航空会社に勤めているときに、このままでは「幸せになれない。」と感じたことがいすみ鉄道の公募社長に応募した動機だとお話ししました。
では、航空会社に勤めていると幸せになれないのでしょうか?
決してそんなことはありません。
幸せというのはなれるかなれないかではなく、なるかならないかだからです。
そのためのお手伝いというか、一つの方向性を示すのがリーダーです。
リーダーというのは自分の部下や仲間たちに常に前向きな希望を持たせて、チームを前進させる使命があります。
どんなに苦しい状況に置かれても、遠くに一点の灯を見つけ、「がんばれ!
あそこまで行けば大丈夫だ!」とチームを元気づけ、前進させなければなりません。
もし、真っ暗で、一点の灯も見出すことができず、いくら進んでも希望が持てないときでさえ、「お前たち、心配するな。1日のうちで夜明け前が一番暗いんだ。だからもうすぐ夜が明けるぞ。」とチームのみんなに希望を持たせるのがリーダーの使命です。
私は航空会社にはこれからも色々なビジネス戦略があり、たくさんの可能性があると思います。
なぜなら、潰れそうなローカル線にだって、いろいろな可能性があって、使い方によってはいくらでも社会的にお役にたてるからで、それが航空会社ということになれば、空を飛んでどこへでも行かれるわけですから可能性は無限大なわけです。
だから私は航空会社に勤めている私の後輩たちにも希望を持ってもらいたいと思います。
そんな可能性の一つとして業界に風穴を開けているのがLCCと呼ばれる格安航空会社。
東京から札幌や福岡まで1万円で往復できるようになれば、新しい需要を開拓することができるわけです。
実は私はこれが日本人が物質的満足感から精神的満足感に転換できる大きなポイントになると思うのです。
札幌まで片道3万円の運賃を払わなければいけなかった時代は、皆さんお金を貯めて、札幌へ行くことを目標としていました。
片道3万円かかるということは、家族4人で行こうと思えば20万円以上必要ですから、「よ~し、頑張って貯金して行くぞ!」と、行くことそのものが第一目標になる。
でも、往復で1万円で行かれるようになれば、行くことそのものが目標ではなく、「行って何をするかが目標」になります。
物理的な遠距離移動が目的でなくなるという点で、精神的な世界に移行する大きなポイントだと感じるわけです。
どこかへ行ったり、何かを買ったりすることが目標だった日本人が、物が豊かになったり、交通が飛躍的に便利になることで、買ってどう使うか、行って何をするかが主流になってきたのです。
そのために例えばLCCのような航空会社が進出し、一気にハードルを低くしてしまうような革命的なことがきっかけになるわけです。
だから、札幌や福岡まで片道1人3万円の商売をしているような会社では、いつまでもそのスタイルで営業を続けて行けるかどうかは怪しいけれど、航空会社というビジネスそのものは、今後も発展していくことは間違いないと思うわけです。
私たち日本人は物質的に豊かになりました。
夏涼しく、冬暖かい生活を送ることができるようになりました。
こういう物質的生活に危機感を抱いて、退廃したという人もいるようですが、私は、こういう物質的に恵まれた生活を否定しません。
こういう生活ができるようになってはじめて、いろいろ考えることができ、次の時代に進むことができるようになったと思うからです。
昨今は競争の時代です。
競争原理が働くところは消費者に有利になり、競争原理が働かない地域は消費者に不利になります。
航空路線でいえば、東京から札幌、福岡、沖縄など、競争原理が働く路線はどんどん運賃が安くなります。
でも、1社しか乗り入れてなく、競争原理が働かない地域は、今後も片道2~3万円といった運賃が続くでしょう。
そうすると、新規需要(安いから行ってみようというような本来なかった需要)が発生せず、そういう地域は今よりもさらに廃れていく可能性があります。
これがいわゆる負のスパイラルです。
これからの時代はどれだけ離れているかという「物理的距離」ではなく、どれだけ行きやすいかという「距離感」が重要になるわけです。
その「距離感」が、圏央道の延伸開業で、今年、房総半島がさらに東京から近くなります。
羽田空港から大多喜まで45~50分もあれば来られるようになるのです。
だからいすみ鉄道沿線の房総半島には限りない可能性があるわけです。
今まで、鉄道会社は高速道路と対極にあるとされてきました。
高速道路ができると、ローカル線は誰も乗らなくなり、廃止の道が待っているということが常識でした。
でも、私の考えは違います。
いすみ鉄道のようなローカル線は、高速道路が近くまで来ることで大きく発展できるチャンスがあります。
高速道路ができるということは便利になるということで、その便利になるということをどうやって自分たちの生活に取り入れ、自分たちの経済が豊かになれるかは、自分たちの問題ですから、ローカル線も高速道路を味方につけるしかありません。
高速道路網の発達という流れが世の中にあるとすれば、その流れに逆らうのではなく、追い風として利用することが発展するチャンスなのです。
今年、いすみ鉄道を始め房総半島の中部から外房のいすみ、勝浦地区には大きなチャンスがやってくると私は考えているのです。
先日、ある地方都市のリーダーが、うちにもLCCを誘致したい、とおっしゃっていましたが、そういうリーダーには先見の明があります。
LCCが来れば潜在需要が顕在化することは目に見えているわけで、地方都市にしてみれば、大都市からのパイプが一気に太くなるわけです。
地方都市に居ながらそういうことを発想できるリーダーがいる地域は発展するでしょう。
でも、昔ながらの陳情ばかりしていれば良いと考えるリーダーがいる地域は、廃れるかもしれません。
それだけ、厳しい時代が目前に迫っているのですから、ローカル線をツールとして使うことに気が付けば、ローカル線があるということが非常にありがたいことなのだとわかるわけです。
ローカル線を抱える地域の皆さん、決して廃止しようなんて考えてはいけませんよ。
もし廃止してしまうようなことがあれば、遠い将来ではなく、3年後、5年後といった近い将来に、皆様方は世間の笑いものになるのですから。
(つづく)
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