応援したいと思われる会社にならねば。

お盆の輸送で新幹線も飛行機もガラガラ。
春休みもゴールデンウィークもダメだったのに、夏休みもダメ。
こんなことが続いたら鉄道会社も飛行機会社も、みんな経営が成り立たなくなってしまいます。

だから、皆さん、弾丸で、日帰りでもよいから、新幹線に乗って、飛行機に乗って旅に出ましょう。

昨日はそんな提案をしました。

もちろん大変なのは鉄道会社や飛行機会社だけじゃありません。
飲食店も、ホテルや旅館も、百貨店もみんな大変ですから、一概に交通機関だけをクローズアップしているわけではありませんが、ここは鉄道会社の社長のブログですから、まあ、百歩譲ってご容赦いただきたいとお願いいたします。

そこで、皆様方に用もないのに電車や飛行機に乗ってお出かけをしていただかないと、会社の経営が立ちいかなくなることが容易に予想できる会社の当事者として、私たちが考えなければならないのは、「応援したい。」と思っていただける会社にならなければならないということです。

国民の皆様方から、「ぜひ頑張ってください。」「応援してますよ。」と言っていただける会社にならなければ、「お前のところの会社が困ろうが潰れようが、そんなことは関係ない。」と言われてしまうからです。

7月の集中豪雨による水害で大きな被害を受けた熊本県のくま川鉄道さんには、全国からたくさんのご支援が集まっておりまして、私の方で企画させていただきました「復旧祈念切符」は、大変ありがたいことにご賛同をいただきました全国20社の鉄道会社等で取り扱っていただき、すでに1500部が出荷されています。
九州のくま川鉄道という山の中のローカル線が、全国の皆様方からこのようにご支援をいただけるのは、何を隠そう、「応援したい!」と思っていただける会社だからです。

銚子電鉄がなりふり構わぬ捨て身の戦法で「何とかお願いします。」と言って、コロナの期間中でも通販で数千万円の売り上げを上げているのも、全国の皆様方から「頑張ってるねえ。応援してるよ。」と思っていただける会社だからです。

私も、前職時代も今も全く変わらず心掛けているのは、皆様方から「応援したい。」と思っていただけるような会社にならなければということ。そうしなければ経営基盤の弱い吹けば飛ぶようなローカル鉄道は、何かのきっかけですぐに立ちいかなくなってしまうということを、ずっとずっとこの目で見てきているからです。

では、誰に応援していただくかということですが、それはまずは地元の皆様方です。
ローカル鉄道は地域密着型の企業ですから、地元の方々をまずは大切にしなければなりません。
毎日ご利用いただいている通勤通学のお客様はもちろんですが、例えば商店街の商店主の皆様方や、商工会、商工会議所の皆様方など、実際には鉄道を利用しない皆様に対しても、地域の企業として懇親を深め、地域に貢献していくという姿勢を常に見せなければなりません。

ただし、ローカル線が走る地域は、少子化で人口減少が顕著ですから、地域の皆様方の方だけを向いていたのでは経営が成り立ちませんから、地域外の皆様方にいらしていただく必要があります。
できれば人口が多い都会からいらしていただくことで、都会の皆様方に地域にお金を落としていただこう。そうすれば自分の会社の売り上げが上がるのはもちろんですが、地域を代表する企業としての役割も果たすことができる。つまり地域に貢献する企業になることができるわけですが、ではどうやって都会から人に来てもらおうかと考えた場合、そこにはいろいろ戦略が必要になるわけで、具体的には「知ってもらうこと。」「興味を持ってもらうこと。」「行ってみたいと思ってもらえること。」「実際に来ていただくこと。」「来ていただいたお客様にご満足いただくこと。」「そしてリピーターになっていただくこと。」ということを、繰り返し繰り返しやっていかなければなりません。

これは、いわゆる「ファンになっていただく。」ということですから、地域の皆様方とは違ったアプローチが必要になりますし、戦略も必要ではありますが、地域の内外を問わず共通してやらなければいけないことは、「応援したいと思っていただける会社になること。」なのです。

もちろん、ローカル線のような古い鉄道や、田舎の過疎地のような沿線は、いわゆる万人受けするものではありません。
いらしていただく方のターゲットをピンポイントで絞り込んで、その方々に向かって情報を発信し、興味を持っていただいたほんの一握りの皆様にお越しいただくだけで、1~2両の列車はすぐに満員になってしまいますから、両手を広げて「ぜひいらしてください。」という必要もなければ、「お願いしますから来てください。」と卑屈になる必要もありません。

そうやって、ピンポイントでターゲットを見つけ出して、絞り込んで、全国の人口の100人に一人の人が興味を持っていただいて、さらにそのうちの100人に一人の人が実際に訪ねてきてくれたり、あるいは通販でご注文いただいたりするだけである程度の経営が確保できるのがローカル鉄道ですから、私がこうやって毎日せっせとしょうもない文章を書いているのも、「弊社のお客様になっていただける方」、つまり、「この社長面白いな」「ちょっと乗りに行ってみるかな」と思っていただけるお客様を探しているということなのです。

だから、私の文章を読んで「けしからん」と思う人が100人中99人いても、1人の人が「ほう、面白いな。」と思っていただければ目的は達成されるわけで、つまりは99人の人が「けしからん」と言っても、そんなことはどうでもよいことなのであります。

さて、このように、「応援したい。」と思っていただけるような、そういういわゆるファンと呼ばれる味方を増やすことがどんな商売でも大切なことはご理解いただけたと思いますが、田舎のローカル鉄道の場合は100人に一人がファンになっていただければそれだけで経営が成り立つかもしれませんが、JRのような大きな会社が「助けてくれ!」と叫ぶときには、100人に1人どころか、100人のうちの80人や90人が、「頑張ってるんだから応援してあげよう。」という気持ちになっていただかないと、会社の規模が大きい分、効果がありません。

簡単に言えば、1時間に1本、1~2両の列車が走るローカル鉄道と、16両編成の新幹線が1時間に10数本も走るような鉄道とでは、稼がなければならない金額も、支払わなければならない金額も桁が数桁違いますから、それだけ皆様から応援していただかなければならないことも事実でありまして、JRや飛行機会社に求められることは、国民の皆様の大多数の方々に「応援したい。」と思っていただかなければならないということだと私は考えます。

なぜ静岡県はリニア着工に反対するのか? 透けて見えるJR東海への怨念

“新幹線一本足打法” JR東海、収益構造の特殊性

そこで本日配信された2本の記事にご注目していただきたい。

静岡県知事が頑なにリニアのトンネル建設に反対していることは皆様ご存じだと思いますが、知事がこれだけ堂々と反対表明しているということは、当然県議会の意向も同じで、沿線各市長さん方の意向も同じだということです。
私は静岡県には友人がたくさんいまして、商工会議所の重鎮だったり、地元金融機関や地元企業の幹部の方々ばかりですが、皆さん口をそろえて「JR東海はけしからん。」と同じことを言います。

つまり、国鉄分割民営化後、過去30数年の経緯でJR東海という会社は地元の人たちにとっては「応援したいと思う会社ではない。」となっているわけで、JR東海も「別に静岡県に応援してもらわなくても結構です。」という態度の会社だったことがよくわかります。

そのように地元から「応援したくない」「応援する必要はない」と思われている会社が、「困りました。皆さん助けてください。」と言えるかどうかはわかりませんが、この記事の文中に社長さんが述べた言葉として「5~6割需要が回復すれば大丈夫でしょう。」的な発言がありますから、まあ、多分静岡県民に応援などしてもらわなくても結構です的なんでしょう。でも、それは会社のキャッシュフロー的には大丈夫かもしれませんが、鉄道会社として地域密着というポリシーがないというのは、やはり違うと私は考えます。

「お前のところとは会社の大きさが違うだろう。」
と、言われるかもしれませんが、会社の大きさ以前の問題として、お客様や地域にどう接するかということは企業理念として大切なことだと考えますから、今のままではいかないだろうなあと漠然と思うのであります。

では、どうなっていくかというと、これは今後のお楽しみですから、じっくり時間をかけて経過を観察させていただこうと考えておりますが、最終的な落としどころとしては、儲かりすぎている新幹線から上がる利益の一部を四国や北海道に少し分配しろ的な天の声が聞こえる日もそう遠くはないような気がするのです。

だから、JR各社や飛行機会社が大変だから、皆さん弾丸で旅行に行ってくださいという昨日のお話は、皆様方が各自「応援してあげなければ。」と思う会社のことであって、そうじゃない会社とは区別していただいて一向にかまいませんというのが本日の補足でございます。

ただ、わたくしの個人的見解としましては、JR東海という会社は嫌いではありません。
あれだけの技術力と企業努力は尊敬に値すると思っておりますし、もともと新幹線の運転士になりたかった私としては、今でもあこがれの目で見ている会社ですから、職員の皆様方もこのコロナ禍の中、ぜひ頑張っていただきたいと応援させていただいてるのであります。

ということで、皆様、最後になりますが、えちごトキめき鉄道のWeb Shopにも応援をお待ちいたしております。

ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。

くま川鉄道復旧祈念きっぷセット発売のお知らせ