寒い一日

昨日の夜はなかなか眠れませんでした。

大雪の影響で夕方から二本木-妙高高原間で列車が運転できなくなりました。
一晩かけて除雪をする予定でしたが、はたして始発までに間に合うかどうか。

なぜなら、今日は高田の私立高校の入学試験日だからです。

外は強風で吹雪き状態。
部屋の窓もガタガタ言ってます。

結局午前1時に寝て、目が覚めたら5時でした。

すぐにトキめき鉄道のホームページを見たら「平常通りの運転」

よかったなあ。

昨日の夜7時ごろ、営業の若手ホープの豊岡課長が、「一応、バスも手配しておきます。朝になってからでは間に合いませんから。無駄になるかもしれませんが良いですか。」
バス1台、今の時期は8万円ぐらいするのかな?
2台だから16万円。

それを午前7時に妙高高原駅にスタンバイさせて、もし電車が動かなかったときにすぐに代行バスを出せる手配。
途中の駅にも朝の7時には営業課のスタッフが待機して、受験生の輸送の準備を整えました。

特に関山駅は昨年無人駅になった駅。
でも、駅前に中学校がありますから高田方面への受験生が何人もいるはずです。
そういう生徒さんがもし電車が来なかったときに途方に暮れてしまうことのないように、職員が待機。

でも、電車は始発からちゃんと動きました。
除雪チームが夜通し作業を行って、何とか始発列車を動かしたのです。

結局、バス2台無駄になっちゃいましたね。

でも、私は無駄になったとは思いません。
なぜなら、地域の交通事業者として、生徒たちの一番大切な日にきちんと安心安全をお届けするのが使命だからです。

鉄道会社は株式会社です。
株式会社は利益を追求する会社です。
地域の偉い人の中には私に向かって「赤字はけしからん。赤字なのは社長であるお前に能力がないからだ。」という人がいます。
確かにそうですね。
黒字を追求するのが株式会社ですから。

だったらバス2台、万が一に備えて準備するってことはやってはいけないことになりますよね。
でも、それって昭和の議論なんです。

鉄道だけに黒字を求めるなんてのは、すでにそういう時代じゃありません。
だから、トキめき鉄道の営業の課長は、自分の判断で、バスを手配し、スタッフを手配し、将来ある受験生の人生の大切な日に、大切な役割を果たしているわけで、私はそういう若手プロパー社員が育っている姿を見て、頼もしく思います。

営業だけではありません。
運輸部も設備部も、みんなそうやって地域の輸送を支えているのです。

ただし、大変残念なことですが、それだけでは将来はありません。
きちんと地域輸送をやっていればそれでよいということではないのです。
なぜならば人口が減っていくから。
人口が減っていく中で、4両だった電車が2両になって、2両だった電車が1両になって。
そうやって鉄道会社は対応してきましたが、そういうやり方はもう限界なのは皆さんわかっていますよね。
なぜなら、1両よりも短くすることはできませんから。

人口が減っていく中で地域鉄道はどうしていくか。
これは鉄道会社だけでなく、行政も含めた地域全体のテーマなんですが、地域で稼げない分、地域外からお客様を呼び込まなければなりません。
そのために一番簡単な方法が観光なのです。

だから、日本は国を挙げて観光を旗揚げしているわけで、以前だったら工業団地を作るとか、企業誘致とか言われていましたが、そういう時代ではないのです。

そのためには、雪月花のような観光列車を走らせて、テレビやネットで取り上げていただき、ローカル鉄道が地域に人を呼ぶツールになって、鉄道会社の売り上げだけではなくて、地域全体が潤うようにしなければならないと私は思っていて、そういうことをもうかれこれ15年もやってきているのです。

つまり、観光列車やイベント、物販というのは、鉄道会社の収入を補うのはもちろんですが、地域の宣伝をして、地域外から地域にいらしていただいて、あるいは知っていただいて興味を持っていただくための宣伝ツールとして使えば、地域輸送は確保されて、鉄道の売り上げが伸びて、地域にも経済が生まれるという一石三鳥か、あるいはそれ以上の効果があるものなのです。

ということが、地域の皆様方にはなかなかご理解いただくことができないのが悩みどころなんですけどね。
なぜなら、今、この時代になっても、「観光なんか遊びじゃないか。」と考えているプリミティブ系の人が、地域には潜んでいるのですから。

そりゃ、あんたが観光へ行くときは遊びでしょう。
でも、観光客はお金を使いに来るんです。
そして、良いところだなあと気に入ってくれれば、今の時代は「推し活」の時代ですから、地域のファンになってくれるわけで、それが交流人口という言葉で表されるわけで、交流人口を増やしたかったら地域のファンを作ることを熱心にやらないといけないのです。

ということをしっかりとご理解いただいて、二本木駅の「さとまるーむ」では、Facebookページを立ち上げて、毎日の状況を発信してくれています。
この写真は今日の二本木駅。
寒そうでしょう。

都会の人たちはこういうシーンを見て、「おぉ」と思うのです。
そして「行ってみたいなあ。」と思っていただければ、二本木が都会人の心のふるさとの駅になる。
実際に来る人は百人のうち1人か2人かもしれませんが、まずは知っていただくこと、気にかけていただくことからスタートです。


五日前の1月11日はこんな感じでした。

今年は雪が少なくてスキー場関係の皆さんは心配していましたが、ここ数日で二本木から上はかなり降りました。

そういう雪国に思いを馳せて、都会の皆さんに「今度の休みに行ってみようかな。」と思っていただければ、私は地域の将来は少しずつ明るくなってくると思うのであります。

雪国の鉄道は寒い中頑張っています。
今日は受験生のために営業チームがバスを手配したお話をさせていただきましたが、能登の皆様方はこの寒さの中、もっと厳しい思いをされているのかと思うと心が痛みます。

都会の皆様方の被災地へのご支援をよろしくお願いいたします。

二本木さとまるーむのFacebookページ