国鉄形の効能

直江津に国鉄時代のカラーリングに包まれた電車がやってきました。

いい色ですね。

国鉄時代はこの色の急行電車が走っていて、この電車を見ると「遠くへ行くんだ。」と思ったものです。

この色の電車は交直両用電車のシンボルで、東京や大阪付近は直流電化区間でしたから、この電車はその直流圏内を越えて、子供心に「はるか遠くまで連れて行ってくれる電車。」だったのです。

どのぐらい遠くかというと、例えば福島県の会津若松。
上野駅を23時50分過ぎに出る急行「ばんだい」に乗っていくと、朝5時に会津若松に着くんです。すると、すぐ隣で5時9分発の日中線の熱塩行が待っていて、その日中線の列車はC11形蒸気機関車が引いていましたから、私の思い出の中のこの電車は憧れの蒸気機関車に会いに行くことができる電車なのです。

ということで、レールパークとこの電車はセットなのです。
皆さんにこの電車に乗って直江津にD51に会いに来てもらいたいから。

こうして見ると、電車と蒸気機関車の違いはありますが、やはり同じ時代なのです。

さて、国鉄時代の電車をその当時の色に塗るとどうなるか。
まぁ、この413系は国鉄末期の車両ですから実際には急行電車に使われることはありませんでしたが、それでもあえてこの色に塗ったのは、国鉄カラーというのは全国区だからです。

どういうことかというと、私のように東京生まれの人間は上野駅から発着する長距離電車の印象がありますが、大阪の皆さんから見たら北陸方面に行く電車の印象でしょうし、九州の皆さんにとっても思い出の電車なのです。
つまり、国鉄時代というのはどこへ行ってもほぼ同じ電車が走っていましたから、全国区ということで、ということは東京の人も、大阪の人も、福岡の人も皆さんこの電車に乗っていたわけですが、「遠くへ行く電車」だったということは、東京の人だけじゃなくて、栃木の人も、福島の人も、茨城の人も、宮城の人も、山形の人も、岩手の人も、この電車を見たら懐かしいと思ってくれるでしょうし、大阪の人だけじゃなくて、滋賀の人も、福井の人も、石川の人も、富山の人も、もちろん新潟の人もこの電車を見たら懐かしいと思ってくれるのです。

ということは、この電車に乗りに来た人なら、初めてトキ鉄に乗った人でも、初めて直江津に来た人でも「懐かしいなあ。」と思ってくれるということで、これが国鉄時代の電車の効能だと私は思います。

もちろん、D51だって同じですね。
あぁ、懐かしい。
初めて直江津に来た人が、懐かしいと思ってくれているのですから、これは地域にとっても有利なツールになるはずです。

ということを実は私は前職時代に実証済みなのは皆様方もご存じの通り。
国鉄時代のカラーリングをまとったキハをお目当てにやってきた皆様が、初めて来たのに「懐かしいなあ。」と思ってくれる最強の役者なのです。
なぜなら、キハは北海道から九州まで全国で走っていましたからね。
日本人の思い出の景色の中に溶け込んでいるのです。

こういう効能があるということは実際に塗ってみて、線路の上に置いてみるとよくわかりますね。
違和感があるという人は来なければ良いだけのお話ですから。

つまり、こういうことが文化なのであります。
わかる人にはわかりますが、わからない人にはいくら説明してもわからない。

まぁ、3両編成の電車が週に2日間走るだけですから、わからない人に無理にいらしていただかなくても、わかる人にいらしていただくだけで商売にはなると考えております。

ただし、商売をやる側がこういうことをきちんと理解していないと、お客様はいらしていただけませんね。
なぜならば、顧客心理を理解できない人は商品を作れないからです。

さあ、トキ鉄沿線の皆さん。
いよいよ皆様の町が全国区になるチャンスですよ。

なにしろ初めて来た人に「懐かしい」と思っていただけるということは、地域のファンになっていただけるということですから、単なる観光客誘致とは本質的に違うのであります。