ものごとはシンプルに考えましょう。 その2

昨日のブログで、国鉄からJRになる時に、ローカル線の末端までしっかり経営をするというお約束があったという話をしました。

このお約束は国民とのお約束で、そのために、税金を使ってJR北海道には経営安定基金というものを投入しました。

つまり、税金からJR北海道という株式会社にお金を上げたのです。

その金額が6800億円。

とてつもない金額です。

そして、30年経って、「やっぱり自分たちには無理ですから、末端区間のローカル線は廃止にしたい。」と言い始めたのです。

その口実として、あろうことか、上下分離という話を持ち出して、「路線を存続させたいのならば、地元の行政が下の部分である線路設備の維持管理のお金を出してください。」という話を持ち出したのです。

地元の行政がお金など出せるはずがないのを百も承知の上で、「お金出してください。さもなければ路線の維持は困難です。」と言うのですから、これは相談ではなくて、「廃止を認めさせるための屁理屈」であって、そういうことを言いだしたということが、30年経過して、ほとぼりが冷めたと思っているということです。

 

だから、この話はとんでもないまやかしで、まことしやかに国民を欺いて、自分たちだけが考える正義を通そうとしているということだと私は申し上げているのです。

 

そこで、昨日は、私からの提案で、「もし、路線を廃止したいのであれば、国からもらった基金を路線長に合わせて国民にちゃんとお返ししなさい。」という話をしたわけですが、国民にお返ししなさいということが、すなわち、北海道庁や地元の行政が出資する形で別会社を発足させて、そこに都会の大企業など、民間の知恵を経営に投入すれば、鉄道の運営は絶対にうまく行くはずだし、少なくともここ30年間やらせてきて、結局鉄道をダメにしたJR北海道に今後も経営を続けさせるよりは、ましな結果が出ることだけは明らかなのです。

 

こういう基本的な考えのもとで、昨日は約6800億円の国からもらった経営安定基金を、全長2500kmの路線長で割って、1kmあたり2.7億円が、鉄道を廃止するのならば、基金から差っ引いて北海道民へお返しする金額だという計算根拠をお示ししたのですが、実はこれが私の人間としての優しいところでありまして、JR北海道にとって見たら、実にありがたい提案というか計算なのであります。

 

その理由は、経営安定基金をJR北海道の在来線全路線長の2500kmで割って、1kmあたりの金額を出しているからであります。なぜかというと、経営安定基金というのは、採算が見込めない路線でもきちんと維持していくための基金でありますから、つまりはローカル線のための基金であって、収益性の高い幹線区間には適用にならないからであります。

JR北海道の路線で言えば、函館本線、室蘭本線、千歳線のうち、幹線ルートである函館ー長万部ー東室蘭ー苫小牧ー札幌と、函館本線の小樽ー札幌ー旭川間は、経営安定基金の適用外の区間でありますから、全長2500kmのうち、480kmほどは十分に採算が取れる区間でありまして、もしここも赤字だというのであれば、それは会社としての経営努力が足りていないということになりますから、その幹線区間の赤字を経営安定基金で補てんすることは、税金の不適切な使用方法なのであります。

 

だから、本当ならば、6800億円の基金を割る数字は、2500kmではなくて、幹線分を差し引いた2000kmということになるわけで、だとすると、計算としては6800億÷2000kmになりますから、1kmあたりの基金は3億4千万円ということになるのです。

これが、ローカル線を廃止するのであれば、基金をきちんとお返ししなければならない金額ということになります。

 

それを1kmあたり2億7千万円と申し上げているのですから、JR北海道にとっては実にありがたい提案ではないでしょうか。

 

1km3億4千万円で計算すると、日高本線の鵡川から先、様似までの区間を廃止する提案を地元にしているようですが、だとしたら鵡川ー様似間は116kmありますから、JR北海道は国からもらった6800億円の基金のうち、395億円を国にお返しする。あるいは、お約束を守れなかったことで不利益を被る地元の自治体に渡さなければならないのです。

それを310億円で良いですよというのが私の提案ですからね。

 

JR北海道の問題というのは、シンプルに考えれば小学校の算数で解決する問題なのです。

ところが、このように、JR北海道の再建問題というのは、実にいろいろな所にまやかしがたくさんあるわけで、大人の事情最優先で、ああでもないこうでもないとやっている。そうやって時間稼ぎをして、30年前のことをいろいろ覚えている人が少なくなってきたから、今このタイミングで出してきているのです。だとしたらあと10年後、20年後になれば、ほとんど誰も国鉄からJRになった当時のお約束など知らない時代になりますから、今、この時点で、はっきりさせておかなければならないと私は考えるようになりました。

 

北海道の路線は、幹線区間だって赤字なんです。

つまり、動脈から出血している状態です。

そんな時に、末端の毛細血管からの出血の話を持ち出してきて、「赤字ですから廃止にします。会社を立て直ししなければなりませんからお金を出してください。」では、理論のすり替えも甚だしいですから、そんな言い分は許してはいけないということなのです。

 

そして、ひとつだけ言えることは、何度も申し上げますが、JR北海道がこのまま上の部分の運営をやって行っても、うまく行くはずなどないということは確かであり、そんな経営しかできない会社に、沿線自治体は線路の維持管理のお金を払う必要などないのであります。

 

昭和52年(1977年)長万部駅。

函館本線経由の普通列車(右)と室蘭方面の普通列車(左のキハ)が停車中です。

特急でも急行でもなく普通列車同士ですが、ホームは旅行者でにぎわっています。

 

北海道の列車はいつでも若者たちでにぎわっていました。

そして、こういう光景は今の時代ならいくらでも再現可能なはずですよ。

 

 

 

だって、ほら。

 

取り立てて見るところもない千葉県の山の中の駅だって、これだけ賑わうんですから。

日本人だけでなく、外国人の憧れの的である北海道でできないはずないじゃありませんか。

 

鉄道会社単体で採算性を考えて出来なかったのですから、今度は鉄道会社単体で考えるのでなく、トータルで考えてみましょうよ。

 

なんたって北海道なんですから。