ありがとうのおつきあい。


先日、千葉県主催の景観フォーラムで小湊鉄道の石川社長さんが沿線の応援団の方々に対して、
「いろいろお手伝いをしていただいて、本当にありがたいと思います。」
とおっしゃいました。
すると応援団の代表の松本さんが、
「小湊鉄道にはみんな感謝しているんです。私たちの世代は、小湊鉄道が無かったら学校にも通えなかった。だから、今、恩返しのつもりで、自分たちにできることをやっているんです。」
とおっしゃるのです。
鉄道会社も、沿線住民も、お互いがお互いに対して「ありがとう」と言っているんですね。
こういう関係は、なかなかないんじゃないでしょうか。
「もっと列車を増やしてくれ、特急を停めてくれ。」と住民が言うと、
「どうせあなたたちは乗らないじゃないですか。だから運転本数を減らします。」と鉄道会社が言う。
だいたいどこもこんな感じじゃないでしょうか。
でも、小湊鉄道沿線は違うんです。
鉄道会社が住民にありがとうと言って、住民が鉄道会社にありがとうって言う関係です。
小湊鉄道の応援団の松本さんは、自分が子供の頃は、自動車が普及する前だったから、小湊鉄道が走っていることがとても大切なことで、もし、小湊鉄道が無かったら学校へ行くこともできなかったし、地域の生活も成り立たなかった。
だから、小湊鉄道には本当に感謝しているんだ。
こういうお考えです。
そして、今、自分が何ができるかを考えて、「勝手にやっている。」のだそうです。
でも、ふつうだったら鉄道会社は「ああだ、こうだ」とうるさいことを言うのだろうけど、小湊鉄道はそういううるさいことは何も言わず、自分たちに好き勝手に活動させてくれる。
そうおっしゃると、小湊鉄道の社長さんは、
「勝手にやるということであれば、小湊鉄道だって勝手に列車を走らせている。利用者が少なくて儲からないからやめろ、という考えもあるかもしれないけれど、うちはそんなことは関係なく、勝手に走らせてるんだ。」とおっしゃるわけです。
とても面白かった。
「あなたたち、地元の人が乗らないから、廃止にします。」という話はよく聞くけれど、勝手に走らせる鉄道会社と、勝手に駅を掃除したり草刈りをしたりする地元の人たちがいて、勝手に世界一大きなトイレを作って、勝手に駅構内で喫茶店をやって、観光バスの人たちに「せめて1駅でも2駅でもいいから乗ってくれ。」と頼まれもしないのに営業してるんだそうです。
お互いにお互いを思いやっている。
そんな鉄道会社と地域とのつながりがあるんだなあ、と思いました。
いすみ鉄道沿線でも、もちろん、カケス団長率いる応援団があったり、いすみ市の人も大多喜町の人も、いすみ鉄道が大好きで、「走ってくれているだけでありがたい。」と思ってくれているし、地域の宝、地域の財産だと思ってくれているので、いつも頼もしく思うんですが、小湊鉄道は素晴らしいなあ、と認識を新たにしました。
小湊鉄道の皆さん、いろいろ勉強させてくださいね。
これからもよろしくお願いいたします。

(やないさん、写真借りたよ。)
ちなみに、いすみ鉄道と小湊鉄道は実はとても仲が良くて、いつもいろいろ協力し合っているんです。
だから、上総中野で線路をつなげて直通運転をすることだって可能なんです。
ただ、問題は先立つもの。
1億円とか2億円をかけて線路をつなげて、信号設備も作って、それで1日2~3往復の直通をやったところで、投資した金額をどうやって回収するのか、この目処が立たないからやらないだけです。
1億円というのは1万円のお客様1万人分ですから。
1000円のお客様ならば10万人分です。
山の中の終着駅にそれだけの設備投資をしたら、たぶん資金がショートして会社が立ちいかなくなります。
鉄道事業者としては、まず最初にそういうところをきちんと考えなければならないわけです。