優等列車の劣等座席

物事には優劣というものがあるようです。

でも、そういうのがキライな人たちもいて一等車とか二等車という言い方はやめましょうとなったのが今から53年前ですか。

そして出来たのがグリーン車と普通車ということになっていますが、呼び方は変わってもやっていることは同じで、なぜならば世の中にはある一定の割合で一等車に乗りたい人たちがいて、乗れる人たちがいる。
一等車という呼び方が消えても、そういう人たちがグリーン車に乗っているのですから、実質的には同じことなわけで、強いて言うならば東海道新幹線の16両編成中に3両グリーン車が入っている。
ということは、東海道新幹線を利用する人たちのうち、13:3の割合でグリーン車に乗る優等旅客がいるということになります。

そもそも論として、国鉄時代は普通列車に乗ると日本全国旅行できる仕組みというものがあって、東京から青森だって、あるいは鹿児島だって、時間はかかるけど乗車券だけ買えば普通列車に乗ってどこへでも行くことができた。
そういう時代に、ちょっと速く行きたい人や、座席が柔らかい方が良いという人たちが乗車券(運賃)以外に特別な料金を支払うことで急行列車や特急列車に乗ったり、あるいはグリーン車や寝台車に乗って旅行をしていたけど、そのころから急行列車や特急列車のことを優等列車と呼んでいて、グリーン車や寝台車のことを優等車両と呼んでいた、ような記憶があります。

さて、時は移り変わって令和の時代。
やってやれないことはないけど、普通列車で日本中を旅することはデフォルトではなくなって来ていて、どちらかというと悠長な趣味人の世界の感が強く、鉄道の旅は特急列車に乗らなければ現実的でなくなってきたのでありますが、その特急列車を今でも優等列車と呼ぶとすれば、普通列車は何なんだろうか、と考えるのであります。

はてさて、かくいう私は本日その優等列車の新幹線に乗って千葉の家から帰ってきたのでありますが、本日乗車したのはグリーン車でもなく指定席でもなく、もちろんグランクラスでもない。後ろ4両の自由席車。
言うなれば、優等列車の劣等座席とでも言えるかも。
言いたくはないですけどね。

でもってその自由席車というのが意外と快適でして、車内はこんな感じ。

そう、空いているのであります。

列車内では車掌さんが「本日は指定席車は満席です。すべて発売済みです。今空いているお座席にも途中の駅からお客様がご乗車されます。お座席をお間違えの無いように号車番号、座席番号を今一度お確かめください。」と連呼している状況ですが、見に行ってないから本当に満席かどうかはわかりませんが、とにかくそういう状態なのですが、自由席車は空いていて、私はA席に座りましたが、途中からC席にお兄さんが座っただけで、結局B席は空いたままでした。

う~ん、こういうこともあるんだなあ。

確かに指定席というのは座席が確保されているだけですから、隣の席に誰か来るか来ないかは保証ができないし、車内に入って自分の席の隣りに変なオヤジが座っていて、イヤだなあと思ったとしても他の席には行くことができないわけで、その点、自由席は座席は自分で確保しなければなりませんが、空いている席ならお好きな席に座れるのでありますから、まぁ、自由を謳歌することができるわけで、余分な料金を払うことを優等と定義する国鉄以来の鉄道業界的には自由席は劣等座席と言われるかもしれませんが、考えようによっては指定席よりも優等であると、
安い割には良い買い物をしたときの優越感に浸ったのであります。

思い起こせばあれは昭和54年ごろだったと思いますが、確か小田急線の厚木あたりから板橋の家に帰る時に、ちょうどロマンスカーが来る時刻。「はこね」じゃなくて「あさぎり」か何かでしたが、指定券を買って列車に乗り込むと私の席がない。
いや、正確には私の席に他の人が座っている。
それもおばさん。
全く知らない人。
しかも3人連れ。
そして座席は向かい合わせ。
温泉帰りでワイワイガヤガヤ的なおばちゃん3人が、お酒やお菓子を広げてもう出来上がっていて、「お兄ちゃん、ここ? 座り!」って感じで座らされた。
こちらは19歳、紅顔の美少年。
向こうはおばちゃん3人組。
まるで針の筵(むしろ)状態で、僕何も悪いことしていないんですけど、どうして特急料金払ってこんなところに座らなければならないのでしょうか。

小田急のロマンスカーって大っ嫌い!

ということでそれ以来私は指定席というものは基本的には乗らない主義だったのですが、いつのころからか人間が横着になり、勘違いが始まり、指定席どころかグリーン車、A寝台、個室、ビジネスクラスにファーストクラスと、人間が成り下がっていったのでありますが、本日は今年最後の旅ということで、原点回帰で自由席に乗ったところ、なんとなくちょっとトクをした気分なのであります。

さて、そうは言っても列車の編成はグランクラスを先頭にグリーン車、指定席車、自由席車と見事に世の中の縮図になっていて、優劣が付いているわけでして、その証拠に駅に降り立つとどこの駅でもエスカレーターがあるのは先頭車に近い方で、劣等座席は階段のみなのであります。

昔からある新幹線の場合は、エスカレーターは後付け工事で設置したものが多く、その駅の構造によって取り付け位置が違いますが、最初からエスカレーターを設置する設計の我らが北陸新幹線のような路線は、それはそれは見事に優等座席側にエスカレーター、劣等座席側は階段のみという造りになっていて、上越妙高もそうですし糸魚川も金沢もそうなっているから、これがデフォルトなんでしょう。

喫煙所も優等旅客側についているんですね。

実にはっきりしている。

こういうことに気が付くと、一等二等をグリーン車普通車に呼び方を変えさせた人たちはけしからんと怒るかもしれませんが、私はそうは思いません。
実にはっきりしていてわかりやすい。
そりゃ、両方にエスカレーターを付けることができればそれに越したことはありませんが、どちらか一方となればそうなるでしょう。
それが世の中というものですから。

ということに気が付いたのが劣等座席旅客の本日の収穫であります。

でもね、本当の優等列車というのはそうじゃないと思いますよ。

本当の優等列車というのは、こういう列車を言うのです。

だってそうでしょう。
いくら座席がよくたってサービスがねえ。
お姉さんが乗らないから2500円安くしときますよ。
そう言われてもちょっとですよね。

特にこの冬のコースは列車を飛び出して町中を散策し、百年料亭で特別料理をいただくなんてコースも設定しているわけで、こういうホスピタリティ満点の列車こそ、令和の優等列車のふさわしいのではないでしょうか。

ということで、手前味噌になりますが、私共の自信作をお届けいたします。

お席には限りがございますので、どうぞお早めにお申し込みくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

えちごトキめき鉄道 雪月花ご予約サイト

写真のお料理は冬季1・2月 高田百年巡りコース(お食事:百年料亭 宇喜世)
1月7・9・22日運転となります。

皆様方のご乗車をスタッフ一同、心よりお待ち申し上げております。