松山発 羽田行 にて帰国しました。

昨夜の台風はすごかったようですね。
皆様方はいかがお過ごしになられましたでしょうか。
私は松山発羽田行に乗って空の上でした。
松山といっても愛媛県の松山ではありません。
台北市内の松山空港からの中華航空CI222便です。
この飛行機は夕方の6時15分に台北松山空港を出発し、夜の9時55分に羽田に到着する国際線です。

以下、時間を追って報告いたします。
私と息子を乗せたCI222便・A330-300は現地時間の18時18分にゲートを離れ、18時34分に離陸しました。
順調に飛行を続けたCI222便は日本時間の21時35分に着陸のための降下を始めます。
ところが、このあたりからなんだかおかしくなりました。
愛知・静岡県の沖合でグルリと一回りしたのです。
おそらくホールディングと呼ばれる時間稼ぎだと思います。

通常西からきて羽田に降りる便のホールディングは大島・三宅島付近や房総半島沖合いなのですが、このようなところでホールドさせられるということは、羽田付近はかなり混雑していると考えられます。
まして、予報によればこの付近にはちょうど台風がいる辺り。
飛行機もガタガタとかなり揺れ始めました。
やがて、房総半島沖でもう一度ホールディング。
通常ならば下田→大島→館山と通るルートがかなり南東にずれています。

大学4年の私の息子はめったに飛行機には乗りませんし、どうやって飛ぶかもわかりませんから、だんだんと不安な表情になってきて、「お父さん、この飛行機大丈夫かなあ。」と言います。
「大丈夫も何も、今さらジタバタしたって始まらないから、そう緊張するな。」と答えて、私はシートの前に出ている航跡マップを見ながら、これから飛行機が飛ぶコースを教えることにしました。
「今、房総半島の中央部だから、このまましばらく北上するよ。」
「今夜のように風が強いときは、横風用の滑走路22番に降りるはずだから、もう少ししたら左旋回して南下する。」
「はい、この先で機種を右に振って、そろそろ車輪を出すぞ。」
「はい、車輪が出たね。そろそろ下が見えるはずだけど、何か見えるか?」
とこんな感じで、息子に向かって話しかけました。
そうしたら、飛行機が私の言うとおりに飛んでいくので、息子も安心した様子。
「あっ、下が見えた。」
どれどれ、と隣の席から窓の外を見ると、羽田の近くの倉庫街の明かりがすぐそこに見えます。
でも、飛行機は風を受けて機体を左右に振って、安定しません。
「これは無理だね。降りられないよ。」
私がそう言ったとたん、飛行機はピューンとエンジン音を高めて上昇に移りました。
ゴー・アラウンドと呼ばれる着陸復航です。
この時が22時45分(日本時間)
台北を離陸してからすでに3時間以上が経過しています。
「着陸やり直しの場合は、5000フィートまで上昇してから復航のコースにはいるから、高度表示を見ていてごらん。」
飛行機は嵐の中、しばらく5000~7000フィート付近で水平飛行をして時間稼ぎをしていましたが、やがてエンジンの音を再度高めて、一目散に西へ向かって上昇を始めました。
「この飛行機は、羽田空港悪天候のため、台北の桃園国際空港へ向かいます。」と。

[:up:] CI222便が羽田に降りるのをあきらめて台北に戻り始めたところ。

[:up:] 上と同じ時刻に次男が見ていた航空レーダーのサイト。夜の11時過ぎだというのにたくさんの飛行機が飛んでいます。羽田をあきらめて西へ向かっている飛行機も1機ではありません。
この時、私と息子(3番目)が乗った飛行機を地上からもう一人の息子(2番目)が見ていました。
そうしてCI222便は離陸してから6時間半後の現地時間午前1時05分(日本時間2時05分)に台北のもう一つの空港である桃園国際空港に着陸しました。

[:up:] 桃園空港に到着するところ。松山を出て桃園へ戻ってきたことがわかります。
「さて、我々はどの様な取り扱いを受けるかなあ。何しろ相手は天候だし。」と思って様子を見ていると、地上職員が機内に入ってきて、
「隣のゲートに飛行機をご用意しています。皆様、トランジットラウンジを通って隣のゲートに来てください。」
荷物を持って隣のゲートに行くと、同じA330がスタンバイしています。
「先ほどと同じ席番号に着席してください。」
とすべてのお客様を乗せて、乗務員を交代した新CI222便は現地時刻2時42分に桃園空港を離陸。
約3時間飛んで、日本時間の午前6時35分に無事に羽田に到着となりました。
羽田空港から息子を一人で自宅に帰し、私はアクアラインを通って8時半に大多喜へ出社。
そして1日仕事をして今自宅へ戻ってきたところです。
まあ、なんとも長い1日でしたが、航空業界に長かった私は今回のことでもずいぶん勉強させていただきました。
何しろ、羽田上空まで来ているのに、札幌でもなく、大阪でもなく、台北に戻るといった機長の判断。
航空会社の場合ベースと言いますが、基地があるところに戻るのが一番得策なのです。
ベースにさえ戻れば、職員も交代のクルーも飛行機も揃っています。
桃園空港に着いた時には、私たちの乗った飛行機と同じ形の飛行機がすでに準備ができていて、わずか1時間ほどの時間で再出発できたのは素晴らしいハンドリングだと思います。
もし、札幌へ行っていたら?
おそらく札幌ではJALもANAも自社便の欠航を数本抱え、羽田からダイバートしてきた飛行機もあり、真夜中でホテルもなく、他所の会社の便をケアしてくれる職員もいないでしょう。
もちろん交代の乗務員もいません。
そういう中で一晩飛行機の中に缶詰にされることを考えれば、たとえ3時間かかってもベースに戻って、新しい飛行機と新しい乗務員で再出発する方がはるかに合理的なのです。
結局、乗客の皆さんは文句を言う人もいませんでした。
前の晩遅くに帰ってくるはずだったのが、次の日の早朝になっただけのことですからね。
おかげさまで私も素知らぬ顔をして大事な会議に出ることができました。
何度も乗っていますが、チャイナエアラインはなかなか良い会社だと思います。
一晩で台湾と日本を1往復半もしてもらって、機内食2回に映画を2本見て、航空運賃はそのままですから、何だかずいぶん得しちゃいました。