知床遊覧船の事故

悲しい事故が起きてしまいました。

この事故のニュースを聞いて何が驚いたかというと、遊覧船が小さいこと。
私は北海道には多分百回以上も行っていますが、知床半島に足を踏み入れたことはわずか数回。
入口の斜里、そしてウトロ、東側の羅臼までは車で行かれますので、横断道路を通って知床半島の中ほどぐらいまで入ったことがありますが、そこから先は一度もありません。
なぜなら、半島の奥へは道路がないので交通が通っていないからです。

それを補うのが船。
つまり、知床半島というところは、船でなければ行かれない場所がほとんどなのです。

知床というところは世界的に見ても素晴らしいところです。
その素晴らしい環境を私たち人間が破壊しないためには道路は作らない。
これが今の所の正解とされています。

そして、その保全された景観を船から観測する。
それが知床観光とされています。

そして、今回の事故は、その知床観光のメインコースである観光船が何らかの理由で沈没したらしい。
そういう事故です。

そして驚いたのは、事故そのものもそうですが、観光船と呼ばれる船がとても小さいこと。
もちろん大きな船もありますが、大きな船は陸地の近くまで寄れないので、それをカバーするために小さな船がたくさん運行されています。

今回事故を起こしたのはその小さな船のようで、一見小回りが利くようですが、それが仇になったような気がしてなりません。

小さな船というのは小さな会社でしょう。
2年以上続くコロナの影響で観光事業はどこも大きな痛手を受けています。
小さな会社ならなおさらでしょう。

その小さな会社の小さな観光船が、20名以上のお客様を乗せて荒れた海に出て行って沈没してしまった。
天候不良で欠航すれば収入はゼロ。
なんとか行けるかもしれない。
そんな判断があったかもしれません。
飛行機会社出身の私としては、その辺りの心理作用が働くのは想像できます。

世界的観光地である知床の観光を支える観光船の会社が、そんな心細い状況であること。そして、久しぶりに戻ってきた観光客を何とか取りに行きたいという観光事業者。今シーズン運行開始されたばかりの観光船ですからなおさらでしょう。

このあたりの構造が日本の観光事業にあるということを私たちは考えなければいけないと思います。

行方不明になられている方の一刻も早い発見を願っています。

オホーツク海を望む釧網本線北浜駅。
車窓からは遠く知床連山が見えます。
これだけ素晴らしい景色と自然環境を売り物にする知床半島。
それを支える観光インフラの脆弱さを今さらながら気づかされた事故です。

(写真は参考に載せたもので、今回の事故とは関係ありません。)