北陸新幹線 50年来の夢実現へ

2014年1月15日に行われた鼎談(ていだん)の記録です。

北陸新幹線の開業に向けてこんなプランを話しあっていたのですね。
個人的には実に興味深い。


上越青年会議所の記録より引用、抜粋

3者鼎談
鼎談ゲスト:泉田裕彦氏(新潟県知事)・村山秀幸氏(上越市長)
進行役:市川裕光(公益社団法人 上越青年会議所 第50代理事長)

第一弾記念鼎談が開催されました。
Posted on 2014年2月9日 by admin
2014年1月15日に新潟県庁特別応接室にて、記念すべき第一弾の対談が実施されました。
第一弾記念として、新潟県知事でおられます「泉田裕彦」様と上越市長でおられます「村山秀幸」様との
3者鼎談を開催致しました。
約一時間という短い時間の中で、非常に内容の濃い鼎談をすることが出来ました。

☆北陸新幹線 50年来の夢実現へ!

[市川理事長] 2015年に北陸新幹線が開業。しかし、様々なビジネスチャンスの期待感より、人口流出や単なる通過駅にしか過ぎないといった危機感の方が、期待感より増している。そういった危機感から既に積極的に人々を呼び込もうと考える市民が少ないムードも漂っている。だが、上越市の更なる発展の期待の星である北陸新幹線の開業が、危機感から好転し50年来の地域の夢の実現に市民一人一人が喜び、期待に胸を膨らませる事が一番重要であると考える。そうなる為に、これからのまちづくりや意識改革及び意識向上に向けて上越JCでは今年「美と癒し・食と健康まち上越」を女性目線という観点での事業をすすめていく。それらの事業でより観光客で溢れる魅力あるまちになる為には、それぞれどう思うか。

[泉田知事] まず北陸新幹線の与える影響だが、都市圏がつながることを考えた時にどうなるかという基本的な構造を先にお話しする。今まで金沢・富山は西に近ければ近いほど大阪圏との結びつきが強くて、6:4か7:3で関西圏の方に結びついていた。だから北陸本線が特急銀座になっているのだ。北陸新幹線は首都圏との関係で考えると、富山・金沢を目的地とする新幹線であり、基本的には世の中はそのように受け取ると思う。したがって東京圏で上越の宣伝を一生懸命やっても、長野・富山・金沢に比べて、どれだけの方から上越にお越しいただけるかということは、厳しめに考えておいた方がいいと思う。

一方、北陸圏とつながるため、北陸からたくさんの方が来てくれるだろうと思っているかもしれないが、例えば上越から富山空港へ行くときは、新幹線で行くだろうか。車が多い。実は近距離は車である。新幹線というのは長距離高速移動の手段なので、近県からの来越者を考えてもそれは机上の空論である。普通に考えたら2次交通もあるので車が便利である。近県とは高速道路の方に軍配が上がるという現実である。

実際上越新幹線が開業した時に、上越の方も新潟の方も、例えば熊谷を目指したか。皆、東京を目指したはず。熊谷駅で降りた人がどれだけいるかと聞いてみればわかるのだが、高崎駅ですら降りたことがない人が結構いる。同じ状況が金沢・富山からの東京行きの乗客に生じるという現実は、踏まえておいた方がいいと思う。

そういった中でWin-Winの関係を築けるのは関西圏である。北陸圏というのは人口200万人しかいないのだが、関西圏はその10倍ある。それで大阪から見たときのJR西日本の最長営業距離というのは博多までの山陽新幹線というのがドル箱になっている。ところが、もう一個ドル箱が増える可能性がある。それが上越妙高駅までの北陸新幹線ルートです。これも大阪からみるとJR西日本管内から東に向かう最長距離の一つとなる。例えば九州新幹線が開業した時に関西の人は九州目指した。「ななつ星」という列車もあり、九州新幹線に乗るためだけに九州行くというお客さんがいた。そうすると関西圏の人は、金沢まで来ても新幹線に乗れない。北陸新幹線に乗るためには金沢から新幹線に乗ってディスティネーション(目的地)を求めなければいけない。関西圏から来た人が金沢で乗り換えて東京を目指すか。目指さない。関西の奥座敷としてのJR西日本の最長営業路線の到着駅が上越妙高駅になっているという現実がある。

JR東日本は今度金沢に支社を作る。それでここから誘客しようという目的で根本利益を彼らは狙っている。JR西日本の路線だが、最後東京を目指すというのが前提になっているから、ここで誘客したい。元々上杉謙信、戦国時代、さらには上杉景勝の時代でいうと大阪を相手に五大老の一人が上杉家であったので、当然関西との繋がりっていうのもある。甲子園球場に銅像が立っているが、あの方は新潟県人である。アサヒビールも創始者は新潟県人であり、琵琶湖周航の歌の作詞作曲者の吉田さんも新潟県人である。それだけ元々新潟と関西は縁があったのに今は途切れている。それから関西の旅行会社にとって、最も利益の出る路線としての目的地をどう設定するかというのが問題だと思う。単においしいもの・健康というものもあるが、新幹線に乗りに来るということも一つの魅力であり、並行在来線をそのときにどうキラーコンテンツとして活用するかが課題。

これで北陸線区間と信越線区間を比べると、信越線区間の方がいい。なぜかと言うとスイッチバックがあってトンネルが少ない。北陸線区間はトンネルばかりという所もあるので、景色を楽しむのなら信越線区間である。もう一つは、意外だと思われるかもしれないが、私は大糸線だと思っている。自然環境に弱いということもあるのだが、逆に言うと風光明媚である。この大糸線に顧客を誘導することができれば、レトロな車両を走らせた方がいいし、リゾート列車も今度の並行在来線会社に投入するので、新駅も作ろうと思っているので、要望があればお待ちしている。

来年度年頭にやりたいと思っているが、そういった地域の歴史とか文化とか関西とのつながりの再発見が大切。あとは佐渡。東京で売ると最も売れる人数と金額が佐渡。これが一泊二日で十分行ける距離圏に入ってくるというところである。こういった人たちをどう誘導していくのか、鉄道ファンに関心を持ってもらうのか、食でいくのか、女性だけなのかというと私はもうちょっと色々可能性があるのではないかと思う。無論企業の社内旅行だってターゲット。団体旅行だって狙うというような中で、こんな企画どうですかと持っていったらどうだろうか。あらゆる可能性は排除せずにいくというのが私はいいのではないかと思う。

[村山市長] 知事は京都大学だから関西のメンタリティを越後に向ける考えがあるので、角度を変えれば、我々自身が新幹線をどうやって活かしていくかが問われていると思う。来ることに対しては例えば、そこに行かねば食べられない物、そこに行かなければ見られない物、そこに行かなければ買えない物、こういう物を我々が確実に持つか持たないかというのがディスティネーションになるかならないか選ばれるか選ばれないかということになると思う。そして、我々自身が新幹線を活かしながら生活の質を変えていく、生活の豊かさが実感できる、通学とか通勤とかその時間距離の中でできることは随分出てくる。このような部分に使っていくことによって、我々の生活が変わっていくという風にして豊かさを実感するというのが本当は大事なのだろうと思う。

だから、開業がスタートであって、もちろん終着ではなく、そこから色々な工夫をしながら、あんなことも利用できた、こんなこともあったねという話になっていくと思う。以前、富山の銀行の支店長とお話ししたのだが、ある富山県の企業では、北陸にしか自分たちのエリアが無いが、既に首都圏にまで目を向けて仕掛けており、上越に自分たちの会社を作り、「新潟の営業所にも長野の営業所にもなります。」という動きが既に富山の企業の中に出てきているそうだ。「上越に企業誘致っていうのも大事ですね。」という話がこの間あった。そのように我々が想像もしない動きが企業に出ている。だから、以上の事を踏まえると上越が通過地点になると皆さんがおっしゃるが、通過地点になって佐渡に行ったとしても、結果的に確実に我々に何か地域にもたらしてくれる物があるだろうと思う。

また、長野の善光寺の御開帳が来年の4月6日だそうだ。新幹線の開業が3月なので、御開帳と重なる時期は上越での観桜会と重なる。今まで650万人ぐらいしか来なかった人たちが今度は関西から御開帳にどれくらい来るか、どれだけ長野にPRできるかによっては700万人とか750万人になり得る。その増えた分、上越での観桜会が増えるかもしれない。その時その時の色々な仕掛けの中でお互いの持っている強さを発揮する連携というのが大事だと思っているので、知事のお話と私たちが自分たちの生活に新幹線を活かしていくという両面が新幹線の効用だと思っている。

[市川理事長] 今年もそうだが、来年も上越市が全国に発信する大きなイベントなので、私たち上越JCがこの地に住まう経済団体として、しっかり高田開府400年や、新幹線開業等しっかりそれらのイベントに追従しながら、またJC独自の観点で事業を展開してまいりたい。

[泉田知事]  一つお願いだが、是非、電車に乗ろうというのをJCから積極的にやって頂きたい。「鉄道のあるまちづくり」として、多くの人に乗って頂きたいのと、駅の乗り換えもお金をかけて新幹線駅と直結させるわけなので、これが出来る仕組みを考えて欲しい。またこれから新駅を作るのであれば、パーク&ライドを視野に入れ、進出企業を誘致したり、なければ駅前を全部駐車場にして、車との接点、電車とのまちづくりをどうするかという観点を是非持って頂きたいと思う。

[村山市長]  ときめき鉄道が地元に出来て、その効用をきちっと我々が受け取らなければいけないので、「電車のある風景」って良いと思う。先ほどのスイッチバックは11月2日のイーストアイの時に鉄道ファンが、一泊4万3千円のツアーに35人来られた。それで一日目はスイッチバック見て、次の日はコッペル号を見に行き、翌朝6時20分に上越妙高駅にて、みんなで旗振るというツアーに35人も来て下さると言うのだから。

[泉田知事] スイッチバックを見たいという目的がある。あと支線で運転できる仕組みがあったらいいと思う。検討は指示している。ここから100mとか、営業区間外とか。

[市川理事長] ちょっと余談だが、世界の鉄道番組が放映していて、実際に運転席の中に入れるようになっていた。

[泉田知事] 入れるだけでなく、運転できたら尚良い。パック商品か何かで5万5千円で運転もできる等色々可能性は追及していくべき。新幹線に乗ってきて下さいっていう企画でも良いと思う。

[市川理事長] そんな考えを実現できるか検討したい。

[泉田知事]  事務方は検討しているので聞きに行ってほしい。どこからどこまで可能性があるかどうか。

[村山市長]  県の職員が通勤時に電車使うという支援策や、同じ電車に乗ってもらう為に観光視点で運転席に入って運転できる企画という内容である。

[市川理事長] ひとまず私たちは高田で飲食をしたら、二次会は直江津に電車で移動してということ。

[泉田知事・村山市長] 賛同。

[泉田知事]  あと駅前に更に繁華街を用意し、みんな電車で近くまで行き、帰りは終電をはじめ公共交通機関を使うといった色んな考えが広がると良い。

[村山市長] ときめき鉄道は夜の酔客に何時に発車するといった最終電車の案内が出るかもしれない。

[泉田知事] あと上越市役所の前にある、駅舎を市職員全員が利用できるようになったら、また全然違うのではないかと思う。

[村山市長] 職員が一番近いですよね。

[市川理事長] 現在は下をくぐらないと中々。

[泉田知事]  ちょっと離れた所に乗り換えのパーク&ライドのポイントを用意しておけば、みんな電車で来て、電車で帰れるという。色々市長にも協力してほしい。

[村山市長]  新潟から色々なアイデアが出て、我々がどこでしっかりそれをキャッチアップするかである。

[泉田知事]  あと四セク化というのもあり、企業に株主になってもらい株主優待券が出るなら乗ってくれるはず。勿論券を忘れてきた際は払って頂く。市民が愛着あるマイレール意識をもつことで新幹線につながり、未来につながる鉄路だという意識を大勢の人に持って頂きたい。

[村山市長]  この間、上越しゅしゅクラブという女性の会が直江津から妙高高原までお座敷列車を運行した。それに私も乗せてもらったが、スイッチバックをせずに真っすぐ上がったのだが、妙高高原までだったので乗車は三時間くらいで下ってきたんですけど、色々な中身を考えると五時間位のボリュームがあった。

[泉田知事]  それで温泉入ってきて、紅葉狩りでもできたら最高である。

[村山市長]  そして勾配が何ともいえない。知事がおっしゃったように信越本線の山線を走っていると絶えず勾配がでてくる。勾配が何ともいえない雰囲気でその日は雪がチラチラ降っていた。いい企画だった。

[泉田知事]  良い宝がいっぱいある。

[村山市長]  そうである。

[市川理事長] いい参考とヒントが頂けたと思う。ありがとうございます。

********************************

ふ~ん、そうだったんだ。

泉田さんって交通に関して基本的なところがきちんとわかっていらっしゃったんですね。
並行在来線を引き受けることに関しても。
観光鉄道にしなければ地域需要だけではやって行かれないことも。
地元行政がきちんと利用促進をしなければならないことも。

とりあえず、そういう感想。