おいくら万円?

昭和の時代から平成を経て令和が4年。

この間日本人が大きく変わったなあと思うのはモノの値段に対する考え方でしょうか。
昔はモノの値段は基本的には一律でした。
例外があるとすれば山の頂上へ行ったり離島へ行ったりすると、ふだん50円で売っている1本の缶コーラが100円になったり200円になったり。

どうして?と尋ねると、「運び賃だよ。」という答えが返ってきました。
つまり、山の上や離島にコーラを運ぶにはそれなりの経費が掛かっているから、それが上乗せされて高くなる。

先日お話しした観光地物価もそれで、例えばコーラだとすると、ふつうのお店では50円だけど、ホテルの中の自動販売機だと80円とかになっていて、お部屋の中にある冷蔵庫だと100円になる。
スキー場や海の家だと150円とか。
グラスに注いで出てくる喫茶店なら理解もできるけど、ふつうのお店の缶コーラが値段が違うのですから、まさしく観光地物価なのでありました。

ところが最近では山の上はどうか知らないけど、沖縄の離島へ行ってもコンビニがあるし、ホテルの廊下の自動販売機でも外と同じ値段で売っているところが多くなってきています。

コンビニと言えば、セブンでコーラを買うと今は150円ぐらいですか。
でも、同じ系列のイトーヨーカドーだと98円で売っていたりする。

昭和の頃のコンビニではよく店員に文句を言っているおじさんやおばさんがいて、「イトーヨーカドーで98円のものを、同じ系列のセブンで150円とはけしからん。」とか。

そんな人たくさんいましたけど、今そんなことを言ったら「おじさん、コンビニだからね。コンビニの意味知ってる?」 とか言われちゃいますね。
近くて便利で夜中まで開いているからコンビニ。
安いのは欲しければイトーヨーカドーに行きなさいよ。

つまり令和の日本人は同じ商品でも場所が違えば値段が違うということを理解していて、同じ商品でも違う値段で平気で買ったりする。
昭和の日本人から見たら不思議な光景かもしれません。

私が同じものを買うのにいくら払っているのか、最初に疑心暗鬼になったのは国際線の飛行機。
若いころ、エアオンという団体航空券のばら売りのお店があって、大学の構内とかに「ロンドン5万円」とかいう張り紙がしてありました。

今でも覚えているのは「秀インター」という会社で、安いと思って電話をかけて見ると、出発日によって値段が違う。
わかりましたと言って電話を切って、数日たってからまた電話してみると、この間の値段ではもう買えないという。

航空会社が違えば値段が違うのは理解していたし、出発日が違えば値段が違うというのも理解していたけど、同じ会社の同じ路線の同じ曜日でも買う日によって安かったり高かったり。

今考えるとHISの前身の会社でしたが、なんかマンションの1室のようなところでデスクと電話で営業していて、大丈夫かな?と思いました。
なぜ大丈夫かと思ったかというと、お金を払っても航空券がもらえずに、予約の証明書のようなものをもらって、航空券は当日空港で受け取れと言う。

荷物を持って空港まで行って、本当に飛行機に乗れるのだろうか。
そんな不安を抱えながら空港に着くと、ちゃんと航空券があって、座席がもらえて、「はい、行ってらっしゃい。」

でもって飛行機の中に入ると、つまりは隣の人や前の人も多分同じ手続きでここまで来て座っているけれど、いったいこの人たちはいくらで乗っているのだろうかという疑念がわいてくる。わいてくるけどまさか聞くわけにはいかないので、「飛行機って、そんなものか。」と思ったのが40数年前。

実は同じ飛行機でも国内線はその5年ぐらい前に半額で乗る経験をしていて、ていうか、国内線の飛行機は半額で乗るものだとばかり思っていた。
今でもあるのかな、スカイメイト。

若者限定で、多分22歳以下とかだったけど、会員証を作ると空席があるときに限って当日半額で乗れる。
ということは飛行機の中で、隣に座っている人は倍の値段を払っているわけで、これも、「バレたらヤバそうだな。」と思うわけ。
でもってお姉さんがジュースを配りに来る。
でも、自分は半額で乗っているから、「あなたはサービス対象外よ。」と言われても仕方がないかな、と思ってビクビクしていると、お姉さんはちゃんと「お飲み物をどうぞ。」と言ってオレンジジュースをくれる。

中学生の私は思わず「良いんですか?」
だって、半額なのに貰っちゃ悪いじゃないですか。

お姉さんはにっこり、「はい、どうぞ。」

そうか、わかった。
もし半額の人に飲み物を出さなければ、隣の人に「こいつは半額で乗っている。」とバレてしまうから、皆にくれるんだ。

と、妙に納得。

そのオレンジジュースは何と果汁100%。

昭和の時代はオレンジジュースと言えば粉で溶いた舌に色が着くのがふつうだった時代で、何しろオレンジが輸入自由化になったのが1991年ですからね。
それまでは100%のオレンジジュースをがぶがぶ飲める世の中ではなかったわけで、せいぜい良くても今の「なっちゃん」ぐらいの薄いジュースだった時に、半額で乗って100%のオレンジジュースが出たので、14歳の僕としては感動したのでありますが、秀インターで航空券を買って国際線の飛行機に乗っても、いくら払っているかわからない隣りの人も私にもちゃんと機内食が出て来た。

そういうことが不思議で不安だったのが昭和の日本人ですが、今の時代はLCCだけじゃなくて日本航空も全日空も、隣の人はいくらで乗っているのか、まったくわからない時代になりましたし、そもそも、そんなことは誰も気にしない。

そういう時代になったわけですが、最近ではJRの特急電車もお値段にいろいろ差が出てきましたから、隣の人がいくらで乗っているのかわからなくなりましたし、そんなことも誰も気にしなくなりましたね。

でも、私としては、やっぱり同じ乗るなら安い方が良いと思っていますから、いろいろとネットをさまよっているわけでして、でも、JRの特急列車って、航空会社に比べると値段の変化が少ないし、ホテルの客室のように掘り出し物もない。
まぁ、JRだからね。
上越に飛行場があれば私は間違いなく飛行機を選ぶでしょうけど、ここは航空の過疎地域ですから、わざわざ富山空港まで行って飛行機に乗る気にもならず、最近は新幹線ばかり利用しているわけでして、JREポイントも随分貯まってきましたが。新幹線に乗り付けると、まずえきねっとを見る癖がついていますので、いろいろ調べてみる。

いろいろ調べてみると、いろいろ見つけるわけでして、へえ、こんなバグのような、何かの間違いのような、掘り出し物を見つけて、「AIってまだまだ馬鹿だな。」と思いつつ、すかさずポチッとしてしまうのであります。

おもしろい世の中になったものだと、昭和の人間は思うのであります。