南回りで帰宅

昭和の時代は飛行機の性能があまりよくなくて、今のように10数時間も長距離を飛ぶことができませんでした。

せいぜい7~8時間。
だから、東京からヨーロッパへ行く便は、香港、バンコク、デリー、カラチ、アテネ、ローマなどを経由してパリ、ロンドンへ行きました。
所要時間は30時間弱ぐらいでしたかね。
給油に立ち寄る場所で、トランジットと言って2時間ぐらいの休憩があって、ちょっとのんびりできました。
この便を南回りと呼びました。

そのうち、飛行機の航続距離が伸びて、10時間ぐらい飛べるようになると、アラスカのアンカレッジを経由してヨーロッパを目指すルートができました。
このルートだと、アンカレッジでのトランジットの時間を入れて17~8時間ぐらいだったかな。
この便を北回りと呼びました。
ずいぶん早くなったと感じました。

次はモスクワ経由。
成田から出て、モスクワでトランジットしてヨーロッパまで約15時間。

そして、飛行機の性能が格段に良くなって、つまり少ない燃料で遠くまで飛べるようになったので、直行便ができました。
これだと東京からロンドンまで12時間。

私が航空業界に居た20数年の間、これだけの変遷がありました。

同僚の女性社員が搭乗のアナウンスで、「BA6便、ロンドン行直行便のご搭乗のご案内をいたします。」なんて言ってたのを思い出します。

今では当たり前の直行便ですが、30年ぐらい前までは発展途上国と呼ばれた国々の航空会社は新しい飛行機を買うことができませんでしたので、西側諸国の中古の飛行機を使っていたんです。だから、そういう会社には直行便がなかったわけで、私の同僚の女性職員は、「直行便」と敢えてアナウンスの文言に付け加えることでステータスをつけていたんです。

というようなことを今日はふと思い出しました。

思い出すきっかけは新幹線の架線故障。

午前中に病院2日目の予定を終えて、さて、とひと息ついたところで新幹線が停まってるというニュースが。
テレビの画面を見ると駅間に停車した新幹線の電車から乗客を降ろしているではないですか。
この映像を見た瞬間に私は「ダメだ!」と思いました。

ダメだ!というのは、数時間ではとても復旧などしないということです。

本当は夕方の北陸新幹線「はくたか」を予約していたのですが、「こりゃ無理だ」ということですぐに千葉の家を出て13時過ぎの東葉高速線に乗りました。

そして、電車の中で、「さて、どうしたものか?」と考えを巡らせたのです。

とにかく今夜から大雪の予報が出ていますので、今日中には帰らなければなりません。

とりあえず高速バスをチェック。
アルピコ交通のバスが新宿から長野へ出ているのですが、すでに18時の便まで空席は無し。
長野まで4時間以上かかりますから、18時のバスに乗ったとしても上越には帰れません。

次に考えたのは羽田-富山。
夕方の便に乗れば富山からなら40分ぐらいで帰れますから楽勝コースです。

ところが全日空の富山便はすでに雪のために欠航が決まってました。

次に、富山がダメなら小松だろう、ということで羽田-小松の16:50の便を予約しました。

すると、予約したと同時ぐらいにスマホのメールに「小松行189便は天候調査中です。」と入ってきました。

ダメだね。こちらも。

では、最終手段として東海道新幹線で米原へ出て、米原から「しらさぎ」で金沢、そして金沢-長野間通常運転している北陸新幹線で上越妙高へ帰るコース。
これをチェックして、さっさと予約をしたところで東京駅につきました。

えきねっとで予約してJR東海とJR西日本の区間に乗りますので、発券が必要です。
みどりの窓口は長蛇の列。
指定券自動券売機も並んでいます。

でも、1か所だけ誰も並んでいない券売機があるのを私は知っています。
ていうか、発券するときはここに決めている「ネット予約専用の発券機」

ここだけは誰もいないので、サッと発券して新幹線乗り場へ向かいます。

たくさんのお客様が改札口の前に居ますが、駅のスタッフが大勢で対応していましたので混乱は全くなし。
こういうところはさすがだなあと思いました。

新幹線改札口の中にもほとんど人はいませんね。

新幹線のホームにも人影はありません。
まぁ、昼前から電車が止まってるんですからね。
ちょっと前のコロナの頃を思い出しました。

ちなみに私が予約していた電車はこちら。

ダメだこりゃ! と思ったのは、同じえきねっとで変更しようと思っても最終便まで運休表示で予約できなくなっていたからです。
いつも申し上げておりますが、こういう時はさっさと自分でサバイバルするのが鉄則ですからね。

で、私は隣のホームから出る「ひかり号」に乗ったのであります。

東京⇒米原⇒金沢⇒上越妙高 というコース。
これこそがまさしく南回りであります。

米原⇒金沢の「しらさぎ」はグリーン車を奮発しました。
その理由は、
・このルートは金沢、富山方面への迂回ルートになるはずだから、普通車は混雑が予想される。
・北陸本線内は午後から大雪の予報が出ていて、この時点ですでに明日の特急列車の計画運休が発表されていた。
もし、雪の降り始めが早くなって、北陸本線内で列車が走れなくなったりした場合には「しらさぎ」の車内で1泊しなければならないかもしれません。

そういうことを考えて、隣に誰もいないグリーン車のC席を取ったのです。

もちろん、食料と水も確保。
お腹は空いてなかったので明日の朝まで持ちそうなものにしました。

「しらさぎ」の車両にはグリーン車にも電源がないことは知っていましたので、ひかり号の中でフル充電。

浅間山ではなくて富士山を見ながら上越妙高へ帰るという、不思議な気分を味わいましたが、今日は特に富士山が綺麗に見えて気分がハレバレです。

乗り換えの米原駅に到着したひかり号。
えぇ?と思うぐらいたくさんの人が下りました。

そうです。皆さん金沢方面へのお乗り換えです。
ふだんはこんなにいないんですよ。
皆さん考えることは同じですね。

ごった返している改札口を抜けて「しらさぎ」たどり着くだけで乗り換え時間の9分は過ぎていきました。
私が乗り込もうとしたときはすでに出発信号機が点灯していました。

案の定、普通車は混雑していましたが、グリーン車はほぼ満席でしたがゆったりとしています。

ちょっと小腹が空いたので、東京駅で買ったサンドイッチを食べようと箱を開けたら「大吉」。
廣川さんの大吉おみくじを思い出しました。
もしかしたら、これも全部大吉かもしれませんね。(笑)

ちなみに「しらさぎ」の車内で、「そういえば飛行機はどうなってるんだろうか?」と思って調べてみるとこんな感じ。

全日空もJALも、ぐるぐる回りながらもなんだかんだで小松に降りたようです。

JAL189便の地図の福井市とあわら市の中間に私の位置が出ています。
ほぼ同じ時刻ですね。

JALの切符は当日予約でしたから28420円。
南回りの新幹線は22720円ですから、5000円ちょっと安上がりでしたね。

「しらさぎ」は順調に走って予定通り金沢に到着。
すぐに新幹線乗り場へ向かいまして、「はくたか 長野行」という表示を見ながらホームへ上がりました。

13番線14番線ホームのエスカレーターの上にある「富山・東京方面」の表示も仮設になっていますね。はがしたら下から「福井・敦賀方面」と出てくるのでしょう。

こんなところも「いまだけ」の面白ポイントですね。

ということで、私は南回りルートで20:08に上越妙高に帰ってきたのであります。

当初の予定では20:12着でしたから、4分の早着!

やったぜ、ベイビー!

当然と言えば当然ではありますが、長野行「はくたか」から降りた人は数人だけ。
4分後に長野からやってきた「はくたか」からも、ほとんど降りた人はいませんでした。

東海道新幹線の「ひかり号」に乗ってから、長野-高崎間も運転再開というアナウンスが流れましたが、高崎から長野までは2時間に1本程度とのことでしたので、使い物にならないと私は判断しました。
南回りで正解だったと思います。

こうして、私は何とかサバイバルして自宅に戻ったのですが、これは私のやり方であって、必ずしもお勧めできるとは限りません。
なぜならば、今日中に帰るという時間最優先で、23000円も余分な費用をかけてしまったからで、時間よりもお金が最優先という人もいるでしょうから、そういう人であれば安いホテルに泊まって、明日を待つのも一つの方法です。
ただ、いずれにしても、自分の身の振り方は自分で考えて判断しなければならないということだけは確かだと思います。

JRにホテルを出せ!とせがんでみたところで満足のいく回答が得られるかどうかはわかりませんしね。

私の友人からは、「東京-北陸新幹線-上越妙高の乗車券を特例乗車で振り替えてもらえなかったか?」という意見もいただきましたが、もともと「えきねっと」で予約している割引切符ですから、通常発券の乗車券のようにはいきません。
だから、最初から時間の無駄だと思ってトライしませんでした。

そう、時間の無駄なんですよ。
駅員さんにグタグタ文句を言ってるとね。

私が駅員さんに聞いたのは東京駅の改札口で一言だけ。
「どうですか? 見通し立ってますか?」
駅員さんは
「申し訳ないです。当分ダメです。」
「そうですか。ありがとうございます。頑張ってくださいね。」

そして私は隣のJR東海の改札口を入りました。

今日は大混乱でしたが、こと東京駅の新幹線改札口の旅客対応はきちんとしていてよかったと思いますし、昭和の時代のように食って掛かっているような人も見かけませんでした。
令和の日本人は皆さん賢くなっているのか、それとも鉄道会社に期待しなくなったのか。

いずれにしても、旅にはハプニングがつきものです。

皆さん、こういう時こそ旅の楽しみを味わう絶好のチャンスです。

と、私は思います。

乗客の皆様、職員の皆様、本当にお疲れさまでした。

明日は大雪。

さて、どうなりますかね。