観光は産業です。

観光は産業です。
こう言っても、最近ではだいぶ理解してもらえるようになりました。
一昔前では、「観光は女子供の遊びだ。」とでも考えているようなおじさんたちが多くて、行政なんかでも、地域開発としては工業団地を誘致するというようなことには力を入れるけど、観光となると、ピントがぼけているところが多くありました。
観光鉄道として人気が出てきているようなローカル線を、あっさりと廃止してしまうなんてことが平気で行われていたのがこの証拠です。
だから、ローカル線を廃止にするような、そういうピントがぼけたことをやってきたところが発展するわけはないということを歴史が証明してくれています。
さすがに、最近では、工場が海外に逃げて行ってしまって歯止めがきかなくなっていますから、土建屋さんが大規模な造成をして工場や企業を誘致しようという考えは現実的じゃない、ということは誰の目にも明らかになってきましたので、地方がどうやって生きて行こうかと考えた時に、「観光」が注目されるようになってきたわけです。
「観光は産業です。」ということは、遊びじゃなくて仕事ですから、真剣にやらなければならないのはもちろんです。
仕事ですから会社と同じで、社長がいて重役がいて、ビジネスの戦略を立てて行かなければなりません。
まして、これから観光を立ち上げようとしている地域であれば、これから会社を興して1からビジネス展開をしていこうというのと同じ状態ですから、まず必要なのは明確な意思を持ったリーダーということになります。
ところが、「観光で行こう!」ということはわかっていても、例えば観光協会長を地域の重鎮が持ち回りの名誉職で名を連ねているところがあったりするわけで、そういう地域は、会社に例えてみればすぐにわかるように、ビジネス展開がうまくできるはずはありません。
これからビジネスを大きく発展させなければならない会社は、社長が持ち回りで順番に選出されるようでは、じきに立ちいかなくなるのは明らかだからです。
これはやってはいけないことです。
でも、田舎ではいろいろなしがらみがありますから、リーダーを決めるという重要な決断で、やってはいけないことをやるわけです。
先日、いすみ市の大原漁港で行われた港の朝市でリーダーを務めるのは漁港の食堂「いさばや」のご主人の中村まつひろさん。
中村さんは、この朝市の最終目標はここに常設市場を作って、お客様がいつでも新鮮な商品を買えるようにすることであり、地域の商店がここに集まればみんな活性化する、ということ。
中村さんにははっきりとした将来ビジョンがあるわけで、熱意と共にこういうはっきりとした将来像ができていることがリーダーの第一条件です。
ところが、朝市の経験は中村さんにとっても初めてのことで、手探り状態です。
熱意や将来ビジョンがあっても、いきなりそれを実現していくことは難しく、下手をすると手探りの中でいくつか失敗を犯してしまう可能性がある。
そうすると、田舎ですから、新しいことをやろうとする人に対して反感を持つ人たちがいますから、そういうマイナスのオーラを持った人たちが、その失敗を見て、
「そら見ろ、だから俺は反対してるんだ。」
というような人が必ず出てきます。
そういう人は小さな失敗を100倍ぐらいにして言いますから、熱意を持ったリーダーの熱意そのものが消えて行ってしまう危険性があるのです。
そういうことが起きないように必要なのが、プロフェッショナルな人材です。
観光は仕事ですからノウハウがあって、そういうノウハウを知っている人を使って行けば、容易に手探り状態から脱出できるからです。
だから、本当は身内の中に百戦錬磨の観光のプロを擁しておくことが必要で、そうすれば、小さなトラブルにいちいちつまずかなくて済むわけです。
ところが、田舎の人たちは、そういう時にどうするかというと、観光協会など行政がらみのところはたいてい「コンサルを使いましょう。」となります。
そして、どこの地域もコンサルに高いお金を払うのですが、コンサルが言うとおりにやってみても思うような結果が出ないという経験をするわけです。
そして、「コンサルはダメだ。」となります。
でも、それは、コンサルがダメなんじゃなくて、実は自分たちがコンサルを使いこなせないだけなんです。
なぜなら、コンサルはその道のプロですから、そのプロの言うことを理解するためには、こちら側もプロを準備して、コンサルと対等に勝負できる人材を置かなければ、おそらくコンサルが言っていることすら理解できないことになるからです。
いくら熱意があって、思いがある人がリーダーになったとしても、次のステップに進むためには、身内にプロを置かなければならないのです。
私はこの点が一番心配しているところなんです。
ところが、大原漁港の港の朝市を主宰する皆様方はこの点をよくわかっていらして、産業としての観光を成功させるためには、自分たちにはできない部分があるということをまず認めて、そのできない部分を「いすみ鉄道を使おう!」と鉄道を利用することを考えてくれました。
いすみ鉄道が今、観光鉄道として日本全国から注目を浴びていることに着目して、いすみ鉄道の情報発信力を利用しようということです。
それと、いすみ鉄道が観光鉄道として注目を浴びているということは、観光についてのノウハウを持っているということだから、そのノウハウを自分たちでも使うことができたら、観光のプロを手に入れたことと同じだからということで、いすみ鉄道にいろいろ相談してくれています。
私は、いつも、ことあるごとに「いすみ鉄道を利用してください。」と地元のリーダーの人たちに申し上げています。
それは、「目的地に行くために利用する。」ということだけではなくて、「どうしたらいすみ鉄道を自分たちの地域やビジネスに利用できるか。」ということであり、ローカル線が地域のお役にたてる重要なポイントなのです。
ところが、ここに大きな壁がある。
それは、自分たちが蔑んできたローカル線が実は宝であって、とんでもない価値があると気づいたとしても、人間はなかなか素直にそれを認めることができないんですね。
「ローカル線なんかいらない。」
ってさんざん廃止を訴えてきた人たちにとってみたら、形勢逆転してローカル線にお願いしなければならないわけですから、地域の重鎮の立場になれば、そう簡単にローカル線を持ち上げるわけにはいかないわけです。
でも、いすみ市の皆さん方はそれをやって行こうとしているわけで、いすみ市商工会の出口会長さんは、私の前でも堂々と、
「今まで地域のお荷物だったいすみ鉄道が、実は宝だと気づきました。今我々がやることは、このいすみ鉄道を利用して、地域が発展していくことです。」
とはっきりおっしゃいます。
皆さん、すごいでしょう。
日本全国を歩いてみると、意外とくだらない理論をつべこべ言う人が多いし、つまらないところで立ち止まっている地域が多いのに気づきますが、房総の人たちはそのレベルを超えてすでに動き出しているわけです。
私は日本全国のいろいろな地域を見ていますから、いすみ鉄道沿線の皆さんの、「いすみ鉄道を利用しよう。」という前向きで素直な決断に敬服するわけです。
ということで、いすみ鉄道はこの港の朝市の実行委員会に観光のプロである営業企画課長を送り込んでいます。
今年から発足した営業企画課は、会社の利益を最大限にあげるための組織で、営業企画課長はそのリーダーとして、自分の仕事で手いっぱいにもかかわらず、いすみ鉄道の売り上げには一円にもならない朝市の会議に出席させていただいてるのは、いすみ鉄道の存在価値を認めてくれて、いすみ鉄道を利用して地域が良くなっていこうとしている熱い思いを持っているリーダーたちが、その熱い思いを実現できるためにプロとしてのノウハウをご提供し、一緒に寄り添っていくことで、無駄な障害を避けて、一直線に発展していかれるようにするためなんです。
だから、この港の朝市は必ず発展しますし、常設市場になることも夢ではないわけです。
今年発足した営業企画課は、今年はおそらくそれほど良い数字は出ないと思います。
でも、私が営業企画課に求めるのは、1年目からの数字ではなくて、地域に貢献できるプロとして、例えばコンサルのような業務の人に対しても、地域がきっちりと対応できるような、地域のアシストができることなのです。
「何かわからないことがあったら、いすみ鉄道に相談してみよう。」
地域の皆さんがそう考えてくれるようになれば、いすみ鉄道としてはとてもうれしいわけで、地域に利益がいきわたったその後で、いすみ鉄道の数字が伸びるようじゃないと、地域に貢献する企業と口に出して言うことはできないのではないでしょうか。
日本全国のローカル線を抱える地域の皆様方が、ローカル線をどうやって利用するかを考えれば、ローカル線を廃止しようなどという貧しい発想から抜け出すことができると考えていますが、いかがでしょうか。
いすみ鉄道にご相談いただければ、
・温泉を使った町おこしのプロ
・イベントでの町おこしのプロ
・市場の町おこしのプロ
・東南アジアからの観光客を呼んでくるプロ
などなど、私の友人の観光のプロたちをご紹介いたしますよ。
そうすれば、皆様の地域の活性化など、そんなに難しい問題でもないのです。
ただし、人材は限られますから、お早めにお声をおかけください。
早い決断ができるというのも、活性化のリーダーの大きなポイントだということです。