熊本大地震

今朝夜が明けると、昨夜の大地震の大きな被害がテレビの画面から飛び込んできました。
この震災でお亡くなりになられた方や、被災された皆様方のことを考えると、本当に心が痛む思いです。
心からお見舞い申し上げます。
熊本市内が大きな被害を受けたということで、熊本電鉄が大変なことになっているのではないかと思っていましたが、熊本電鉄の友人から、幸いなことに地震当時に走行していた電車も脱線することなく緊急停止して、お客様にも乗務員にもけがはなく、鉄道施設にほとんど被害もなく、職員の皆様方も無事であるという連絡が入りました。
皆様どうぞご安心ください。
新幹線が脱線したのも回送列車でしたし、熊本という大都会を襲った震度7という大きな地震の割には、被害が少なかったのも不幸中の幸いだったと思いますが、余震が続いているようですので、まだまだ油断ができません。熊本の皆様、くれぐれもお気を付けください。
さて、新幹線も在来線もストップし、高速道路も通行止めという、都市間交通が完全にマヒする中、福岡から鹿児島まで航空会社が臨時便を飛ばしました。昨夜の9時半に地震が発生し、今日すぐに臨時便を運航できる体制にあることに驚きました。
大阪からも熊本へ臨時便が出たようですが、考えてみれば、私がいつも思っているように、空港と一部の航法援助施設が運用できれば、飛行機はすぐにも飛ぶことができるわけです。
これに対して鉄道や高速道路は、全区間のうち、途中の1か所でも不具合が発生すると、もう走ることができません。動脈としての機能が途切れてしまうようなものです。
有線と無線の違いのようですが、その途切れた有線の部分の損傷具合いかんによっては、数日、あるいは数か月も輸送の動脈としての機能が果たせないというのが弱点であるということが今回も露呈した形です。
新幹線だって、博多から新玉名とかまでなら線路は無傷かもしれませんが、新玉名に折り返し設備がなければ走ることができません。これは私が先日も申し上げた「双単線」にしてあれば、少なくとも1本の列車を行ったり来たりさせることぐらいはできると思いますが、設計思想にそういう発想が入っていませんから、「百かゼロか」になるわけです。
そんな中で、私が高く評価したいと思うのが、在来線の線路の点検が済んだとたん、ふだんは特急列車が走らない在来線を特急列車を臨時で走らせ、新幹線のバイパスルートとして博多ー熊本間の鹿児島本線がきちんと機能したということです。
昨年にも数回ありましたが、東海道新幹線や東北新幹線が突然ストップしたときに、東海道線や東北本線はバイパスルートとして全く機能しませんでしたし、1か所で新幹線がストップしてしまうと、ほぼ全線で運転ができなくなるような有様でしたが、今回は運転再開とともに、鹿児島本線に特急列車が走り、都市間輸送としてきちんと機能したのには驚きました。
2011年に九州新幹線が博多まで全線開業したときに、それまでの鹿児島本線は特急街道としての使命を終えていました。
ふつうならば、そうなるのでしょうが、JR九州は通勤ライナーを兼ねて、在来線に特急列車を1往復だけ3年間ほど残しておきました。2年前にこの1往復の博多ー熊本間の在来線特急の見直しが行われ、やはり福岡への通勤ライナーとして、博多ー長洲間で在来線特急を走らせていますが、長洲というのは熊本の約50kmほど手前の駅で、長洲から熊本までは特急列車がこの2年間走っていなかったのです。
2年間特急列車が走らない区間を、昨日の今日でいきなり特急列車が営業運転するのは、例えば停止位置目標をどうするかとか、乗車位置案内をどうするかなど、いろいろ検討しなければならない問題があるのですが、本日13時の運転再開とともにJR九州はこの区間に臨時の特急列車を何本も走らせているんです。それは、実は博多から長洲駅に到着した通勤ライナーが、そのまま回送列車として毎日熊本まで運転されていたからなんです。
つまり、いろいろ大人の事情で並行在来線を自社の運行路線として残した。そして、そこに、地元の利便性のために博多へ行く通勤ライナーとしての特急列車を走らせて、その列車を熊本まで回送運転していた。このようなことが結果としてJR九州のBCP(Business Continuity Plan)となっていて、今回のように新幹線が動かない時のバイパスルートとして、在来線を瞬時に機能させることができたのです。
それだけではありません。車両のやりくりだって大変なはずですよ。いまどきの鉄道会社に、そんなに遊んでいる車両などありませんから。
そのような状況の中で、JR九州のような大きな会社が、サッと動ける体制になっている。
これはすごいことだと思います。
輸送というものに大きな使命感を持っているということですね。
現場は大変な混乱だったと思います。
でも、その混乱の中、博多という大都会の駅で、臨時列車を設定し、その列車に旅客を誘導し、ほぼ9割以上の乗車率で走らせることができたのは、やはりBCPがきちんと機能したということになると思います。
こういうことは高い評価を受けるべきではないでしょうか。
実際の状況を見ていたわけではありませんが、大きな鉄道会社が臨機応変にここまでできるんだということ拝見し、大変勉強になりました。
聞くところによると、今度、「ななつ星」は並行在来線の肥薩おれんじ鉄道に入線するようになったようですね。
今は分断されている鹿児島本線ですが、こういう列車を走らせることで、災害等があった場合でも役立つことになるかもしれません。
非常事態の時のためにわざわざ何かを準備するのではなく、ふだんから使用しているものや方式が、非常事態の時にそのまま使えるというのが、本当の意味でのBCPかもしれませんね。
JR九州をはじめ、各鉄道会社の現場の皆様。
本日はさぞかし大変な勤務だったと思いますが、お疲れ様でした。
復旧に向けてまだまだ長い道のりが続くと思いますが、地域の皆様方の輸送を支える尊いお仕事です。
ぜひ、皆様方のお力で、地域の復興を支えてください。
蔭ながら応援させていただきたいと思います。