みんなでがんばるいすみ鉄道

いよいよ今度の日曜日、4月27日に、国吉駅近くの苅谷商店街で今年第3回目となる「みんなでしあわせになるまつり in 夷隅」が開催されます。
このお祭りは、おととし第1回目がいすみ鉄道応援団の主催で開催されました。
その時は、ゴールデンウィークに他のお祭りを市内でやっていることから、「そんなお祭りやってどうするんだ。」と、地域の人たちから全く理解されませんでした。
田舎というのは困ったもので、自分たちが理解できないだけならまだしも、自分たちが理解できないことを邪魔する人たちも出てくる有様ですから、第1回のお祭りのときは、応援団の有志が実行委員会のメンバーになって、それこそ悔し涙を流しながら、歯を食いしばって頑張って2日間で15000人が来るほど大盛況で、お祭りとしては初めてながら、大成功を収めたのです。
ところが、その反省会で、実は実行委員会が約50万円の赤字を出していたことがわかりました。
この赤字は、実は安全対策のためにガードマンを余計に雇った部分と、いすみ鉄道が運びきれない分をバスで補うための金額だったのですが、この赤字を出したことが地域の人たちの格好の話題となって、「そら見たことか。そういう余計なことをやるから結果としてこうなるんだ。」とか、「この赤字を地域に負担させることは許さないからな。」と応援団をバッシングしたんです。
私はその場にいましたが、それはそれは見るに堪えない地域の商店主数名によるバッシングでした。
よく考えたら、地域が最初からお手伝いをしてくれていたら、ガードマンを余計に雇うことなどなかったので、赤字にならなかったかもしれないのに、準備のためには寝ないで頑張って、歯を食いしばってこのお祭りを大成功させた応援団のメンバーに対して、あまりにも心無い仕打ちに私は開いた口がふさがりませんでした。
私はその場で、「赤字はお前たちがかぶれ。地域に1円たりとも借りを作るな。」と発言し、赤字問題はこれ以上大きな話になりませんでしたが、廃れてしまった商店街を何とか盛り上げようと頑張っている人たちに向かって、その商店街を廃れさせてしまった商店主たちがバッシングする光景を見て、申し訳ないけど、いすみ鉄道としてはこの人たちと付き合っている時間はないと判断しました。
ところが、世の中捨てたもんではなくて、その話を聞いた商工会長さんが、「応援団はここまで頑張ってこのお祭りを大成功させたんだから、次回のお祭りは商工会が支援して、引き続きできるようにしよう。」とおっしゃってくださったんです。
いすみ市の観光資源というのは、昭和の時代からずっと海水浴場です。
ところが、今の時代、海水浴客なんてほとんど来ないんです。
そりょあそうでしょう。
美白の時代ですから。
ある年のひと夏の大原海水浴場の観光客は5000人を切る始末で、観光協会が一生懸命パンフレットを作って、市を上げて宣伝しても5000人来ないんです。
そんな時、応援団が主催して、市や観光協会は一切バックアップなしで、インターネットと口コミだけで2日間で15000人もの人が、観光地でもなんでもないところにやってくるようなイベントをやったのですから、世の中の流れをよく見ている商工会長さんとしては、「これだ!」と思ったんでしょうね。
ビジネスチャンスをつかむというのはこういうことなんですね。
そして、去年第2回目を商工会のバックアップで開催しました。
やはり、2日間のお祭りで、15000人、いやそれ以上の人たちがいらっしゃいました。
去年はノウハウが商工会にはありませんから、一応応援団が指揮をとってお祭りの実行委員会を進めましたが、前年のわだかまりがまだ地域の人たちに残っていたようで、「俺たちは応援団にこき使われた。」という人もいたようですが、結果として大成功しましたので、応援団としても、「こうやって地域に根付いていくことができれば、これがこの地域の起爆剤になるだろう。そのためにはいつまでも応援団が主導していたのではだめだ。」と考えるようになりました。
そして、去年の反省会で、来年は、いすみ市といすみ市商工会が主催したお祭りにしようということになって、今年の第3回目があるのです。
外からこの経緯を見ている人に言わせると、あれだけ応援団をバッシングしておきながら、良い結果が出たんで、その結果だけ自分たちが横取りしていると見えるかもしれませんが、実はそうではないんです。
お祭りだけでなく、物事というのは生み出すときの苦しみというものが最初にあります。
うまく生み出すことができたら、今度はそれを育てていかなければなりません。
その時点になると、生み出す時とは違った育てるためのノウハウが必要になります。
そして、大きく育ち始めて独り歩きができるようになると、それをサポートするための別なノウハウが必要になります。
「みんあでしあわせになるまつり」は、応援団が苦労して生み出したかもしれませんが、いつまでも応援団のものではなくて、もうすでに地域がこれを育てていく段階に来ているということです。
おかげさまで順調に準備が進み、出展者や車の出品希望者なども多く集まってきているようですから、あとはお天気が良くなってくれるのを祈るばかりです。
ちなみに、この「みんなでしあわせになるまつり in 夷隅」というのは、もともとは宮城県栗駒市のお祭りです。栗駒市にはかつて「くりはら田園鉄道」というローカル線が走っていましたが、残念ながら廃止されてしまいました。ところが、夷隅地域はいすみ鉄道を廃止にしないで存続させてくれたので、栗原市の皆さんが、自分たちのお祭りをぜひいすみ鉄道沿線でやってほしいという願いで、OKしてくれたんですね。
だから、「 in 夷隅」はいすみ市だけではなくて、いすみ鉄道沿線の大多喜町や支援してくれている勝浦市、御宿町を含めた旧夷隅郡の市や町という意味で「夷隅」なんです。
これはいすみ鉄道のキハの急行列車の名前が「夷隅」と漢字を使っているのと全く同じコンセプトなんですね。
地域の中でみんな仲良くしましょう。それがしあわせということです。
さあ、いすみ鉄道の国吉駅下車0分の「みんなでしあわせになるまつり in 夷隅」。
皆様のお越しをお待ちいたしております。



国吉駅で昔懐かしい駅弁の立ち売りを始めた掛須団長と高師さん。
正直言って、こんなことをしても利益なんか出ないと思いますが、彼らを動かしているのはお金ではなくて、「いすみ鉄道で楽しい思い出を作ってもらいたとい。」という情熱なんですね。
数十年後、いすみ鉄道を体験した子供たちが大人になった時に「いすみ鉄道に乗って駅弁食べたね。」という思い出を持った人たちを日本にたくさん増やすんです。
そうすれば、ローカル線や田舎を、自分の故郷のように思ってくれる人たちがいっぱいになって、日本の良さ、ローカル線の良さを後世に伝えることができる。
そういう思いで、みんな頑張っているんですね。
※ 国吉駅でのお弁当販売はお祭りのため26日、27日はお休みします。
27日はお祭り会場にてお弁当の販売を行います。
会場の地図はいすみ鉄道の急行列車車内と国吉駅にて配布いたします。