ローカル線の守り方

昨日は新潟県魚沼市にお邪魔させていただきました。
魚沼市というのは上越線でいうと小出で、小出といえば、皆様すぐにピンとくるのがJR只見線の始発駅。
そう、日本全国のローカル線の中で横綱中の横綱、ローカル線の王者であります。
その只見線が、実は2011年夏の水害で被害を受けて、現在、只見―会津川口間で線路が寸断され、バスによる代行運転を行っているのです。
地元の人たちは、このままでは不通区間が復旧するどころか、線路が繋がっていなければ観光客や鉄道ファンも乗りに来ませんから、全線で廃止されてしまうのではないか、という危機感がものすごくあって、同じように廃線の危機があったものの、何とか廃線になるのを免れたいすみ鉄道の経験をお話ししてほしいということで、魚沼にお邪魔した次第でございます。

さて、「只見線はローカル線の横綱である。」というのは、実は2012年12月に会津川口(福島県金山町)に呼ばれて、同じようにお話をさせていただいたのですが、その時に地元の皆様に申し上げた言葉です。
その時のいすみ鉄道は、ムーミン列車とキハ52でなんとか盛り上がってきていまして、お相撲さんで言ったら小結か関脇の下ぐらいでしたが、あれから皆様方のおかげでどんどん精進することができ、昨日は、予想を上回るお客様においでいただいて、急きょ座席を何十席か追加した魚沼の皆様方の前で、「いすみ鉄道はローカル線の大関です。」と、大見栄を切らさせていただきました。
でも、いすみ鉄道は、だからといって、横綱の座を狙っているわけではありませんので、只見線沿線の皆様、どうぞご安心ください。(w)
さて、只見線といえば、福島県という印象がありますが、昨日お邪魔した魚沼は新潟県側。ローカル線というのは、だいたいどこも沿線自治体による温度差があって、片方は熱心だけど、もう片方はあまり熱心でないというのが通例ですが、只見線沿線は福島県だけでなく、新潟県側も熱心で、私を呼んで話を聞きたいという程熱が入っているのですが、「どうしてだろう?」と思ってお話を聞いたところ、「実は、魚沼地域は以前は会津藩だったんです。だから、新潟県と福島県とに分かれていますが、この地域は昔から交流が深いんです。」ということ。
地域ってとっても奥が深くて、単に行政が仕切った境界線を地図で見ているだけではわからない面白さというか、繋がりというものがあって、そういうことって、中央で考えているだけではわからないんだなあと実感しました。
とは言っても、いすみ鉄道は第3セクターであり、只見線はJRです。
私は経営側の人間であって、地域の皆様は住民代表であります。
だから、かんたんに言えば私から只見線沿線の住民の皆様方に、ああしなさい、こうしなさいと言ったとしても、それはどちらかとしたら経営側の意見になってしまいますが、せっかく呼んでいただいて、会場いっぱいの皆様方が雪の中いらしていただいたのですから、「聞いてよかったなあ。」と思っていただけるお話をしなければなりません。
そこで私は、まず1つ目は「陳情はやめなさい。」とお話をし、2つめは「義務感での乗車運動ではなく、外から見て楽しそうだなあと思える活動をしましょう。」とお話をさせていただきました。
「陳情をやめなさい。」というのは、田舎の人は、何かあると中央へ陳情をする癖がついています。でも、陳情される側から見ると、毎日毎日いろいろなところが陳情に来るわけで、そうたくさん陳情に来られても、誰が誰だかわからなくなるし、1つの陳情を聞いてしまうと、残りの陳情も断りきれなくなりますから、だから陳情は聞いてあげたくても聞けないからなんです。
「楽しそうだなあと思える活動をしましょう。」というのは、ニュースや旅番組、雑誌などでも、番組や誌面を作る人たちは、楽しい話題を探しています。そして、読者も、ローカル線のイメージとして、「行ってみたい。」「乗ってみたい。」というところを求めています。そういう時に、悲壮感を漂わせて「地元の大切な足を守ろう!」とスローガンを掲げたとしても、周囲の理解はなかなか得られません。それよりも、大切なのは「ローカル線だけじゃなくて、地域も頑張ってるんだ。」「田舎って人情があって良いなあ。」と思ってもらえるような活動をすることで、そうすれば、良いオーラが生まれて、そこに人々が集まってくるようになるものです。
そして、そういう良い場ができれば、「廃止にしよう。」というマイナスのオーラを打ち消すことができるようになるし、そうすれば、陳情なんかしなくたって、絶対に廃止になんかなりません。
昨日、魚沼でお話ししたことと同じことを、実は2012年12月に福島県の金山町でさせていただきました。
それまでの彼らは、他の地域と同じような感情的な活動をしていたのですが、私の話を聞いた彼らは、きっと、「そうだ、楽しくやろう。」と思ってくれたのでしょう。
実は、今、柳津町の奥会津温泉郷の皆さんが中心になって、只見線の車中で、宴会をやっているのです。
会津といえば酒どころ。皆さんどうせお酒を飲むのであれば、汽車の中で飲みましょう。そうすれば同じお酒やお弁当もおいしいんです。ということで、毎月1度のペースで、只見線の中で地元の人たちが宴会をやっている。
都市部でやったら「他のお客様のご迷惑になります。」と言われてしまいますが、2両編成の只見線の列車も、会津坂下を過ぎればほとんどお客さんはいませんから、迷惑なんかならないのは地元の皆さんが一番よく知っています。
どうせ、用もないのに汽車に乗るんですから、楽しくやろう。
雪深い夜の只見線の中で、実はこんな利用の仕方もあるんだってことを地元の皆さん方が気づいて、実践しているんです。



[:up:] 雪深い只見線(福島県側)で昨夜も行われた車内宴会とその後の2次会の様子。皆さん楽しそうで、参加してみたくなります。夜の列車には乗ってたとしてもお客さんはどうせ1人か2人しか乗ってないわけで、その乗ってる人も顔見知りですから、「他のお客さんの迷惑になりますから。」とは鉄道会社も言えませんね。
でも、彼らは、この雪の中、除雪など、大変な費用をかけて列車を走らせてくれているJRに感謝しているんです。だから黙ってみてるだけじゃなくて、自分たちができることをやろうと頑張ってるんですね。(奥会津温泉郷の塩田さんのFACEBOOKページから。)
どうです、皆さん。
楽しそうなことやってるでしょう。
ローカル線ていうのは、都会人にとっては憧れなんです。
だから、乗ってみたいなあ、行ってみたいなあ、と思えるようなローカル線にしていただけたら、絶対に観光資源になるんです。
JRだって、只見線だけでは儲からないのは重々承知です。
でも、やっぱりそこまで行くのにも新幹線や特急を利用するし、ローカル線のイメージキャンペーンには只見線は外せないし、青春18切符などで乗れる路線を用意して将来に向けての鉄道利用啓蒙運動もしなければならないなど、トータルで考えるしかないんです。
来年、新幹線が金沢まで開業すれば、越後湯沢乗り換えがなくなりますから、上越新幹線はガラガラになるでしょう。
そうすれば、何とか新幹線に乗ってもらう企画をしなければなりません。
だから只見線はチャンスなんです。
私は只見線の未来は明るいと思います。
地域の皆様方の活動を楽しみにしております。
以前に只見線にお邪魔した時のブログはこちらです。
2012年12月2日のブログ
2012年12月17日
2013年2月3日(奥会津から雪を運んでもらいました。)
2013年3月17日(雪のお礼に大原から新鮮な魚を届けました。)
2013年3月18日