そんなもんでしょう。

先日、飛行機に乗って行くようなところにあるローカル線の人がいすみ鉄道に視察にやってきました。
お話をお聞きすると、お金はないけれど何とか観光鉄道としての取り組みをスタートしたいという内容です。
40歳ぐらいの「長」が付くタイトルの方がお二人でお見えになられたのですが、お二人とも私の2冊目の著書を携えられていて、お一人などは、本の各所に付箋がしてあって、「ここに書かれている内容は全く同感です。」とか、「この部分には共感します。」などと熱心にお話をされます。
対応に出たいすみ鉄道の40歳の主任運転士に対して、「そう思いませんか?」とか聞いているのですが、
うちの運転士の方は「????????」
なぜなら自分ところの社長が書いた本など読んでいないからです。
私は思います。
「そんなもんでしょう。」
逆に自分で大金を払っていすみ鉄道で運転士の訓練をやっているような最近の人はみんな私の著書を読んでくれていて、「サインしてください」と事務所の中で近づいてきます。
自分で飛び込んできたということは、それなりの覚悟があるし、私がやっていることに共感を持ってくれているわけですから、まあ、そんなもんだと思います。
観光シーズンになると、いすみ鉄道にいろいろな人がやってきます。
そういう人の中には、いすみ鉄道にクレームをする人がいます。
「売店の女性スタッフの態度が悪い。いらっしゃいませ、とも言わないし、笑顔がない。」
でも、ありがたいことに、そういうクレームをする人は必ずこう付け加えます。
「社長さんがあんなに頑張っているというのに、職員が全くこのような状況では、何のために社長さんががんばっているのかわかりませんね。」 と。
まあ、おっしゃられる内容は大変ありがたいのですが、私は思います。
「職員なんてそんなもんですよ。」
みんながみんな私の意を汲んで一生懸命やってくれたら、それはそれで素晴らしいけれど、現実問題としてはそんなもんでしょう。
田舎の人はたとえお客さんであっても、知らない人にあまり愛想を振りまいたりすることができない。
それが田舎の田舎たるゆえんではあり、田舎者の証明なのです。
売れ筋ばかりの商品を並べても売り場にはならないのと同じ。
30過ぎた人間は、本人が気づくまで何を言ってもダメです。
人間は、いつ気づくかが問われているのですから。
つまりは、そんなもんなんです。
「社長、新しい本が出たんだったら教えてくださいよ。」
とは地元の新聞記者の言葉。
日経新聞が取り上げてくれて、共同通信社が取り上げてくれて。
共同通信社が取り上げてくれるということは、全国に配信されるから、私の知る限りでも神奈川新聞と徳島新聞がすでに取り上げてくれていますが、地元では私の2冊目の本が出たことは1社を除き新聞記者すら知らないわけです。
でもまあ、そんなもんですよ。地元は。
だから、地元にローカル線を任せておくと、どんどん廃止にされちゃうわけです。
そんな中でありがたいなあと思ったのは、大多喜町の小学校中学校の全先生方を対象とした講演会にお呼びいただいたこと。
毎年夏休みになると学校の先生方はいろいろ勉強するようですが、大多喜町の先生方は地元にお手本がいるのだからこの人の話を聞くのが一番勉強になると思っていただいたのです。
地元からお声をおかけいただくのが私は一番うれしいのです。
東京で評価されても、全国的に評価されても、地元で評価されなければ本物ではないでしょうから。
主催していただいた校長先生がおっしゃるには、
「先生というのは狭い見識の中で働いているので、外の社会を知ることがなかなかできません。いすみ鉄道の取り組みを知ることは絶対に役に立つはずです。」
さすが、上に立つ先生は考えていますねえ。将来を。
私は、大多喜の子供たちが、地元を誇りに思えるようなお手伝いをいすみ鉄道が出きれば良いと思ってます。
そこを気づかせてあげることができれば、ローカル線で公共心を学んでいる地域の子供たちが、社会へ出て活躍する日が来るのが楽しみです。
そうお話をさせていただきました。
大多喜町の先生方、本日はありがとうございました。

講演に先立ってご挨拶をいただきました石井教育長さん。
一言一言にとても含蓄があります。
ふだん商売の話の中で生きている私にとって、先生方と接することができて、今日はなんだかとても幸せな1日でした。
ありがとうございました。