

 

だから、その6800億円をもらっている以上、線路の維持管理ぐらいはちゃんとやりなさい。

というのが、私が提唱していることなのです。

 

 

30年前のお約束が書かれた新聞広告です。

・全国画一からローカル優先のサービスに徹します。

・明るく親切な窓口に変身します。

・楽しい旅行を次々と企画します。

・会社間をまたがっても乗り換えもなく、不便になりません。運賃も高くなりません。

・ブルートレインなど長距離列車もなくなりません。

・ローカル線もなくなりません。

 

40代以下のJRの職員は良く読んでおいた方が良いですよ。

これが民営化に当たって、政府が国民に約束したことなのです。

そして、「きちんとやりますから許してください。」といって国鉄の数兆円の借金を棒引きにしてもらい、おまけに基金まで税金から出してもらったのです。

(棒引きというのは、たばこ税などに転嫁して、結局国民が今でも払っているのです。)

 

石破さんが言っているように、確かに国が悪かったかもしれませんよ。

でも、お金もらってるんですから、お約束守りましょうよ。

という、じつに明瞭でシンプルなことなんです。

 

そして線路の保守だけを基金からまかなえば、貨物からの線路使用料も入るわけですから、経営再建の道筋ができるんです。

 

では、もし、廃止にしたいとJRが申し出るとするとですね、例えばですよ、JR北海道の現在の営業キロ数は約2500kmですよね。

そこに6800億円の基金が入っているということは、1kmあたりいくらの基金がありますか?

大雑把に計算しても約2.7億円ですよ。

JR北海道が、例えば釧網本線を廃止したいと申し出るとしたら、釧網本線は全長約170kmですから、2.7億円×170km分の基金をお返ししなければならないということなんです。

つまり、釧網本線を廃止するのだったら460億円の基金を返さなければならない。

今までのJR北海道の路線存続問題では、誰もこのことに触れていないんです。

そりゃそうですよ。

だって、行政の担当者だって、当時はせいぜい中学生ぐらいだったわけですから、国鉄の民営化なんて歴史上の話でしかないんですから。

 

でもね、「釧網本線を手放すなら460億円の基金をこちらによこしなさい。」と、そういう話の筋をちゃんと通せば、その金額を原資にして、別会社を作ることで、そこに民間の知恵を入れれば釧網本線のような路線だって十分に運営していくことができるのです。

だから、沿線自治体に対して、下の部分の費用負担をお願いしたいなど、「どの口が言ってるんだ!」ということで、実に巧妙に仕組まれたまやかしなのであって、そういうまやかしが平気で言えるようになったのが、30年という歳月の結果なのであります。

 

いろいろ大人の事情はありますが、ものごとはシンプルに考えましょうよ。

 

沿線自治体の皆様。

1km2.7億円分の基金をJRからもらって、鉄道会社を分離させた方がずっと良いですよ。

それに国と北海道がほんのちょっと手を添えれば、釧網本線も宗谷本線も、根室本線だって、いくらだって廃止にしないで済むし、その方が沿線地域も合わせて活性化するチャンスはあるのはいすみ鉄道をご覧いただければご理解いただけるのではないでしょうか。

 

そういう経緯をずっと見て来た私が言うのですから間違いありません。

 

夕張は、当時まだ物心も付かなかった子供で、そういう経緯を何も知らない代表者が一人でJRとネゴしてしまったことが災いになると私は考えています。

 

▲ちょうど42年前の今日、昭和50年(1975年)4月5日。

室蘭本線追分にて。

225列車先頭に立つD511120。

機関車に乗っているのは当時中学3年生の私です。

 

ねっ。北海道の鉄道を知り尽くしている男なのです。

 

だから、難しいことを並べないで、物事はシンプルに考えましょう。