トリアージとは皆様ご存じのように大事故や大規模災害が発生して多数の負傷者が出た場合などの際に、治療の順位を決めるために優先順位をつけて患者を判別することです。
大きく4つの範疇に色分けすることが知られています。
赤:カテゴリー1(最優先治療群)
命に係わる重篤な状態の患者さんで、一刻も早く治療を開始しなければならない負傷者
黄:カテゴリー2(待機的治療群)
赤(カテゴリー1)ほどではないが、早期に処置をすべきもの。基本的にバイタルサインが安定しているもの。一般に、今すぐ生命に関わる重篤な状態ではないが処置が必要であり、場合によって赤に変化する可能性があるもの。
緑:カテゴリー3(保留群)
歩行可能で、今すぐの処置や搬送の必要ないもの。完全に治療が不要なものも含む。
黒:カテゴリー0(無呼吸群)
死亡、または生命徴候がなく、直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能なもの。
トリアージとはこのように負傷者を4つのカテゴリーに分けて、優先順位を付けて治療に当たるという考え方です。
その理由は、大事故や大規模災害が発生した場合は医師や看護師、あるいは病院数やベッド数、または薬品の量などが限られている中で対応することが求められるからで、つまり、医療崩壊を避けて救える命からきちんと救いましょうという考え方であります。
災害現場などでは倒れている人をトリアージ専門の看護師が見て、赤、黄、緑、そして黒の札を立てたりカードを付けていく。実に厳しい判断を求められるシーンです。
今、新型コロナウイルスが急速に蔓延して国家緊急事態宣言が出るとか出ないとか言われています。「ぎりぎりのところで持ちこたえている。」というのは、皆さんが自覚して感染拡大を防がなければならない。それができるかどうかの瀬戸際というのはもちろんですが、医療崩壊が発生するかしないかの瀬戸際という意味もあって、国民が自分たち自身で、とりあえず自分がどのカテゴリーに属するのか判断できる前提であるともいえるのです。
さて、1家庭に2枚のマスクの配布についてですが、このトリアージに当てはめると、カテゴリー3の緑色のグループ(国民のほとんどの人たち)に向けたメッセージです。
マスクの素材は中国からの輸入品だと言われています。だから、1カ月たっても2カ月たってもマスクの生産が追い付かない。トイレットペーパーの場合は流通の問題でしたが、マスクの場合は製造するための材料の問題ですから、とにかく数が足りない。
では、トリアージ的に言うと、まずマスクが必要な赤色のカテゴリーの人たちは誰でしょうか。
これはお解りの通りお医者さんや看護師さんなどの医療関係者の方々でしょう。
まずはそういう人たちに限られた数のマスクを配布することが求められます。
海外ではこれができなかったために医療関係者がバタバタと倒れてたくさんの方がお亡くなりになっています。こうなると悲劇ですね。治療してくれる人がいなくなっちゃうのですから。
ではその次、黄色のカテゴリーの人たちはというと、例えば老人ホームなどの介護施設だったり、小さな子供たちが集まる幼稚園や託児施設だったり。学校も含まれるかもしれません。
そういうところに優先的にマスクを配布する必要がある。
マスクの数が限られているということは事実ですから、今をどうするかということを考えるのが現実的であり、そのためのトリアージをマスクにも適用する必要がある。
総理大臣が「一家に2枚ずつマスクを配布します。」と言ったのはトリアージで言うところの緑色のカテゴリーの人たちに向けたメッセージであって、使い捨てのマスクは本当に必要なところへ配布しなければなりませんから、緊急性のない緑色のカテゴリーの人たちは、とりあえずガーゼマスクで我慢してください。なんなら洗って使ってください。それでもないよりはましでしょうというメッセージだと私は理解しています。
昨日あたりから、また方針が変わって来ています。
「陽性反応が出ても発症していない人、あるいは症状が軽い人は自宅で待機か、政府が借り上げるホテルに入って待機してください。」
という言い方になっています。
今までは陽性反応者は赤色のカテゴリーだと考えられていましたが、いずれ治療は必要になるけれど、直ちに処置する必要はないという黄色のカテゴリーに変わってきたということですね。
感染者数が拡大して病院の数が足りなくなって来て、「陽性反応が出た」イコール「入院」ということができなくなって来ているからでしょう。
つまり、限られたお医者さんや看護師さん、病院数やベッド数を有効に使うためのトリアージの判定基準がさらに厳しくなってきている。
「助けてくれ!」と訴えたら今までは赤い札を付けてもらえていた人が、黄色い札しか付けてもらえなくなって来ている。ということは、やはり状況は進んでいると考えるのが妥当だということになります。
さて、世を揺るがす総理大臣の「マスク2枚発言」。
私は最初からこういうことだろうと思っていましたから、頑張っているお医者さんや看護師さんを応援する必要があるし、体力の弱い老人介護施設や児童福祉施設などへの配給を最優先するために、「自分の飛沫を他人に移さない」という程度しか効果がないガーゼマスクでも、国民にきちんと配布することはそれなりに意義があることだと見ていますが、ネットを見ているといろんな意見があるようですね。
ほとんどが感情論と言いますか、捨てゼリフと言いますか。
安倍のバカヤロー。
辞めちまえ。
から始まって、実にマイナスのオーラが飛び交っています。
悲しいことに不眠不休で頑張っているお医者さんや看護師さんなど医療関係者や医薬品の製造に携わっている方々へのあたたかなメッセージはほとんど見受けられません。
そういうマイナスオーラに満ちたメッセージを発信するほとんどの人は緑色のカテゴリーの人たちで、赤や黄色のカテゴリーの医療関係者や福祉施設などの皆さんからのメッセージはほとんどない。声を張り上げることができる人たちが力任せに大声を出していて、そういう声だけがあたかも国民の意見の主流であるかのように飛び交っているのです。
ガーゼマスクなど効果がないというのであれば、自分がもらったものを欲しいという人にあげればよいだけのことだと思いますし、それが優先順位だと思いますが、そういうネットに飛び交ういろいろな言葉を見ていて気がついたことがあります。
ああ、あの人って、こういう考え方だったんだ。
へえ、実はそういう人だったんだ。
と、有名人から始まって身近な友人たちまで、いろいろな人たちの本心と言いますか、考え方、思考回路、倫理観、宗教観、政治観など、今回の総理大臣の「マスク2枚発言」で実にいろいろなことが見えてきた気がするのです。
みなさんそれぞれ置かれている環境が違いますし、こういう自粛ムードの中で疲労がたまって来ていて、あるいはイライラが募って来ているのは理解できるとして、今まで見えなかったものが見えたということは、私の中でいろいろな人たちが、赤色、黄色、緑色の範疇に分けられたような気がするのです。
つまり、トリアージです。
ああ、あの人の本心はこうだったんだ。
これからちょっとお付き合いの仕方を考えよう。
などなど、総理大臣のマスク2枚発言で人間のトリアージができてしまった。
これが本日のお題の「マスクトリアージ」なのであります。
困ったときはお互いさま。
皆さん、人にやさしい世の中を作って行きましょうよ。
ということで、ゆっくりお休みになって、どうぞよい週末をお過ごしください。
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