地元の人のために走る観光列車

先日来JR北海道の観光列車のお話をさせていただいておりますが、厳冬期の北海道を走る「SL冬の湿原号」や「流氷物語号」など、厳しいコロナ禍にあってきちんと運行をしています。
いったいどんな人たちが乗っているのだろうと思って自分の目で確かめてみたら、乗っているお客様というのが地元の人たち。
北海道の人たちが北海道の観光列車に乗っているのです。

去年まではインバウンドや本州からの団体客がメインでしたので、今年はいったい誰が乗るのだろうかと少々不安になっていましたが、地元の人でにぎわっている。
なぜなら、地元の人たちは今まで乗ったことがなかったのと、本当だったら東京や大阪、あるいは海外に遊びに行きたいけれど今は行かれないということで、人間はどこかへ行きたい生き物ですから、こういう時に地元の観光列車に乗って旅をしているのです。

トキめき鉄道でも観光列車「雪月花」が1月の緊急事態宣言を受けて予約がみんなキャンセルになりまして運休中という状況なのですが、何とかしなければならないと思っていまして、「やっぱりこういう時は地元の皆様に楽しんでいただこう。」と営業チームが沿線の上越市、妙高市、糸魚川市の3市にお住いの皆様限定で特別謝恩コースをご用意いたしましたところ、あっという間に完売になりまして、その地元の方向けの雪月花が先週末に走ったのであります。

直江津駅から雪月花にご乗車される様子です。
中には和装の方もいらっしゃいました。
うれしいですねえ。
特別の日、晴れ舞台です。


ランチコースのお弁当はヨーデル金谷さん。


スイーツコースはセンチュリーイカヤさん。


バルコースは直江津YAGAIYAさん。

地元の事業者さんにご協力いただきまして最高のお料理をご用意いたしました。

皆さん楽しそうですね。
小さなお子さんも憧れの雪月花に乗って大満足のご様子でした。
家族の思い出が地元の観光列車というのは、コロナ禍だから実現できたことなのかもしれません。

中にはこんな方も。

この地元民向け雪月花を企画したご本人の春田部長です。
上越市にお住まいですから乗車資格はありますね。

「とりあえず積んであるお酒を全種類呑んだら追加料金取られちゃった。」

確かに酔っぱらってますね。

バルコースにご乗車いただきましたが、発売当日に自分でネットで予約したようで、「もう少し遅かったら満席になるところだった。」とおっしゃっていました。

実は2月の雪月花は秋に発売した時点でほぼ満席だったのですが、緊急事態宣言でキャンセルになってしまいました。

旅行というのは遠くからくる方にとってみれば数か月前に申し込むというのが常識になっています。
でも、地元の人が地元を巡る旅は「今度のお休みにどこか行きたいねえ。」という動機ですから、せいぜい2週間か3週間前なんですね。
実はここに時差があるのです。

ということで、数か月前から満席だった観光列車でも、緊急事態宣言で急にキャンセルになる。
そのポッカリ空いた空席を埋めるのは地元需要だということも今回わかりました。

この地元の皆様に向けた雪月花は超破格の特別便ということで、社内では「ブランドが崩れる」など反対意見も出ましたが、私は「こういう時期は地元の皆様が地元の良さを知る良いきっかけになる。」と考えまして、反対を押し切って実施しました。
豪華列車にただ手を振って見送るだけではお召列車と一緒ですからね。

正直申し上げまして特別破格でのご提供ですからトキ鉄としては赤にはなりませんが利益に結びつくものではありません。
でも、こういう厳しい時期は目先の利益よりも、地元の皆様方に喜んでいただくことが大事なのです。
車庫に寝かせているだけでは何の役にも立ちませんからね。
地域鉄道の役割というのは、そういう所にもあるのです。

こうした地元密着型の観光列車というのも大きな価値があると思います。
中には親子3代でご乗車いただいた方々もいらっしゃいましたが、地元の鉄道が思い出になるというのは素晴らしいことだと思います。

鉄道というのは夢と希望を乗せて走っているのであります。

ところで、先日YAHOOニュースにも書きました釧網本線の「流氷物語号」ですが、北海道の友人からこの週末は満席だったという知らせが届きました。

インバウンドも本州からの旅行者もいない今、北海道内の観光客で満席というのは、実は観光の本質なのではないかと、この写真を見てそんなことを思ったのであります。

自分の住んでいるところのすばらしさを認識して初めて外からのお客様をお迎えできるのですから。

▼撮影 大熊一精氏

MOTレール倶楽部の石黒さん、頑張っていますね。

やはり、鉄道というのは夢と希望を乗せて走っているということは間違いないようです。

YAHOOニュース
乗らなくても応援できるJR北海道の観光列車「流氷物語号」 運転中です!
は、こちらをご参照ください。