本場の食べ物とは。

昨日はいすみ鉄道沿線のうまいものどころをご紹介させていただきました。
私は根が旅行好きですから、いろいろな所へ行って、その土地土地のいろいろなものを食べてみたいという欲求はあります。
日本全国にはいろいろおいしいものがありますし、まだまだ未知のものもあるはずです。
でも、その反面、あまりなじみのない物や、食べたことがない物を食べるのであれば、いつも通りのものを食べようという気持ちも半分ぐらいあります。
つまり、食べ物で冒険したくないわけです。
このさじ加減というか、境目が難しくて、知らない土地で知らないお店に入るのであれば、チェーン店の居酒屋に入ったほうが安心できると思いますし、そういう人間はせっかく札幌へ行ったのに、コンビニのお総菜コーナーに並んだホッケの塩焼きをレンジでチンしてもらってホテルの部屋で食べるなどと言うことを平気でやったりします。(笑)
じゃあ、旅先でどういう食生活を送っているかと言えば、その土地土地で私なりに気に入っている名物料理、つまり今までに食べたことがあるような料理がある地域であれば、そういうお店に入ります。鹿児島へ行けばきびなごやとんこつを食べる店を探しますし、名古屋なら手羽先、福岡なら魚のうまい店などですが、なかなか知らないものを口にする勇気はありませんから、当たり障りのないメニューを注文して旅先の気分を味わうのです。
だから、福岡で居酒屋へ入って「オキュート」とか、熊本で「一文字グルグル」とかメニューにあってもなんだかわからないものは自分からは絶対に食べない。地元の人に連れて行ってもらって、「試してみなよ。ダメだったら俺が食べるから大丈夫だよ。」と言ってもらって、初めて食べてみようかと思うぐらい臆病なのです。(もともとお腹が弱いからね。)
そんな私が最近よく食べるのが讃岐うどん。
最近では、といってもここ10年ぐらいの間に関東に広まったものと言えばやはり讃岐うどんになると思いますが、東京生まれで東京育ちの私が子供のころは、うどんという食べ物は一般的じゃなくて、東京の人は食べるとすれば蕎麦。うどんは、お腹を壊した時や、病気の時に食べさせられるものという印象がありますし、だいいちうどん屋さんというのが近くにありませんでした。たいていは蕎麦屋のメニューの中にうどんがあって、ぶよぶよの麺が真っ黒い汁の中に浮いているのが東京のうどんでしたから、大人になって四国で讃岐うどんを食べた時は、正直、「何てうまいのだろうか。」とその素晴らしさに舌鼓を打ったものでした。
讃岐うどんに詳しい西日本出身の人から見たら、今まで本当にかわいそうな人生を歩んできましたね、ということになるのでしょうが、私が育った地域は、本当にうどんには恵まれていなかったんです。
でも、だからといって、関東地方にはうまいうどんがないのかと言えば、決してそのようなことはなくて、先日も埼玉の飯能市で大変おいしいうどんをごちそうになりましたし、群馬にもうまいうどんがあります。ただ、私は子供のころ、おいしいうどんに恵まれなかったかわいそうな人生を過ごしてきたというだけの話なのです。
そんな私が最近はまっているのが実は丸亀うどんでありまして、かけうどんに鳥天とか、カレーうどんがお気に入りなんです。
でも、讃岐うどん通の西日本出身の人に言わせると、丸亀うどんは本物の讃岐うどんじゃない。というんですね。
確かに本社の所在地は兵庫県で、かなり遅くまで香川県には出店していませんでしたから、讃岐の物じゃないと言われればそうかもしれませんが、じゃあ、本当の讃岐うどんはなんなのでしょうかと言えば、それぞれの製麺所がそれぞれの味を提供しているわけですから、どれが本当かなどと言うことは言えないと思うのです。
そして、一つだけ言えることは、地元の物をそのまま持ってくるというのが本当に正しいのかどうか。私は、どんな商品でも、発祥の地域以外に進出するに当たっては、それなりに外部の人たちに受け入れやすいような形に加工したり変更したりして進出するべきじゃないかと考えているものですから、私のような関東出身でうどんに縁がない食生活をしてきた人間にしてみたら、おそらくある程度全国向けにアレンジされていると思われる丸亀製麺のうどんは本当においしくて、カウンターに並ぶ注文スタイルも楽しいですから、大好きなんです。
でも、それが、本当の讃岐うどんじゃないよと言われてしまうと、本当の讃岐うどんを知らない身としては、「でも、これで十分ですから。」と言うしかないんですね。

▲カレーうどんに温玉から揚げ、いなりに鳥天。ねぎたっぷり。
やはり食いすぎか・・・

▲飯能名物のうどん。これは美味しかった。
これを食べるためだけに飯能へ行く価値ありです。
考えてみればマクドナルドだって、アメリカで食べると味違いますよ。
日本のマクドナルドへやってきたアメリカ人が、「これは本物のマクドナルドじゃない。」と言ったとしたら、皆さんは何て言いますか?
「だからどうした?」でしょう。
月見バーガーだとか、そんなものはアメリカにはありませんからね。
マクドナルドは日本に入って来て、日本人の口に合うようにオリジナルのメニューを作り、テイストもアレンジして、日本人に親しまれてきたわけですが、それをアメリカの本社が、「日本は勝手にいろいろなものを作りすぎる。もっとアメリカのマクドナルドの路線を出そう。」と数年前に言い始めたことから現在の凋落が始まったと私は見ていますが、食べ物は、その土地土地に合わせて、すこしずつ、ほんの少しずつ気付かないうちに味や形を変えていくのが正しいんじゃないかと考えるのであります。
丸亀製麺は四国じゃないかもしれませんが、千葉県内にある回転ずしチェーン店の銚子丸も銚子にはありませんからね。
でも、銚子丸は数ある回転ずしの中では、千葉では一番人気だと思います。
そういうところを考えていくのが商売の面白いところなのではないでしょうか。
このあいだの節分の恵方巻きではありませんが、知らない間に入って来て、その土地に定着している食べ物ってたくさんあると思います。
餃子やラーメンだって戦後ですからね。
第一、餃子やラーメンは本場中国とは似ても似つかないスタイルになっていますが、「こんなのラーメンじゃない!」という中国人はいませんよ。それどころか、中国人は日本へ来てラーメンを食べるのが旅の楽しみになっているのですからね。
発展するか地域だけの物で留まるかどうかの境目は、意外とそういうところにあるのではないでしょうか。
ということで、房総半島の食べ物は美味しいですよ。
「なめろう」は聞いたことないかもしれませんが、鯵や鯖を食べられる方はぜひ試してみてください。
お勧めです。
ああ、そういえばうどんが食べたくなってきた。
本場讃岐までひとっ飛びするか。