何だろう? この突然のいよいよ感

釧路と根室を結ぶ都市間バスがヤバいらしい。

ヤバいというのは、国の補助がなくなるから、路線の存続が難しいということ。

釧路と根室の間は135㎞あって、高速道路がないから高速バスではなくて「都市間バス」。
根室は都市とは思えないけど、範疇としてはそういうことなのでしょう。

今、1日3往復しかないらしい。
何年か前に一度乗ったことがあるけど、そんなに本数が少なかったのか、それとも少なくなったのか。

高速道路はないけれど、渋滞もない原野の中のような道をただひたすら走るから、乗っている分にはイライラはなかったですけど、確かに乗客は少なかった記憶があります。

都市間バスに国が補助を出す理由の一つは平均乗車人員が5人以上ということのようで、釧路-根室間はその5人を切って、平均4.8人になっているらしいのですが、ではなぜ5人以上かというと、5人以上ならタクシーで運べないからバスじゃなきゃダメというのが理由のようです。

国交省的には鉄道というのはぜいたく品という捉え方をしていて、なぜなら「まだバスがあるだろう」ということのようで、バスになるともう後がないから補助対象になるけど、鉄道は補助対象にならない。
そういう考え方で長年来ているのですが、その「まだバスがあるだろう」が、ここへ来て、「バスはぜいたく品だ。なぜならまだ乗用車があるだろう。」という事態になってきているように思います。

釧路と根室の間、135kmには厚岸町と浜中町という2つの町があって、どちらも人口数千人。しかもその数千人が広大な面積に点々と住んでいらっしゃる。
終点の根室も人口は12000人程度ですから、1日3往復のバスでも持て余しているという現実があるようです。
でも、バスがいよいよとなってきている時に「鉄道を廃止してバスにしましょう」という動きが同じ北海道内で同時進行的に動いているのですから、つまり、先はないということでしょうかね。

でもね、じゃあ、バスをやめて乗り合いタクシーにしましょうという話になると、平均5人未満ということは、2人の時もあれば7人の時もあるし、0人の時もあれば9人の時もあるわけで、こういう時は私は大きい数に合わせなければいけないと考えていますが、補助を出す側はどうもそうじゃないようで、だとすれば、上振れした場合の可能性を否定するということになりますから、つまりは将来的な伸びが見込めなくなるということのように思います。

だったらこういう時代ですから、無人運転を導入しましょうという人もいるかもしれませんが、北海道なら道はまっすぐだし車も少ないし。
でも、気象条件が厳しくて野生動物がはびこっている地域に、自動運転なんて本当に適しているのでしょうか。

かといって、誰も乗らないバスに延々と補助金を出し続けるわけにもいかないのも確かです。

だから難しい問題なんです。
お金が限られている中では、行政は当面の収支改善が最優先ですからね。
コストを減らせば必ず結果が出ますけど、コストをかけて、つまり先行投資をしても必ず結果が出るかどうかがわからない。ていうか、コストをかけた分需要を増やして結果を出すことができませんから、そういう仕事はしないという人たちが田舎の町に対して意思決定をしているわけですから、ここ数十年間、田舎はよくなっていないのですけど、それがわからないのでしょうね。
いや、わかっているけどやらないのでしょう。
それが、いわゆる「ゆでガエル」状態なのです。

では、根室と釧路の間は皆さんどのように移動しているのでしょうか。
それは、皆さん車なんです。
もともとJRはほとんど使い物にならないようだし、第一駅に行くのも大変ですから、だったら最初から車ですよね。
じゃあ、誰がバスに乗るかというと、車に乗れない人たち。
では、車に乗れる人たちというのはどういう人たちかというと、だいたい20歳から60代ぐらいまでの人たちでしょう。
その20歳から60代ぐらいまでの人たちというのはどういう人たちかというと、仕事を持っている人たち。
仕事を持っている人たちが車で移動しているのですけど、でも、そもそもそういう人たちが暮らしていかれるだけの仕事そのものが十分にないというのが田舎の現状ですから、つまりはじり貧なんです。

市場の理論で、マーケットシェアの話。
業界で1位から5位までの企業があるとします。
マーケットがシュリンクしてお客様の数(つまり売上)が2割減るとします。
そうなるとどうなるか。
1位から5位までの企業の売り上げが一律に2割ずつ減るとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではなくて、4位と5位の企業が消えてなくなるのです。

そう、つまり弱いところが淘汰される。
コンビニがそうでしょう。
昔はいろいろなお店がありましたが、今はセブンとローソンと、あともう1社ぐらいになっちゃいました。
ファミレスも同じ。

これを地理に当てはめると、同じように弱いところから淘汰されていくわけで、それは北海道のさいはての地で表面化しているということです。

でもね、北海道だけの話ではありません。
マーケットというのは単位を定義づけして共通現象が見られますから、日本という地域で見れば北海道かもしれませんが、県単位で見れば県庁所在地から遠い山間部になるでしょうし、市や町の単位で言えば市役所や役場から離れた地域から過疎化が進んでいくということになります。

そして、そういう現象が、ここ数年で急速に表面化してきているように私は思います。
そう、なんだか知りませんが、今まで「やがてはそうなるでしょう。」と思われてきたことが、急に表面化してきているのです。

先日、40年後に消滅している自治体というのが発表されましたが、10年前に発表されたのと違ってきていました。
10年前の時点で40年後に消滅するとされた自治体のうち、かなりの数の自治体が今回の発表では消滅自治体から抜け出ていて、10年前には大丈夫だった自治体のうちのいくつかが今回消滅自治体にカウントされています。

どことは言いませんが、努力しているところと他人ごとだと思って10年を何の策も講じずに過ごしてきたところの差でしょうかね。

日本は人口減少期に直面しています。
全体の人口が2割減ったら、日本全国が同じように2割減るのではなく、弱いところが消滅するというマーケット理論が当てはまることになるのでしょう。

そんなことを考えると、今、鉄道が走っているところは、その鉄道を大事にした方が良いと思います。
鉄道ならばお客の数が急に増えたとしても、車両を連結すれば対応できますけど、バスならもう1台後ろに繋げようということは無理ですからね。

ましてや、鉄道があれば、上手に使うことで地域を目立たせることができて、地域に人を呼ぶツールにもなりますから。

私はそのことをきちんと証明してきているのですよ。

釧路から根室なんて最高じゃないですか。
さいはて路線は魅力的でしょう。

さいはてのバス路線じゃあ、えびすさんと太川陽介ぐらいしか来てくれませんからね。

私は、何だかもったいない気がしますよ。
こんな車両に取り換えて今さら近代化したなんて言っているようじゃあね。

まして、国防の最重要拠点になる場所なのに、国家的に一番大事な場所に動脈ではなくて毛細血管しかないということはかなり深刻だと、今日の北海道新聞のニュースを読んで思ったのであります。

根室―釧路の都市間バス存続困難 10月以降、国の補助外れる見通し

(すみません、有料記事になります。)