コロナの影響

今住んでいる新潟のお部屋はトキ鉄にお仕事をいただいた去年の9月に急いで借りた部屋のためか、ちょっといろいろあるものですから近々引っ越そうと思っています。

そして、引っ越しに当たって、これまた去年あわてて購入した家具類を買い替えようと考えまして、電気屋さんと家具屋さんに見に行きました。

冷蔵庫と食器棚です。

自炊をするようになってから、冷蔵庫はどうしても小さくて、去年入居する時はいすみの家でそうだったように「どうせ自炊なんかしないだろうから、酒とつまみと氷さえ入ればよい。」と思って小さなのを選んだのですが、なんだかんだで自炊してお弁当まで作るようになると、どうしてももっと大きいのが欲しい。
食器棚はよく寸法を見もしないで買ったのでマンションの部屋の梁(195cm)に当たってどうもしっくりきません。

新しいお部屋にも当然ですが梁があって下見に行って測ったらやっぱり入りそうにありませんので、だったら買い替えるか。古い冷蔵庫と食器棚はリサイクル屋さんに引き取ってもらおう。

そんなことを考えて電気屋さんと家具屋さんに見に行きました。

家電量販店の売り場にずらりと並んだ冷蔵庫。
家具屋さんにたくさん展示された食器棚。

ふつうなら、「ねえ、あなた。これ良いわねえ。」
「そうだな、でも、こっちも良いんじゃないか?」
「そうねえ、どちらにしようかしら。」

まぁ、新居に入る時はたいていラブラブのこんな会話なんでしょうけど、こちらはおじいさんの入口に立った頭が薄くなった小太りおやじの独り者。
そんな会話には御縁はありませんが、でも、まあ、じっくりと見るわけであります。
冷蔵庫も食器棚も、何度も開け閉めしたりして。

すると、電気屋さんも家具屋さんも、館内アナウンス。

「新型コロナウイルスの蔓延防止のため、館内での会話はお控えいただき、お買い物はできるだけ短時間で・・・」

いやいや、そんなこと言ったってスーパーマーケットじゃないんだから無理だよね。
まして、こちらは趣味でウィンドーショッピングをしているわけじゃないから、そんなに何度も買い物に来られる時間もなく、できれば一発で決めたい。

だから、館内のアナウンスにはお構いなく、電気屋で1時間、家具屋で1時間、新しいお部屋へ見学に行って各部屋の寸法を測ってきた図面と首っ引きで、ああでもないこうでもないと一人で売り場をグルグル回って。
だいたい、客なんかいないんですよ。
新型ウイルスの蔓延なんて関係ない。
どちらのお店も広い売り場ががらんとしている。

すると、へんなオヤジが同じところをグルグル回っているのですから、やはり怪しく見えるのでしょう。
コロナを移されたくないからできれば話しかけないでくれオーラを出していた店員の姉さんが、そろそろと近づいてきて、「あの~、何かお探し物でしょうか?」

そりゃ、探してるに決まってるじゃないか。

ふつうならカチンとくるかもしれませんが、だいたい人間というのは爺さんになってくるとすぐに腹が立つという事例を、若いころから銀行、郵便局、空港カウンターなどで大声で怒鳴っている爺さんを何度も見てきて学習していますから、私はいちいちカチンと来たり、嫌味を言ったり、これ見よがしにいやがらせをするようなことはしないのでありまして、素直に、

「この冷蔵庫が欲しいんですけど。」

「この家具が欲しいんですけど。」

とお姉さんに告白したのです。

すると、別々お店で、別々のお姉さんに告白したにもかかわらず、どちらのお姉さんも同じお答え。

「困りましたねえ。」

何が困ったかというと、在庫がないんです。

よく見ると、冷蔵庫にも食器棚にも「お取り寄せになります。」と書かれています。

だいたい私はケチですから、たいていは「現品限り」という札を見つけて、お値段たたいて購入するのが満足な品物の買い方なんですが、それをやって今ある冷蔵庫も食器棚も、ひと言でいえば後悔しているのでありますから、そこは気持ちの余裕というものがあります。

「いいですよ、引っ越しは少し先ですから。」

と申し上げました。

するとお姉さんは、これまた別々のお店にもかかわらず同じことを聞きます。

「お引っ越しはいつでしょうか?」

「7月の4日を予定しているんですが。」

7月4日とはすなわちインデペンデンスデイ!
まだ10日も先だから大丈夫だろう。
そう思いますよね。
だから、私も「どうだ、十分だろう」という雰囲気をかもしながらそう申し上げたのです。

すると、別々のお店の別々のお姉さんなのにもかかわらず、これまた同じことをのたまわれる。

「今、混んでいまして、そのお日にちじゃ難しいですね。」

私は「えっ?」と言いました。

「えっ?」と申し上げたのは最初のお姉さんの時だけで、2人目のお姉さんには、1人目で学習していますから驚くこともなく「そうですか。」と落胆した様子を演技したのですが。

まず、「お取り寄せ」と書いていながらメーカーに在庫がない。
最近の売り場はお姉さんがイヤホンをしながらマイクに向かって倉庫に無線で在庫確認をしてくれます。
でもって、その在庫の有無のお返事がイヤホンを通してお姉さんにしか聞こえませんから、二言三言会話をしているようなんですが詳細はわかりません。
そして、「申し訳ございません。」というお返事。
倉庫にもメーカーにも在庫がなく、いつ入荷するかもわからない。

「じゃあ、しょうがないな。こちらはどうですか?」

さっきから1時間も売り場を見ていますから第2候補もちゃんと選んであって、冷蔵庫も食器棚も今度は「お取り寄せになります。」などと書いていないものを示すと、

今度はお姉さん、「お届け先はどちらになりますでしょうか?」と、実に不思議なことですが、別々のお店の別々のお姉さんにもかかわらず、また同じことを言う。

「本町です。」
そう答えると、またお姉さん無線で何やら確認。
二言三言話した後に、これまた同じように「申し訳ございません。」と同じお返事。

どういうこと?

「今、配送が大変混んでおりまして・・・」
「いつごろになるんですか?」
「最短で7月中旬です。お日にちを指定されますとさらに・・・」

私は最初の電気屋さんでわが耳を疑いました。
まさか。在庫があるのに配達が3週間先?
だったらわざわざ在庫品を買わなくたって、メーカーの製造を待ってられるでしょう。
そして2件目の家具屋さんで事態の深刻さを知りました。
メーカーもいつできるかわからない。
配達もいつできるかわからない。
どちらのお店もガラガラで客なんかいないんですけど。

これ、すなわちコロナの影響なんでしょうね。

製造も物流も一旦停止してしまうと、こういうことになるのでしょう。

冷蔵庫や食器棚の配達でもこういう状況ですから、例えばエアコン工事などはどういうことになっているのでしょうか。
電気屋さんも家具屋さんも、売り上げをあげたくても、これでは無理というものですね。

製造、仕入れ、納品、販売、配送など、モノづくりから物流というのは一貫した流れになっているわけで、私たちは「販売」の部分しか見ることができませんからなかなか理解できないかもしれませんが、要はコロナが明けても動き出していないんです。

これが現実なんです。
だから、お店の売り上げも上がらない。
でも、「コロナが明けましたから」といって政府や自治体の支援が終了してしまったらどうなるのでしょうか?

夏から秋にかけて、体力が無くなって耐えきれなくなって万歳してしまうような会社がたくさん出てくるのではないでしょうか。

そんなことを思い知らされた私の一人ショッピングでした。

で、結局、今の冷蔵庫と食器棚をしばらくの間新居でも使うことになるのであります。


これが欲しかったんですけどね。

困ったなあ。

でも、私の困ったなどはどうでも良い部類で、各種産業に従事されている皆様方、これからがもしかしたら一番きついかもしれませんね。

国や政府の皆様方は、そういうことをきちんと理解して、追加支援をお願いします。
そうしないと本当に途絶えちゃいますよ。

シームレスサービスのどこか一つが止まっても、サービスは途絶えてしまうのですから。

よろしくお頼み申し上げます。