ボランティアの心構え

いすみ鉄道はこのお正月の期間中もたくさんのお客様にお越しいただき、たいへんな賑わいでした。
1月2日には甘酒の振る舞いが、3日には餅つき大会がいすみ鉄道応援団主催で行われました。
この応援団という組織は私が就任してすぐの2009年8月に、国吉駅の近くの皆さんが率先して立ち上げてくれたもので、民意といいましょうか、行政の手を借りないでここまでやってきた組織ですので、私は素晴らしいことだと思います。
応援団だけでなく、いすみ鉄道沿線の皆さんは、国鉄が廃止にすると言った鉄道路線を「じゃあ、自分たちでやっていこう。」と引き受けた地域の人たちですから、私は、沿線の人たちに接していていつも思うのは、「自分たちのことは、まず自分たちで何とかしよう。」という気概に満ちているということです。
誰に助けを求めるわけでもなく、不平不満を言うわけでもなく、黙々と行動を始める地域です。
私が就任した時には応援団という組織はありませんでしたが、地域の皆様方はすでに駅の草むしりや花植え、トイレの掃除や沿線の草刈り、菜の花の種まきなど、自主的に行動されていて、私がご挨拶に伺うと、「私たちのいすみ鉄道にようこそ。」という雰囲気で、すぐに仲間に入れてもらえました。
私は、本当は地域の人たちから「社長、俺たちの鉄道を社長の力で何とかしてくれ!」と頼まれるのだとばかり思っていたのですが、みんなニコニコして、「仲間になってくれてありがとう。」と言われたことを思い出します。
例えば、この1月2日の甘酒も、3日の餅つき大会も費用がかかっているわけです。でも、「このイベントにいすみ鉄道はいくら出してくれる?」何てことは一言も言わないというか、話にも出ない。
団長たちが一生懸命ポップコーンを売って原資を作り出し、農家の人たちがもち米を持ち寄ったりして、協力してやってくれるわけです。
甘酒は大原の木戸泉さんの酒粕です。
そうやって皆さん手作りでイベントをやってくれる。
損得勘定なしで、自分たちの鉄道に乗って、自分たちの駅に降り立ってくれる人たちを大切におもてなしする気持ちがあるんです。
東京生まれで東京育ちの私にしてみたら、そういう地域の人たちの気持ちに触れるだけで、「良いところだなあ。」と感動してしまうわけで、それを都会からくる皆様方に味わっていただきたいなと思うのです。
応援団の皆さん、いつもありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

お母さん方、いつもありがとうございます。

「社長もやれ!」 と餅つきに参加。整体師の先生がスタンバイしているとは、なんてやさしい皆さんだろうか????

キハ52に向かって応援団も観光客もみんなで手を振ってお見送りです。
さて、ここからはまじめな話。
観光ですから観光客の皆様方に対してやってはいけないことがいくつかあります。
応援団の皆様方はふだんから気を付けていらっしゃると思いますが、地域全体として忘れてはいけないことでもありますので、本日あえて申し上げます。
1:自分たちでたむろしないこと。
仲間内で楽しんでいることは、他所から来た人たちには入りずらい印象を持たれます。顔見知りだけでたむろしないようにお願いします。
観光ズレすることの無いように。
お客様に楽しんでいただくことを自分たちの楽しみにしましょう。
2:ボランティアとしての心構えを忘れないこと。
自分が掃除した駅、自分がふるまっている食べ物ではありますが、お客様にはそんなことは関係ないことです。「お前にはやらない。」とか「お前は来るな。」何てことはくれぐれも言わないように。日本のボランティアは海外と違い宗教的なバックグラウンドがありませんから「おれはやってやってるんだ。」というような「してやってるボランティア」になりがちです。一部にそういう地域もあるようですからご注意ください。
3:お客様に良い思い出を持って帰っていただくこと。
観光鉄道としてのローカル線の存在意義は、遠くの人に思いを馳せてもらうこと。そのためには、自分たちがこうやりたい、ああやりたいということよりも、お客様が何を求め、どう楽しんでいただくかが大切なポイントです。
4:勉強しましょう。
世の中には観光だけでなく、いろいろな成功事例、失敗事例があります。そういう事例を一生懸命勉強しましょう。そのためには自分で出かけて行くことも必要ですし、いろいろな地域と交流を持つことも必要です。
5:反対意見がある人は参加しないようにしましょう。
いろいろな考えの人がいますから、皆さん同じように賛成してくれるものでもありません。「俺は反対だ!」という人もいてよいと思います。ただし、そういう人は参加しないこと。一生懸命やっている人たちの邪魔をしたり批判したりすることはやめてください。長期的ビジョンに立って反対するのであれば邪魔はしないはずですが、中には「あいつのことが気に食わない。」という理由だけで邪魔をしたり足を引っ張ったりする人がいるようです。
「そんなことをやっているからこの地域はダメになるんだ。」と社長に言われますよ。
6:日本人としての温かい心を持ちましょう。
私たちは何百年も前からみんなで助け合って生きてきました。ここ40~50年間だけは個人主義が台頭していますが、日本人の基本精神はそうではないはずです。
それを実践できるのがローカル線のよいところだと思います。みんな仲良く、力を合わせて頑張っていきましょう。
さあ、いろいろと注文を付けさせていただきましたが、2013年も本格的にスタートします。
いすみ鉄道沿線地域が日本の田舎のモデルケースになるように、一緒に頑張っていきましょう。
東京よりも夷隅の方がはるかに凄いんですから。