Go To 佐渡

新潟と佐渡を結ぶ佐渡汽船という会社が、コロナの影響で急激に経営状況が悪化してきていて、今所有している「あかね」という高速フェリーを売却して、普通の客船に変えるという話が話題になっています。

この「あかね」という船は直江津港から佐渡の小木港を結ぶ航路に5年前に導入された最新型の船らしいのですが、らしいというのは当時のことは私は知らないものですから、らしいとしか言えないのですが、5年前に「あかね」を導入するときに、直江津港からの船ということで、地元の上越市がかなりのお金を出したらしい。にもかかわらず5年で売却することになったものですから、今、地元では大きな話題になっているのです。

5年前ということはどこかで聞いた話で、何を隠そうわがトキめき鉄道も5年前に走り始めましたから、佐渡汽船の「あかね」と時を同じくしておりまして、とてもじゃないけど他人事とは思えません。

ではなぜ佐渡汽船の経営が苦しいのか、5年前に導入した高速フェリーを手放さなければならないのか、そう考えると、これは佐渡汽船という会社の問題ではなくて、佐渡島そのものの地盤沈下が大きな原因だと考えられるのではないか。
つまり、佐渡島は観光地として人気が無くなってきていて、誰も行かなくなってきているから、だから船会社も経営不振なのではないかと考えるのです。
同業者ですから立場は同じ。
つまり、会社が悪いんじゃないでしょう、と私は言いたいのです。

でもって、いろいろ考えを巡らせているのですが、その途中でハタと気づいたんです。
何に気が付いたかって、「あの、私、佐渡に行ったことがないんです。」

だから、航路の話が実感を伴わないのであります。

では、なぜ佐渡に行ったことがないのかというと、理由はいろいろありますが、まず鉄道が走ってない。子供のころから鉄道の旅をしてきた身としては本格的に沖縄の離島へ行き始めたのもおじさんになってから。東京都民でしたから大島、新島、三宅島、式根島へは行ったことがありますが、それはいつかと聞かれれば高校生の時。
あと、淡路島は去年初めて高速バスで通過しましたが、とにかく島という所にはご縁がない。

では、佐渡島はどういう所かというと、行ったことがある人は皆さん口を揃えて
「良いところですよ。」
「食べ物もおいしいし人情もあるし。」
「あんな良いところ他にはありません。」
とおっしゃいます。

新潟で私とお付き合いしていただいている方は、比較的有名な会社にお勤めの方が多く、数年間赴任で新潟にやってきて、その間に佐渡へ行ってファンになった方というパターンの皆様がとてもたくさんいらっしゃるのです。

つまり、食わず嫌いのようなもの。

そういう人たちは、東京にいる間は佐渡島などは見向きもしなかったのです。
私と同じように。

つまり、佐渡島そのもののテコ入れをしないと、いくら船を買い替えたところで、だんだん船そのものを小さくしていくしかありませんから。

この点はローカル鉄道も全く同じ。
人口減少と少子高齢化でお客様はどんどん減ってきている。
ジリ貧です。
前職の時には偉い人たちから「乗客を増やす努力をしろ」とよく言われましたが、そういう時に私は「わかりました。では人口を増やしてください。人口を増やすのは鉄道会社の仕事ではありませんから、よろしくお願いします。」と言うことにしてきました。企業努力ではどうにもなりませんからね。

でも、人口を増やせと言ったところで、おぎゃーと生まれた赤ん坊が高校に入るまで15年かかります。定期券を買ってお客様になるまでに15年かかるのですから、そんなことは乗客を増やす方法の一つにはならないのですから、もっと現実的なところで乗客を増やそうと私が長年やってきたのが観光鉄道化です。

観光鉄道というのはわざわざ乗りに来てもらうこと。
箱根登山鉄道や富士急行のようにもともと国際的観光地を走るところは別として、いすみ鉄道をはじめとするほとんどすべてのローカル鉄道沿線は、有名観光地とは程遠いところにあります。だから、黙っていてはお客様は来てくれません。
じゃあどうするかというと、わざわざ来ていただけるような観光のストーリーを作って、観光地に仕上げていくことが必要になります。

その観光地に仕上げていくためには、地域の資源を発掘して、都会の皆さん方が喜ぶようなもの、埋もれているもの、潜在的なものを顕在化していくことが必要になるのですが、では、佐渡島がそういう取り組みをして魅力的な発信をしているかというと、どうもそうじゃないような気がするのです。

もしかして関係者の皆様方が一生懸命努力されていて、情報発信もされているとしたら大変申し訳ないのですが、少なくとも都会の人たちには届いていないと思います。私は観光や経済に関して普通の人よりもアンテナを張っていると思っていますが、その私の耳にも佐渡島の情報はほとんど届いていないのですから、都会の一般の人たちには佐渡という言葉はほとんど話題にもなっていないのではないか。
にもかかわらず地元の人たちが一生懸命PRしたり情報発信しているとしたら、やり方が効果的でないことだけは明らかですから、変えなければならないと思います。
つまり、佐渡汽船の経営危機というのは、佐渡汽船という会社の問題ではなくて、佐渡島そのものが都会から見て観光地として選択肢に入るところまで行っていないということだと私は思うのです。

でも、不思議なことに、都会の皆さんで佐渡へ観光に行かれた方は、皆さん口を揃えて「とても良いところだった。」と言うのです。
コンテンツとしては最高なんでしょうね。
では、そういう人たちが、そんなに良い所だったら何回も行ってますか? 毎年佐渡で休暇を過ごしていますか? というとそうでもない。

ここにもまた解決しなければならない問題がある。

まぁ、新潟県の交通を考えると航空部門が大変貧弱ですから、島を抱えるにあたっては、そういうことも何とかしないといけないことなのではないかと、よそ者としては思うのですが、その話は長くなるのでよしておきましょう。

とにかくトキ鉄としては、沿線に人を呼び込むような、わざわざ行ってみたくなるようなストーリーを一生懸命作っているのでありまして、その一つがこの間から申し上げているD51なのであります。

なぜなら妙高に日本人がスキーに押し寄せていたのはすでに30年も前のこと。
上杉謙信は数百年も前の話ですから、それで来ている人はすでに来ているのですから、そういう顕在顧客だけではなく潜在顧客の掘り起こしも行っていかない限り、沿線地域はじり貧なのでありますから、そこからやらなければならないのであります。


佐渡汽船の高速カーフェリー「あかね」(上越妙高タウン情報)

あかね売却とジェットフォイル入替え 無条件で受入れへ
▲本日の上越妙高タウン情報

近日中に佐渡へ行かなければ。
でも、春以降、佐渡からは「迷惑だから来ないでくれ。」という情報しか出ていないような気がしますので、ちょっと気が引けるのも事実。
これは佐渡だけじゃありませんが、都道府県の偉い人が胸を張って「来ないでください。」とアピールしていたところは、これからどうするのでしょうか。

他人事ながら心配です。

でも、行ってみようかな。

今夜は Go To 佐渡 でございます。