最近は「居酒屋新幹線」というものが流行っているらしい。
テレビでイケメンの俳優さんがやっていたからでしょうか?
でも、コロナが明けて一気にお客様が戻ってきている時代に、新幹線の中で居酒屋開店するなんて、グリーン座席ならまだしも、普通車じゃ迷惑な話なんではないでしょうか?
と、思ってしまいます。
何しろ、土日は満員ですからね。
平日でも結構乗っている。
だから、新幹線は乗っている時間はとりあえずスマホで動画でも見るか。
という人が多いですよね。
座席でお仕事を、とか言ってもWIFIもろくに通じないし。
トンネルばかりで景色も見えないし。
車内販売で買ったコーヒーは明らかにインスタントだし。
つまらないねえ。
昨今の汽車旅は。
となると、お爺さんとしてはどうしても昔を思い出すわけで、そうなると昔の時刻表を引っ張り出して紐解いてみるのは昨日も今日も同じです。
本日は1985年。
今から38年も前のお話しです。
表紙は国鉄が初めて作ったリゾート列車「サロンエクスプレス東京」。
見るだけで乗ったことはありませんでしたが、なんたって1985年の私は25才でありますから、生活に追われてピーピーだったころの話です。
さて、新幹線のページを開くと今とは違う記号があることに気が付きます。
わかりますか?
食堂車とビュッフェのマークです。
新幹線には食堂車とビュッフェが連結されていたのですが、よく見ると何か書いてあります。
帝国・都・BT・日食
見えますか?
これ、新幹線の食堂車やビュッフェを営業している会社の名前なんです。
帝国:帝国ホテル
都:都ホテル
BT:ビュッフェトーキョー
日食:日本食堂
当時の国鉄は新幹線の食堂車は自分たちでは手に負えないと判断して、お客様へのサービス向上の一環として、食堂車を営業する事業者を募集したのです。
そして、東海道山陽新幹線はこの4社が担当していました。
以前にもお話ししたことがありますからご記憶の方もいらっしゃると思いますが、時刻表にこういうマークがついていると、「さぁて、どの列車で行こうかな?」とワクワク感が高まりますよね。
何しろ帝国ホテルや都ホテルのシェフが乗っているのですから、駅構内で食堂をやっていて不味くて有名だった日本食堂の列車は敬遠して、やっぱ帝国ホテルでしょう。
てなことを時刻表を見ながら考えるわけです。
で、巻末のピンクのページを見るとメニューが出ている。
「レストラン新幹線」
帝国ホテルを見るとビーフシチュー定食が2100円。
ビュフェとうきょうは2000円。
都ホテルのビーフシチューは2000円。
どれも似たような価格ですね。
だったらやっぱり帝国ホテルでしょう。
となるわけです。
こういうのが乗りたくなるような列車なんです。
でもね、さっきも書いたけど、当時の私は25歳。
女房子供持ちですから、そんなの食べられるはずないんですよ。
新幹線には乗りました。
帝国ホテルの食堂車にも乗りました。
でも、食べたのはカレーライスでしたよ。
800円か1000円したと思いますが、精いっぱいの背伸びでした。
今から38年も前の2000円ですからね。
でも、今だったら3000円ぐらいでしょうか。
あまり物価が上がってないとはこのことで、東京-新大阪間の運賃料金もこの通り。
当時は運賃と特急料金で12600円。
今は14500円ですから、ほとんど変わっていないと言ってもいいと思います。
でも、20代の人間には食堂車は高根の花でしたし、食堂車ばかりでなく寝台車もグリーン車も、「いつかは乗ってみたい。」という対象でした。
だから、乗りたくなるような列車がたくさん走っていたのです。
国鉄は赤字を解消しようと、少しでもお客様にご利用いただくために、ありとあらゆるサービスをしていましたが、この2年後、国鉄がなくなってJRになると、徐々に各種サービスをやめていって、皆なくなってしまったのです。
でも、私は思うのですよ。
自分たちでやらないのなら、やりたいという人にやらせないといけませんよね。
自分たちはやらないけど、ここは俺たちのテリトリーだから、他の誰にも好きにはさせない。
こういう精神が見え見えですから、結局皆さん潮が引くように去って行って、誰も乗らなくなってしまっているのではないかと私は思います。
同じ時刻表の飛行機の欄です。
当時から飛行機もこれだけ飛んでいて、お値段も新幹線とあまり変わらなかったのですが、今の時代、価格の弾力性という点においては、飛行機は新幹線に比べるとはるかに大きいですから、何もエンターテイメントが無く、サービスもないような空間に何時間も詰め込まれるようなら、ジュースを飲んでちょっとうとうとしている間に到着する飛行機の方が、どうしたって選択肢に入りますね。
羽田-新潟に飛行機が飛んでいたら、私は間違いなく飛行機を利用しますよ。
だって、鉄道はワクワクしないですから。
単なる移動手段としてなら、やっぱ飛行機でしょう。
ということで、しっかりした地域輸送を提供することはもちろんですが、それだけではじり貧になることが目に見えていますから、わざわざ乗りに来たくなるような列車を走らせるという、旧国鉄系の会社にはできないことをやるのが、トキ鉄の使命なのであります。
はい、これが本日の私のレストラン新幹線でした。
帝国ホテルはいずこへ?
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