いすみ鉄道は、今、菜の花が満開の時期を迎えています。
桜も東京よりは5~7日ぐらい遅い状況ですので、そろそろいい感じになってきています。
ところで、皆さん、今年のいすみ鉄道は、宣伝の仕方が少し違うって感じませんか?
実は、今年は春の菜の花のシーズンの積極的な宣伝というのはほとんどしなかったんです。
今年の春の鉄道の話題と言えば、当然北陸新幹線の開業と、それに伴う寝台列車や特急列車などの廃止が2月ごろから大きな話題となってきていましたが、そういう時に、いすみ鉄道が一生懸命宣伝したとしても効果はたかが知れているというのが第一の理由なんですが、実は、それにもまして大きな理由は、今年は車両のやりくりがきかない状況にあるんです。
まず、当初4年間で5両を導入する予定だった新型車両が、本年度(平成26年度)には補助金の大幅削減により、最後の1両が導入できませんでした。
このため、この春は当初予定していた新型車両5両での運転ができない状況です。
そこへ持ってきて、1月にいすみ200型が1両故障してしまいました。
この修理に何百万もお金がかかるのですが、実はこの故障したいすみ200型は、新型車両が導入されたら置き換えとなり、廃車となる運命の車両ですから、本来ならば今年度末、つまり本日退役する予定で計画していたもので、使ってもあと数か月の命ですから、そういう車両が故障したとしても、その修理に充てる何百万ものお金などないわけです。
もしこの1両が動いていれば、たとえ新型車両の導入が無くても、もう1両最後まで残す予定のいすみ206と2両編成で運用することで、3月の観光シーズンを乗り切ることができたのですが、それが不可能となりましたので、車両運用のやりくりの関係では、日中2列車走っている列車のうち、1本を2両編成、もう1本を1両で走行させることが精一杯の状態なのです。(1日のうち日中2両は順番で給油や整備を行わなければなりませんから、使用できるのは3両だけなんです。)
もちろん、土休日には収容力の多いキハ2両を運用に入れますが、キハは毎日使うことができませんし、キハの運転ができる乗務員は限られますから、平日の日中時間帯には大きな予約や貸切が入っている場合以外ではキハを使用することができません。今、一所懸命訓練列車を走らせて、キハの乗務員を養成しているのですが、訓練列車にお客様を乗せることなどできませんからね。
そして、もう一つ特筆すべき現象として、今年の春は団体のバスツアーがとても多く入っていて、昨年11月ごろから予約が入り始め、「まずいなあ。運びきれなくなるかも。」という危機感が営業にはあったのです。
ちなみに、この3~4月のバスの予約台数は400台以上。
それも菜の花のシーズンに集中しますから、1日7~8台平均で、多い日には15台もの観光バスが団体のお客様を連れてきてくれます。
いすみ鉄道の営業部では、大原-大多喜-上総中野(折り返し)-大多喜-大原という1往復の運用を、大多喜を境に4つに区切って、それぞれの区間に団体のバスの予約を振り分けて、その列車を2両編成にして対処しているのですが、それでも足りない時は、もう1本の1両編成の列車にも、旅行会社に「混み合いますがご了承ください。」と事前通告の上、団体のお客様をご案内している状況で、予約が集中する列車によっては、片道を3区間に分けて、上総中野-大多喜、大多喜-国吉、国吉-大原と、1本の列車を3つの団体さんに交代でご乗車いただいている状況なのです。
ところが、団体客を連れてくる旅行会社にもいろいろあって、大手さんはちゃんとしているのですが、中にはヤクザのような会社もあり、バス1台、40名しか予約枠がないにもかかわらず、実際に到着してみるとバス2台分だったりするわけで、そういうルール違反を平気でやるところもあるんですが、実際にお客様を目の前にすると乗せないわけにはいきませんから、現場はとても混乱するわけです。
こういう現状を考えて、いすみ鉄道としては、春の観光シーズン向けの番組には積極的に宣伝することをせず、せいぜいレストラン・キハの取材を受けていた程度なんですね。
もし、テレビ番組等で宣伝すると、団体のお客様にプラスして、個人のお客様がそれに加わるわけですから、本当に運びきれなくなってしまうからです。
だから、このところ毎年このブログでお知らせしてきていた「いすみ鉄道沿線の菜の花開花情報」も今年はやらなかったわけで、そういうインターネット情報を持っていらっしゃる方というのは基本的には若い方が中心になりますから、ベビーカーが1列車に何台も、という状況になって、さらに混乱に拍車がかかることが予想されるからです。
このような状況が、いすみ鉄道の現状で、輸送力を考えた場合、これ以上お客様にいらしていただいても運びきることが無理なわけで、いすみ鉄道よりも輸送力が大きなお隣の小湊鉄道の列車が20メートル車両で4両で上総中野に来るというのに、いすみ鉄道の列車は18メートル車2両編成というのが現状ですから、いすみ鉄道としては、「どうぞいらしてください。」などということは、特に今年の場合は言わないようにしているわけなのです。
とは言え、いすみ鉄道は千葉県の房総半島では立派な一つの観光資源であり、何もお客様を目的地まで運ぶことだけがいすみ鉄道の役割ではありませんから、いすみ鉄道の営業部としては、バス旅行の団体さんがまとめてお食事ができるような施設をどんどん紹介してあげることで、できるだけこの地域にお金が落ちるようなシステムを考えて行こうと思っています。
いすみ市、勝浦市、御宿町の旅館やホテル、食堂など、この春は、所によってはすごいことになっているわけで、しっかりいすみ鉄道の恩恵にあずかって、利益を上げているところも多いことと思います。
そういう意味では、いすみ鉄道に足を向けて寝られないような事業者さんが沿線地域にはたくさんいると私は思っていますが、儲かっている人というのは、静かに黙っているというのが世の常でありますから、いすみ鉄道が地域に貢献している度合いというものが、なかなか評価されないということなのであります。
私としては「得意淡然 失意泰然」がポリシーですから、まあ、別に良いんですけどね。
とにかく今度の土日を乗り切れば、今年の春のピークは何とかなりそうな状況です。
それが過ぎれば、私たちにものんびりとした春がやってくるのであります。
1両と2両の列車がすれ違う大多喜駅。
この時期の列車はとにかく混雑しますので、観光にいらっしゃる皆様方はご理解くださいますようお願い申し上げます。
線路内立ち入りや線路横断なども多数みられますので、いすみ鉄道の職員ばかりでなく、地元の人たちも見回りを行っています。
皆さんどうぞ注意してください。
そして、乗って、見て、撮って楽しいいすみ鉄道になるように、ご協力をお願いいたします。
[:up:] 春の夕暮れどき。こういう長閑な風景も、ローカル線の良さなのであります。
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