就任一周年を迎えて

皆さま、いつもいすみ鉄道をご利用いただきましてありがとうございます。
おかげさまでいすみ鉄道の社長に就任してから1年を迎えることができました。
これもひとえに沿線地域の皆様や、遠くからご声援いただいておりますサポーターの皆様のご支援の賜物であると深く感謝いたしております。
いすみ鉄道を再建し存続させるために、この1年間は次のような方針で、がむしゃらに突っ走ってまいりました。
1:いすみ鉄道をブランド化する。
いすみ鉄道は首都圏からとても近いところにある素晴らしい自然に囲まれた房総半島を走るローカル線です。そのローカル線を観光の拠点として情報発信し、観光のお客様を呼び込むことで、地域の足を守る一助にすることを実行してきました。おかげさまでムーミン列車も大好評をいただき、今までにない層のお客様、特に若い女性のグループにたくさんご訪問いただける鉄道に変化することができました。
2:関わる人を幸せにする。
いすみ鉄道のお客様、働く職員、ご支援いただくサポーターの皆様方など、いすみ鉄道に関わる人全てを幸せにしたいと考えて実行してきました。
首都圏から気軽にいらしていただける観光鉄道として、非日常、脱日常をお楽しみいただき、日ごろの疲れをいやしていただくことができるのがいすみ鉄道であり、そういった観光客の皆様のおもてなしをしていただくことで、地元の皆様にも、自分の住む地域を見直していただき、素晴らしさを再発見していただけることと思います。そして、それが郷土を想う気持ちにつながるのだと確信しております。
【2年目の抱負】
いすみ鉄道の社長として2年目を迎えるにあたり、基本方針をまとめてみました。
ビジネスとは需要を作り出すことであり、広く地域社会に貢献すること、つまり人を幸せにすることである。
利益とはその結果としてもたらされるものであり、第一義的目標として求めるものではない。
そのための最短の方法は、長所を伸ばすことである。

これは、私が常に考えている経営理念です。
少子高齢化でジリ貧な地域を走る鉄道は、過去をいくら精査し、検証してもその延長線上に未来はありません。
未来の需要を自ら作り出すことで、存続が可能になるのです。
これは何もいすみ鉄道ばかりの問題でなく、全国的に見られる現象ですが、第3セクターのような行政主導型の鉄道ではなかなか乗り越えるすべを見つけられないのが実情です。
そのために、民間から私のような人間を採用していただいたわけですから、ふつつか者ではございますが、微力を発揮させていただいて、沿線の地域社会に貢献させていただければと考えております。
長所を伸ばすこと。
人間、悪い部分はよく気が付きます。欠点を直す努力をするというのは、日本人が好むところのようです。
ところが、人・モノ・金・そして時間が限られているビジネスの土俵では欠点を修正している時間はありません。
そこで私は欠点をプラスに転換して行こうと考えます。
過疎化が進む地域、古い車両や老朽化した設備、年寄りばかりの運転士。
これが私に与えられた材料です。
そのなかで、過疎化が進む地域を「自然豊かな里山の風景」ととらえ、古い車両や老朽化した設備は「昭和レトロ」であり、年寄り運転士は「がんこオヤジ」を演出することで、マイナスをプラスにしていきます。
全国各地に出かけ、鉄道に乗ると、高校生の車内でのマナーの悪さがとても目立ちます。これは全国的な傾向ですが、いすみ鉄道では、高校生がマナーを守って利用しています。大多喜高校、大原高校をはじめとする沿線の高校生の車内マナーの良さは、いすみ鉄道が全国に誇れるレベルであると思います。これは、「がんこオヤジ運転士」たちの功績が大きいところで、他人を見て見ぬふりをする風潮がある今の世の中で、いすみ鉄道ではがんこオヤジ運転士たちが、高校生のお目付け役となって、大人が子供を正しい方向に導くという当たり前の社会教育が自然体で行われております。
このようにして、いすみ鉄道は地域と一体となって、地域の広告塔となって観光のお客様を呼び込み、房総半島の素晴らしい自然の風景をお楽しみいただき、地域の発展に貢献していきたいと考えております。
地域の皆様も、いすみ鉄道が走っていることを長所ととらえ、地域の発展と、関わる皆様の幸せのためにご活用いただければ幸いでございます。
再生に向けて、職員一同がんばってまいりますので、今後とも、いすみ鉄道をどうぞよろしくお願い申し上げます。
                        いすみ鉄道株式会社
                          代表取締役社長
                          
                            鳥塚 亮