キハ52とキハ28

昭和のディーゼルカーを購入して保存鉄道のようなビジネスをする。
いすみ鉄道でやっているのはそんなビジネスプランだとお考えの皆様も多いと思いますが、実はそんな簡単なことではありません。
なぜなら、鉄道車両だけあってもダメだからです。
キハ52がいすみ鉄道で走って、皆様方が遠くから足しげく通ってくれるのは、いすみ鉄道が走る沿線の風景が、昭和の日本の原風景を思わせる素晴らしいもので、駅前広場とそれに続くかつての商店街の雰囲気が、とても良いからです。
鉄道というのは、単体で成り立つものではなくて、取り巻く地域全体の中で光ってこそ素晴らしいもので、そこに、人間の生活臭さが入れば、その情景の中に身を置きたくなる。
町はずれの小さな神社の秋祭りや、小川のせせらぎ、虫取り網を持って走り回る麦わら帽子の子供たち。
鉄道車両だけではなくて、そういうすべてのシーンが、私たち日本人が愛すべき、そして守るべきシーンだと思うわけです。

[:up:]こんな風景の中を走る列車をいつまでも残したいですね。
だから、昨日のブログで書いたように、たった1回のインシデントで、広大な範囲に人が住めなくなるようなことになる装置は、経済効率などどんなに正当化しても、使ってはいけないのではないか。
福島県の素晴らしいふるさとの風景が消えてなくなった(当分人が住めなくなった)ことを見ても、日本人はまだわからないのか。
そう言いたいわけです。
で、いすみ鉄道に今度はキハ28が来る。
キハ52でこれだけ皆さんが来てくれるようになったのだから、キハ28なら、52よりももっとすごいことになりますね。
今では皆さんが口をそろえてこう言ってくれるようになりましたが、2年前に、いすみ鉄道の存続が決まって、これからさらにお客様を増やしていかなければならない。そのためにはキハ52を導入して、鉄道ファンの皆様方に力を貸してもらわなければならない。私がそう考えた時に、私の周りの人たちは、たった1人の人を除いて、だれも賛成してくれませんでした。
「そんな古いディーゼルカーを買ってどうするの?」
周りの人たちが異口同音にそういう中、会社で私の席の隣に座っている川上鉄道部長さん1人だけが、
「そうですね。キハ52は昔を思い出しますし、絶対に良いと思いますよ。」
そう言ってくれたことを思い出します。
そして今度はキハ28。
「52よりも28の方が絶対に盛り上がります。何しろ急行形ですから。」
私がそういうと、皆さん、よく解らない人も含めて、
「そうですね。」
と言ってくれるようになりました。
私は、その点が少しだけ不安。
なぜなら、新しいビジネスプランというのは、みんなが反対する方がうまくいくからです。
だから、その不安を打ち消すためには、ファンの皆さんが考えている以上のことを実現して、「アッ」と言わせなければなりません。
そのためには来年春にダイヤ改正を行って土休日ダイヤを設定し、キハ2両編成を上総中野まで常時入れること。そして、時刻表上の通過駅で安全性が確認されている駅を徐行通過することを目標にしています。
そして、その時には、これが必要になるわけです。


[:up:]廃止された秋田県の小坂鉄道にて。
だれか、これ作って!
数日前に只見線でタブレットの使用が終わったとニュースで言っていましたが、私は不思議で仕方ありません。
山の中の駅にあれだけ人が来るのに何でやめてしまうのか。
私なら絶対にやめませんよ。
この2枚の写真から私が何を考えているかお解りになる皆さん。
皆さんは、いすみ鉄道に来れば幸せになる素質をお持ちです。
鉄道ファンであることに自信と誇りを持ってくださいね。