JR北海道の不思議

最近ではインターネットの発達でいろいろな情報が入ってきます。

私にとって特に有益な情報というのは、不特定多数の個人が、どこへ行って何をしているか。そしてその場所にはどうやって出かけたか。その交通手段を選んだ理由は何か。

FACEBOOKでのお友達の皆様が、毎日さまざまな発信をしてくれるビッグデータの中から、「なるほどなあ。」とか、「おや、どうして。」と思うような行動を解説付きで教えてくれていますから実に興味深いのでありますが、特に北海道の皆様方に興味がわくのは、目的地まで4時間とか5時間かかる特急列車に、ほとんど何の疑いも抱かぬそぶりでふつうに乗っていることです。

 

これ、ありえません。私の感覚としては。

東京駅から4時間乗れば新幹線なら広島の手前まで行っちゃいますね。北へ向かえばそれこそ函館に着く時間。

新幹線といえども飛行機と勝敗が分かれると言われる時間距離を、在来線の特急列車で平気で移動されていらっしゃる。

おそらく、北海道以外の地域の皆様方は、全国的に見て、在来線の特急列車に4時間も5時間も乗るなんてことは、まずコモンセンスとして持ち合わせていないでしょう。

もちろん、青春18きっぷを利用するような学生さんや暇な人は良いですが、ビジネスの出張でそれをやっているのだから、たぶん会社としても歯がゆいでしょうねえ。

例えば札幌から釧路への出張。

もちろん日帰り可能ですよ。

朝7時のスーパーおおぞらに乗って11時に釧路について、要件をこなして16時のスーパーおおぞらに乗れば20時半には札幌へ着くのですから。でもたかだか4時間程度の仕事をするのに往復で9時間近くも列車に乗っているなんてことは実に非効率。会社としては歯がゆいでしょうねえ。

私は経営者ですから、そんな部下がいたら「飛行機で行け!」 と言ってしまいそうです。

だって、よほどのマニアでもなければ、早朝から深夜まで特急列車に乗って出張してくれば、翌日は仕事の効率が下がるのは間違いありませんからね。

 

鉄道というのは皆さん特急列車の停車駅の近くに住んでいて、特急列車の停車駅の近くに用事があるわけではありませんから、当然その前後の移動も必要になる。これが前回までお話しさせていただいた「補完」ということでありますが、つまりはネットワーク。

ということは、皆さんなんだかんだで特急列車の乗車時間にプラスして30分とか1時間とか乗ってるわけです。

 

だとすると、4時間の区間であれば4時間半とか5時間が移動時間になる。

そこで問題なのが、人間というのは「腹が減る」ということです。

 

朝7時に朝食を食べてもお昼にはおなかが減ります。お昼ご飯を12時に食べても夕方にはおなかが減ります。

人間というのは4~5時間たてば誰だっておなかが減るのです。

これは人類共通の当り前のことですが、長時間移動する北海道の特急列車の中では飲食物の販売がない。

例えば札幌を乗る直前に食事をしたとしても、釧路へ着くころには腹が減る。

みんながみんな列車に乗る直前にご飯を食べてから乗る人ではないはずですから、3時間以上走る特急列車に乗っている間には必ずおなかが減ってくるはずです。

そういう列車の中で車内販売がないとすればどうするか。

車内販売がないばかりでなく、途中で仕入れることもできない。

だとすると、乗る前に自分で食料を調達しなければなりません。

 

ちょうどお昼時の列車なら良いですよ。

でも、午前9時過ぎの列車ならどうでしょうか。

「さっき朝ごはん食べたし。」

午後3時の列車ならどうでしょうか。

「お昼食べてからまだおなかすいていないし。」

そういう状態の時に、これから始まる4時間の汽車旅に向けて、お客様は食料を自分で調達しなければなりません。

腹が減っていないときに、数時間後に確実にやってくる空腹の準備をしなければならない。

これが北海道の特急列車です。

 

人間というのは、3~4時間経過すれば確実に腹が減る。あるいは何か飲みたくなる。

そういう習性があるのをJR北海道の経営陣は知らないのであろうか?

特急列車の車内販売をやらないということはそういうことなのですが、そこのところが私はとても不思議なのです。

 

これがすなわち本日のタイトルの「JR北海道の不思議」。

 

ご自宅にお客様をお招きしたら、当然そのぐらいのことは考えるでしょう。

自分の家なら当たり前だけど、会社でお客様に接するときは当たり前じゃないって、おかしいですよね。

 

人間というのは、自分の家でやらないようなことは、ふつうは外でもやりません。

自分の家で当たり前のようにやっていることを、外でもできるようにするのがおもてなしでしょう。

英語で、At Home。

まさしくそういうことなのですが、お客様のおもてなしをする気がない。

 

「車内販売は人件費をかけてまでやる必要はありません。大して売れませんから。」

 

これではお客様はどうしたらよいのでしょうか?

 

例えば、釧路から札幌へ走るスーパーおおぞら。

車内販売を行わない列車は、ちょうど真ん中の帯広で5~10分停めたらどうでしょうか。

そうして、ホームで買えるようにしてあげたらどうでしょう。

 

そのぐらいのことを考えるのがふつうの人間だと思いますよ。

その、ふつうの人間が考えることができない、あるいは、やらないというのが経営改革だとすれば、やはりそういう会社は利用者からしてみたら選択肢から外れますから、経営改革とは逆行するんですが、自分の任期の期間中だけ数字を取り繕えばよいというような、実に、なんだか、一部の公務員的仕事のやり方にしか思えないんですが、そういう、お客様に嫌われるようなことを平気でやっている。

「別に、いやなら乗っていただかなくても結構ですよ。」と、お客様に宣言するような経営改革って、私にはまったく理解できませんから、JR北海道って会社は不思議なんです。

 

「この列車は車内販売がありません。」

 

発車の前のホームでそうアナウンスをしているから、告知義務は怠っておりません。

おそらくその程度の認識なんでしょうね。

 

つまり、「ご利用は計画的に」ってお客様に告知している。

 

この会社はいつからサラ金と同じ根性になったのであろうか。

 

だから不思議なんです。

 

実は私、来週、北海道で片道7時間、往復14時間の旅行を計画中ですが、「う~ん、サバイバルゲームだなあ。」と考えています。

 

経営改革というのは、数字を追いかけてはダメなんです。

掛けるところにはコストを掛けて、お客様にご満足いただくところから始まるのですが、どうもそういう感覚というか、人として当たり前のことが理解できない、あるいは理解してるけど言い出せない、実行に移せない、そういう会社なんでしょうね。

 

この際ですから桑園組は全部出向に出して、現場生え抜きの人間を本社に入れて、アルバイトを社員に格上げして、つまり、当たり前のことを当たり前にできる組織にしないとダメなんだろうなあ。

 

それとも、もしかしたら、経営幹部の連中は腹が減らない人間なのかもしれない。

だったら理解できるけどね。

 

ということは、血も涙もない人間ということになっちゃいますね。

 

いずれにしても、お客様にもっとコストを掛けましょう。

グリーン車に乗ったら、お土産ぐらい差し上げましょう。

子供連れのお客様がいらしたら、おもちゃでもあげましょう。

 

だって、飛行機ならやってるんですからね。

 

北海道のお客様は、何の疑いもなく4時間も5時間も特急列車に乗ってくれる実にありがたいお客様なのですから、たっぷりサービスしてあげるぐらいのことを考えるのがふつうの人間のやることだと思います。