ハッピーフライト

沖縄の離島便
プロペラ機が主流の路線に時どき飛んでいるジェット便。
このジェット便にはゆったり座れるクラスJシートがついていて、でもこの区間にはクラスJが設定されていないため、追加料金ナシで座われるお得な便。
マニアならはずせないところですね。
インターネットで事前座席指定した席は2A。
なんとなく得した気分で搭乗口へ。
こういう離島のローカル便にはどういう人が乗るのか、今日はいったい何人乗るかなど、職業柄興味があるので、搭乗口横で搭乗の様子をウォッチング。
まずは優先搭乗。
「2歳までのお子様をお連れの方、妊娠している方、ご搭乗の際にお手伝いが必要とされる方。」というあれ。
子供連れも妊婦と思わしき人もいないけど、おじいとおばあが続々と乗り込んでいく。
えっちらほっちら、風呂敷包みを抱えて、ゆっくりと。
都会の便では見られないほほえましい光景。
続いて「ダイアモンド、エメラルド会員の皆様」どうぞ。
だいたい離島便に「ダイアモンド会員様」がいるとは思えないけど、搭乗口の女性は律儀にコールを繰り返す。
結局ダイアモンド氏は現れず、シーンとした2分間が過ぎて「一般のお客様どうぞ」。
機械を通る人を数えると40名ほど。160席に40人では厳しいなあ、と思いつつ、いよいよ最後かなというころ、私もゲートを通過。
ブリッジを通って機内に入ると、私の席であるはずの2Aにさっきのおばあが座っている。
あ~、しょうがないなあ。
もう出発間際だし、おばあに席を替われとも言えないので、飛行機のお姉さんに「他の席に座ります。」とことわって数列後ろの「普通席」へ。
クラスJ席には座れないけど飛行時間25分の便だから別にどうでもよい。
それに普通席なら横にも前にも後ろにも誰もいないからと余裕の気分で飛行機はプッシュバック。
ところが地上滑走を始めたところで飛行機はストップ。
「この飛行機の前に離陸機が3機、着陸機が2機いますのでしばらくお待ちください。」と機長が申し訳なさそうにアナウンス。
離島便だし、別に急ぐ人は誰も乗っていないような飛行機だから、気にしなくてもよいのにね。
「本日の飛行時間は15分を予定しています。」と機長が付け加えてくれた。
いつもは25分かかるのに今日は15分で行くとは気合が入っている。
それでも結局、離陸したのがプッシュバックから25分後。
時刻表上で40分の飛行時間なのに25分を離陸までに使ってしまったジェット機は、一目散に島へ向かって急上昇。
いつもならしばらく上昇して水平飛行に移ると絞られるエンジン出力が今日は絞られる気配がなく、ゴーッと鳴っているままでシートベルト着用のサインが消える。
するとさっきの飛行機のお姉さんが私のところにやってきて、先ほどは申し訳ございませんと言いながら「何かお飲み物でもいかがですか?」と気を使ってくれる。
いつもは黒糖飴だけのこの区間で「お飲み物は?」と聞いてくるのはうれしいけれど、私は特別の客でもないし、他のお客様の手前もある。何よりのどが渇いていないので固辞すると、「それではごゆっくりとおくつろぎください。着陸まであと5分ほどですが」と言って客席の他のお客様を一回りして座席につくころに「ポーン!」とベルト着用のサイン。
「当機最終の着陸態勢に入りました。」
いつもなら左手に見える島影が右から見えてきた。
「なるほどね。」
この区間は洋上のウエイポイントと呼ばれる地点を通過して三角形の2辺を飛ぶのが通常のコースだけど、今日はまっすぐ飛んできたようだ。
そして滑走路の周りをぐるっと回って、いつもの滑走路「05」に着陸。
サッと地上滑走してスポットに着いたのは、離陸から17分後のことでした。
「すごいね、機長さん。まっすぐ飛んできた。」
そう思いながら考える。
飛行機って、まっすぐ飛べばよいのに、無線標識やウエイポイントを一つ一つ経由してジグザグに飛んでくるから、遠回りをしている。余計な回り道をしないでまっすぐに飛んでくれば時間も燃料も節約できるんだけどなあ。
アメリカやヨーロッパで実行しているRNAVと呼ばれるエリアナビゲーション方式なら、もっと時間も燃料も節約できてエコなのに。
早く日本も実行したほうが良いね。
おじい、おばあの後についてゆっくりと荷物受け取り場へ。
ほどなく回転テーブルが回って荷物がやってくる。
段ボール箱、発泡スチロールがぐるぐる回ってくる。
段ボール箱はバナナ、パイナップル。発泡スチロールはたぶん肉だろうな。
島のおじいやおばあが那覇から運んできたのは食料品。
生活路線なんだね。
アレレ?
気づくとそのダンボールや発泡スチロールといったおじいやおばあの荷物には、皆エメラルド、ダイアモンド会員の荷物につける優先引渡しのタグがついている。
さっき、搭乗の時には、一人もいなかったダイアモンド氏が、なんと到着地点にはたくさんいたのである。
なんだか良いね。こういうのって。
沖縄ってホッとする。
これだからやめられないね。
ローカル線にもこういうホッとするところがあれば、みんな喜んでくれるだろう。
そう思いながら、私の一週遅れののゴールデンウィークが始まりました。