タラコの真相

いすみ鉄道は観光鉄道ということで、2つの観光列車をご用意いたしております。
1つはムーミン列車で、もう1つは昭和の観光急行列車です。
これは私が企画した観光列車2本立て構想で、商品を2つ用意することで、女性や男性を含めて、あらゆるお客様の層にご購入いただける体制を取っているものです。
また、ムーミン列車は、いすみ鉄道でふつうに走っている列車ですから、どなたでもお楽しみいただけますので、他の観光列車のように、その列車を指定してご乗車いただくようなこともありませんから、お気軽にお乗りいただけます。
これに対し、昭和の観光急行列車については、土休日に運転することで、経営資源を効率的に投下でき、観光需要の核になっているものです。
さて、この昭和の観光急行列車は今から3年前の2011年4月に運転を開始し、丸3年になりますが、当初キハ52形1両でスタートしたものの、輸送需要が旺盛で、1両ではピーク時に対応できなくなるようになってきたため、昨年3月からキハ28形を追加導入し、2両編成で運転することで、早速訪れた昨年の菜の花シーズン、そしてゴールデンウィークなどの多客期に、何とか積み残しなどを発生させることなく対応できましたが、これは、観光シーズンの輸送が、このところの知名度アップなどで、たくさんのお客様がいらしていただくようになったことから、再生決定当初に計画していた5両態勢では間に合わなくなってきていることを示していて、キハの2両編成が、観光列車とはいえ、立派に輸送事業を担っているということを意味しています。
しかしながら、観光需要というものは、月曜から金曜までの平日にはほとんどなくて、土休日に集中するという需要特性がありますから、そういう、「たまにしか使わない車両」には、新車を導入するのではなく、キハのような初期投資が安価で済む車両で対応するのが正しい選択であるということは、国鉄時代の「サロンエクスプレス東京」から始まった今までのJR各線の観光列車の取り組みが、ほとんどの列車が旧型車両を使用していることを見ても明らかなのです。
そういう基本的な考え方で昭和の観光列車を2両編成化し、何とかピーク時の旅客輸送に対応したのが昨年ですが、観光ですから、ピークが過ぎたらお客様がいなくなります。そうすると、キハも2両編成で走らせる必要がなくなって、もともとのキハ52が1両あれば十分な状況になるのですが、せっかく2両あるのですから、その閑散期対策として新商品を開発しようと始めたのが、「イタリアンランチクルーズ」であり、「伊勢海老特急」といった食堂車です。
昨年後半からの下半期に試験的に数回実施してみた所、新聞やテレビで何回も放送され、毎回予約が取れないという状況が発生し、その反響の多さに驚いたのですが、そこに需要があるということがはっきりしましたので、これを足掛かりとして食堂車を定期的に毎週行えるように現在リニューアルを行っているところです。
「食堂車」は、この春の菜の花のシーズンが終わり、輸送のピークが過ぎましたら新商品として発売開始いたしますので、皆様どうぞご期待ください。
さてさて、このキハ52とキハ28の昭和の観光急行列車は4年目に入るわけですが、商品ですからそろそろテコ入れが必要になってきているのが事実です。観光のような商品は、定番の物が必要なのですが、定番の物だけではじり貧になりますから、少しずつリテコ入れを行っていかなければ拡大需要につながりません。
そこで、ちょうど塗装が痛んで来ていたことから、キハ52の方を国鉄首都圏色、通称タラコ色と呼ばれるカラーに変更することにして3月1日から新しいカラーリングで登場させたところです。
観光列車の中でもいすみ鉄道のキハのような列車は、ある特定のピンポイント需要に的を絞った商品ですから、お客様に来ていただくためには、特別のマーケティング手法が必要です。
いすみ鉄道は1月から2月にかけて、お客様がほとんど来ない閑散期を迎えますが、昨年暮れに「あけぼの」の廃止が発表されて、私たちがピンポイントにターゲットにしている市場は皆さん「あけぼの」狙いであることがはっきりしていますから、ダイヤ改正前の1月2月は、あけぼのフィーバーで、なおさらお客様が来ないことが予想されていました。
そこでいすみ鉄道が考えたのが、首都圏色への塗装変更で、「今までの一般色はもうじき見られなくなりますよ。」と宣伝したところ、年明けから最終運転の2月中旬まで連日大賑わいで、大雪が何回も降ったにもかかわらず、いすみ鉄道の乗車率は上がり、売店売り上げは対前年比を上回る数字が出ましたし、用意した記念乗車券600枚はほぼ即日完売だし、色を塗り替えるだけでこの人気が出るいすみ鉄道の手法が注目を集め、何度も新聞に取り上げていただくなど、第3セクター鉄道としては異例のお取り扱いをいただいたのも記憶に新しいところです。
そして迎えた3月1日の運転初日。ピカピカの塗装で走り始めたキハの列車にカメラを向ける人の姿はいつもより少なめ。
そうです。皆さん、ラストランを迎えた「あけぼの」に行かれてしまって、これからいつでも見られるキハ52の首都圏色は、「まあ、いいか。」という状況なんです。
でも、私としてはこれも計算のうちで、3月から4月にかけてはピークシーズンですから、一般のお客様の輸送で手一杯で、この時期には鉄道ファン向けのイベントなどができない状態になりますから、キハ52の塗色変更を記念した記念乗車券やイベントなどは、運転開始3周年となるゴールデンウィークに行う計画でいて、今年の並びの悪いゴールデンウィークのカレンダーから予測される需要の低さを補おうと考えているのです。
このような需要を発掘する営業プランは、私と共に営業企画課が大奮闘して行っていて、例えばイタリアンランチクルーズや伊勢海老特急などは、お客様の単価は高いけれど、いすみ鉄道としてはほとんど利益が出なくて、地域にお金が落ちる仕組みの内容なんですが、営業企画課としては、自分の会社だけが儲かれば良いということではなくて、地域に人が来る仕組みそのものから作っていますので、営業数字はなかなか出ないのですが、たいへん大きな仕事をしてくれているのです。
今回の首都圏色へのキハ52の変更についても、営業企画課長が事前に鉄道博物館と打ち合わせをして、国鉄時代の資料に基づいて塗料の調合から行いましたので、いすみ鉄道の首都圏色が本当の首都圏色なんですが、今のJRの首都圏色と比較して「色が違う」とか、末期の退色した首都圏色(焼きタラコ)しか知らない人たちが、「あんなにきれいな色はおかしい。」と言っているようですが、我々としてはそういう人たちを「かわいそうだなあ。」と思うわけで、本物であり正統派であるいすみ鉄道の首都圏色が、登場時から、今後徐々に退色していく姿を記録することこそが、首都圏色で走り始めたキハ52の正しい楽しみ方ですから、皆さん、どうぞいすみ鉄道のタラコ色を自分の目で確かめにいらしてください。


[:up:] これが正しい首都圏色です。ただし、これから退色が始まりますので、ピカピカなのは今だけです。
あくまでも現時点での計画ですが、来年に予定されているキハ52の全般検査は通すかどうかまだ決定しておりませんので、最悪の場合、1年限りのタラコ色のキハ52となるかもしれませんが、その時はその時で、もう1両別のタラコが来てるかもしれませんし、「あとは野となれ山となれ」ということでよろしいのではないでしょうか。
とりあえず春休み期間中は平日にキハ52単行の急行列車を走らせようと思っていますが、いつ走らせるかは近日発表させいただきますので、どうぞ皆様、お楽しみに。