Value for Moneyの旅

6月17、18日の2日間、雪月花が只見線に入りました。

上越妙高ー会津若松 片道7~8時間の旅
午前中に出発して夕方に到着するという1日コースでした。

参加費用は8万円。
片道37名様、往復74名様。
満席でご利用いただきました。
今回はご希望の方が多かったため、一部抽選とさせていただきました関係で、往復ご希望されていた方もいらっしゃいましたが、片道のみとさせていただきましたので、実質74名の方がご乗車になりました。

お申し込み状況を見ても、発売と同時に満席になるような感じでしたので、企画としては成功だったと思います。

参加料金8万円が高いか安いかという議論は別として。

そう、その参加料金8万円というのが果たして高かったのかどうか。

皆さんはどう思われますか?

私は安かったと感じています。
なぜならば、申し込み状況を見てわかる通り、瞬時に満席となったからです。

当然ですが、商品というのは値段が高ければ売れませんし、安ければあっという間に売り切れになります。
ということは、8万円は安かったと考えてよいと思います。

まあ、8万円という金額は、数千円で乗れる観光列車もありますから、一般の人にとってみれば高いかもしれませんよ。
でも、高いと言えば何でも高いですから。
450円の牛丼だって高いと思えば高いのです。

私は東京からヨーロッパへ行くお客様を見てきましたが、東京-ロンドン間、ビジネスクラスで当時のお金で往復100万円ぐらいでした。
ファーストで150万位だったかな。

金額としては高いですよね。
でも、当時の飛行機でファーストが14席、ビジネスが55席、結構満席になりましたから。
高いという話になれば、割引エコノミーの15万円だって高いという人はいます。

お昼ご飯何を食べようかと考えたときに、当然予算がありますよね。
いくらでも使えるわけではありません。
サラリーマンなら今なら1000円ぐらいかな。
「1000円? そんなに使えないよ。」
という人も多いかもしれません。

でも、それは金額の話であって、900円で冷凍食品の揚げ物の定食を食べるか、1200円で国産赤身肉のステーキ定食を食べるか。
冷凍食品の揚げ物定食に900円払うなら、1200円で国産牛のステーキを食べる方が安いという人も多いと思います。

そう、お金というのはただ単に金額が高いのではなく、その金額を払う価値があるかどうかということによりますから。つまりValue for Moneyかどうか。

東京-ロンドンビジネスクラスに100万円の価値があると思う人は、100万円払います。
例えば、日本に出張に来たイギリス人が、予定が変更になって1日帰るのが遅くなる。あるいは1日早く帰らなければならなくなる。
そういう時に15万円の格安エコノミーだと変更が効きませんから、もし予定を変えたいのであれば持っていたキップは紙くずになっても新しく買いなおさなければなりません。
新しく買いなおすとすれば、エコノミーだってノーマル券しかありませんから50万も60万もする。
だったら最初から100万円出してビジネスクラスを買っておけばよいと考える人たちが100万円払うわけで、その金額は仕事上、予定変更の可能性がある彼らにとってはValue for Moneyなんです。

あるいは、飛行機が何らかの都合で遅れることになったとします。
たいていは航空会社の都合によるのですが、そうした場合、ノーマルのキップであれば他のどの航空会社の便にも振替が効きます。
でも割引のエコノミーのキップだと、他社への変更は効きません。

昔、ロンドンのオークションの入札に参加する人が乗る飛行機が遅れたことがありました。
私はその人にさんざん怒られました。
「ロンドンのオークションの入札に参加できなくなったら、いくら損害が出ると思うんだ?」とね。

でも、変更できない格安のキップを買ったのはお客様なんです。
こちらが「格安の切符を買いなさい。」と言ったわけじゃないんですよ。
だから、私はそう申し上げたんです。
「何のために正規運賃の航空券があって、何のためにビジネスクラスがあると思いますか?」って。

当時の私はまだ30代。
お客様は40代でしたが、生意気な奴と思ったんでしょうね。

でも、格安のエコノミーを買ったばっかりに、飛行機が遅れてロンドンの入札に参加できなくなった。
それがリスクであるなら、100万円のビジネスクラスって、決して高いものではないのです。

これがValue for Moneyということです。

おもしろいことに、その人は次に会った時にビジネスクラスの切符を買ってきました。
「鳥塚さん、あんたに言われたからビジネスにしたよ。」ってね。

私は不思議なことにクレームを受けたことがきっかけになって、それからお客様と仲良くなっちゃうことがあるんです。
以前にお話ししました赤倉のホテル金甚の金子社長さんもその一人かな。
同僚に言われたことがあります。
「お前さんの真似をしてみたけど、逆に余計に怒られちゃったよ。」ってね。
たぶんこれが私のキャラだと思いますが。

でも、世の中にはこのValue for Moneyということがわからない人が多い。

今回雪月花を走らせるにあたって、会議の席上で「8万円」と私が言ったら皆さん驚いた。
「社長、高すぎませんか? 集まらなかったらどうするんです?」

申し訳ないですけど、私は取り合いませんでした。
自分の会社の商品を「高い!」と言われる人たちと会議をしても始まりませんから。

昨年10年ぶりに運転再開した只見線に雪月花が走る。
それも1往復だけ。
この価値をどう考えるかですから。

新橋のガード下で酎ハイをちびちび飲んでいる人もいれば、バーで貴重品のウイスキーをじっくりと飲んでいる人もいる。
お金の価値は人それぞれです。
こういう言い方が気に障るとしたら、新橋のガード下で酎ハイをちびちび飲んでいても、それは日常だからそんなに大きなお金は使わないけど、非日常の自分が「コレだ!」と思ったものには躊躇なく大きなお金を払う人もいる。

つまり、その人にとって、何がValue for Moneyであるか。

只見線を走る雪月花に8万円払って乗ってみたいと思う人が、日本全国に100人いれば満席になるわけですから、今回ご乗車いただきました皆様方はValeu for Money。
つまり、その価値がおわかりになる方々であったと、私は考えています。

こういう商品を企画するときは、自分だったら購入するかな、ということを基準にして価格を決める。
私はそれをポリシーにしています。

もちろん、毎日飲んでいるのは芋焼酎で、めんどくさい時は夕食は魚肉ソーセージという生活をふだんはしていますけどね。


▲違いの分かる男たち

ご乗車いただきました皆様、ありがとうございました。