地域おこしの法則化 その2

前回から1週間以上が経過してしまいましたが、「地域おこしの法則化」について、その2です。 
田舎の町が今のように廃れてしまったことには必ず原因があって、その原因をしっかりと見極めて、それを除去していかなければ、いくら専門家の先生たちが有効な対策を打ったとしても活性化しないというのが、地域おこしの法則化に対する私の考えです。
「長年にわたってその町に住んできた人たちが、結果としてその町を今ある状況にしてしまった。」
これは紛れもない事実であって、簡単に言えば、その原因となった人たちが、同じ組織や自治の考え方のままでいくら努力をしても、いくら補助金をつぎ込んだとしても、効果はありません。
なぜなら、今の態勢のままでできるぐらいなら、その町は今のような状況になっていないわけですから、やり方を変えなければならないというのが、一番正しいスタートラインなのです。
でも、田舎の町の人たちは、農業にしても漁業にしても、十年一日のような仕事が多いということと、人口に占める公共的仕事につく人の割合が多いために、「前例主義」が蔓延し、新しいことを始めづらい構造があって、それに輪をかけるように、異端を排除するという集団の掟のようなものがあちらこちらにはびこっていて、とにかく何をやるにも周囲の合意を取り付けないと前に進めない構造になっています。そして、周囲の合意を取り付けるためには、「長(おさ)」の地位にある長老たちを説得しなければなりませんから、物事がまったく前に進まないわけです。
こういうところに長年かかって町が衰退してきた原因があるわけで、その所にメスを入れない限りは町おこしもなければ地方創生もないわけで、こういうところをきちんと解決できたところだけが、2040年に生き残れる。つまり、全国津々浦々の田舎町の全部が全部、生き残れるわけではないということは最初から分かっているわけです。
それはなぜかと言えば、人口が減ってくる時代だからで、つまり経済のパイそのものが減ってくるのですから、そういうことも法則化できるわけです。
例えば、業界で1~5位の企業があるとします。
コンビニで言ったら1位がセブン、2位がローソンというような序列がありますが、不景気で市場が縮小してお客様が全体で2割減ったらどうなるでしょうか?
1位から5位まで、すべての企業で売り上げが均等に2割減るとお考えになるかもしれませんが、実はそうではなくて、4位と5位が消えてなくなるということなのです。
そして、1位や2位の会社は市場が縮小しているにもかかわらず、売り上げが増える。
これが、マーケティングにおける法則化で、事実、コンビニチェーンでも下位の方は統合されて名前が消えてしまってますし、上位の会社はますます勢いをつけています。
こういうことを考えると、同じように田舎町が全国どこでも人口が減っている。つまり市場が縮小していく中で、結果として大都市の人口は増えているわけで、田舎というものが消えてなくなって、都会に一極集中してしまいますよというのが、法則に基づいた警鐘なわけです。
ところが、田舎の人たちは、いくら口を酸っぱくして「このままではダメですよ。」と言っても理解できないし、しようとしない人が多い。なぜならば、狭い地域の中の狭いコミュニティーの中で日々生活している人と、都会にいて荒波にもまれている人とでは、状況を認識できる能力に根本的な差があって、都会にいて世界に目を向けて情報をキャッチして、対策を立てて、実行するPDCAサイクルの「癖」が付いている都会人と、その「癖」の必要性すら感じていない田舎の人とでは、同じスタートラインに立つことすら不可能だからなのです。
私はいすみ鉄道を預かる身ですから、私がこういう話をすると、いすみ鉄道沿線のことだと思ってしまう方々が多いと思いますが、実はいすみ鉄道沿線の人たちは、いろいろな刺激を受けて少しずつ変わりつつあるということと、就任して6年も経つと、長老と言われている人たちも入れ替わってきていますから、私は、いすみ鉄道沿線地域は、このままいすみ鉄道を維持して、上手に使っていくことができれば、消滅の法則からは何とか抜け出せるのではないかと思っていますが、安倍総理が口癖のようにおっしゃる「全国津々浦々」という、その全国津々浦々の町すべてに、景気回復と地方創生の恩恵があるかというと、上記のような法則で、そうはならないということは事実なのであります。
(つづく)