時空を巡る旅

観光というのは何もどこかへ出かけるだけがすべてではない。

これ、私の持論です。

先日、急行列車「桜島・高千穂」の話をしましたが、子供の頃はなかなか遠くへ行くことが許されず、時刻表を見ながら机上旅行を楽しんでおりました。

この時刻表の机上旅行というのは私の観光のスタートでありまして、こういう経験をしているからこそ、その後実際にいろいろ行くことができるようになった時に、初めて行った場所にもかかわらず、なんとなく懐かしかったりするような気持ちになれて、そんな場所がマイブームになって何度も訪ねたりするようになりました。

だから、コロナの時代になっても、いくらでも観光はできると私は考えていて、まぁ、もちろん観光地への交通機関や目的地での宿泊などにお金は落ちませんが、次へのステップとして、映画を見たりテレビを見たり、あるいは本を読んだりすることが意外にも大事なことなのではないかと考えたのでありますが、ちょうどその時にじっくりと向き合うことができたのが昨日お話ししたドラマ「北の国から」なのであります。

昨日は5月の連休明けに届いた全巻セットを5か月以上かけて全部見たというお話をさせていただきましたが、ストーリーを知るだけであれば一気に見てしまうというのもありだと思いますが、このドラマのDVDを手にしたときに、1981年~2002年までの21年間が収められていると知りまして、私としてはじっくり見てみようと考えたのであります。

というのも、次から次へ見てしまうと、正直申し上げて消化不良になる気がしまして、なぜなら1つ終わって、次が放送されるまでに数年かかっている回もあるわけで、その数年の間に主人公は成長し、視聴者も成長する。そういう「時」の存在をないがしろにしてすぐに翌日見るようなことをしてしまうのがなんとなく気が引けたからで、ドラマの設定の時間というものが、ちょうど自分が社会に出て、所帯を持って、子供ができて、子育てをして、仕事を変えて、引っ越しをしてという時代だったものですから、消化不要にならないように、1週間とか10日とか、時間を空けて、忘れたころに見てみようと思ったのであります。

もともと、オリンピックやパラリンピックでテレビ枠が取られてしまうことも予想されていて、そういう時に見るにはちょうど良いと思って全巻セットを買ったのですが、トキめき鉄道の方もレールパークの開園、413系の導入など多忙も極めておりましたので、結果として5か月以上かかってしまったわけです。

でも、それがこのドラマにじっくりと向かい合うことができて、自分の過ごしてきた時代を振り返りながら時空を超えた旅ができたのです。

同じようなシリーズ物で寅さんも再販された時に全40数巻セットを購入しましたが、こちらもやはり半年以上かけて見た記憶があります。
もちろん第1巻から順番に見ていったのですが、でも、その時は不思議と時空を超えた旅の感覚がなくて、多分それは寅さんがスタートした昭和40年代は私にとっては「子供の頃」という一塊の時間の流れの中にあったからで、後半になって満男が大きくなったころから、京成電車の柴又駅のシーンも妙に現実味を帯びて見えてきたのです。

そう考えると、人には旬というものがあるようで、私の人生の旬は今思えば「北の国から」のドラマが放映されていた約20年間に凝縮されていたのかもしれません。

それにしても驚くのは純と満男であります。

同じ役者さんが子役の頃から2つの役をやりぬいたわけですが、純を見ていても満男のイメージが出てこないし、満男を見ていても純のイメージが出てこない。
これはなかなかすごいことだと思いますよ。

寅さんだってシリーズではまり役になってしまうと他の役ができなくなってしまったようですから、そう考えると純も満男も演じきった吉岡秀隆という俳優は、見かけはパッとしませんが、大した役者だなあと今さらながら感動しました。

こういうことも私にとっては時空を超えた旅の収穫だったのであります。

「北の国から」、ありがとうございました。