ネットの話題から

このところネットをにぎわせている話題を2つ。

1つ目は6月12日にインドで発生したインド航空171便の墜落事故です。

今の時代は次から次へとネットに動画が出てきて、皆さんそれぞれ口々に事故原因の究明を始めています。
事故原因はいずれ解明されるので現時点でいろいろ言ったところで何も始まりませんが、全く現実離れした議論ではなく、ある程度信憑性のある話をしておかないと、勝手な話がネットでもっともらしく拡散される危険性もありますので、私としてはいろいろ見て、明らかにウソであったり、複数の動画を貼り付けていたり、関係ない事実を関連付けたりするものを除いて、今現在で最も現実味がある動画をFacebookで見つけましたので、今日の記事の一番下にリンクを貼っておきます。

アメリカ人の現役のB777の機長、キャプテン・ステーヴの解説です。
彼は慎重に言葉を選んでいて、いずれ事故原因は究明されるでしょうが、現時点でいろいろある事故原因の予測の中で、一番もっともらしい原因を動画で解説しながら次のように話しています。

・飛行機は通常通り離陸していきました。
・滑走路を離れるまでは正常です。
・滑走路を離れた時点で、「ギアアップ」となるはずですが、車輪は上がっていません。
・車輪が上がるとB787の場合は揚力を持った主翼の両端が大きく上の方に曲がってしなりますが、そのしなり方も通常のB787の離陸時よりも小さく見えます。
・そして、ある点を頂点として下降し始めます。
・下降が始まったところで、機種がさらに上がっているように見えます。
・最後は主翼からフラップが出ていないようです。(787の離陸時のフラップ角度は5度程度ですから、この画面からの判別は難しいかもしれません。)

以上のような観測から、キャプテン・スティーヴは次のように解説しています。

・機首を上げて離陸していくまでは全く異常はなかった。
・機長が「ギア・アップ」と脚上げを指示した際に、副操縦士が間違ってフラップをUPしてしまった。
(当日は外気温37~39度。この空港の滑走路長は3500mですが、ロンドンまで約10時間分の燃料を搭載していたら、フラップなしでは離陸できませんので、離陸まではフラップが出ていたと思われます。)
・脚が出たままだと大きな抵抗が発生します。さらにフラップを格納してしまったために上昇のための揚力が減ります。この2つの効果でいくらエンジンパワーを入れても上昇を維持することは不可能となりました。
・おそらく機長はなぜ高度が下がっているかに気が付かないまま、機種を引き上げようとしたのでしょう。でも、この低高度ではどうにもできなかった。

これがキャプテン・スティーヴの見解です。

現役の機長が「未確定な情報を言うとはけしからん。」というご意見の方もいらっしゃると思いますが、動画をいろいろと加工したウソやデマが飛び交う中、ある程度知識がある方が議論に道筋を立てる必要はあるのではないかと思いましたので取り上げてみました。

この事故を見て、私は1972年にモスクワで発生した日本航空機墜落事故を思い出しました。離陸直後に何らかの操作ミスで失速し、エンジンストールを起こして爆発炎上した事故でした。

私としては、飛行機を飛ばすには各種様々な仕事の方が関わっていると思いますので、そういう皆様方が自分事として身を引き締めてお仕事に従事していただくことが、一番大切だと考えています。

もう一つの話題は「ハニートラップ」です。
選挙が近づいて来て、いろいろな動画が流れる中で、日本の偉い人たちはマスコミの幹部も含めて中国のハニートラップに引っかかっているのではないか。
だから、中国に都合の悪い政策や報道がなされないのではないか。
ということです。
ハニートラップというのはいわゆる「色仕掛け」というやつです。

私にとっては、中国のことははっきり申し上げてよくわかりませんし、どうでもよろしいのですが、多くの日本人の皆様方には中国と台湾の区別がつかない人が多くいらっしゃるようで、両方同じだと思っているかもしれません。
で、私ですが、いつも申し上げているように台湾にはもう何十回も行っている。
中国大陸には10回(香港も含めて)ぐらいしか行ってませんが、台湾には30回も40回も行っていまして、姉妹鉄道の締結など、台湾国鉄をはじめとして、現地のいろいろな方々と交流があり、いわゆる台湾びいきであります。

こういう私を見て、「あいつは台湾の悪口を言わない。」とか「台湾に都合の悪いことは言わないし書かない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうなるとその次に出てくるのは、

「あいつはハニートラップに引っかかってるのではないか。」

ということになるでしょう。
まして中国大陸と台湾の区別もわからないような人から見たら

「中国って、ハニートラップで悪口を言えなくしちゃうみたいだよ。」
「あぁ、だからあの社長、台湾大好きで台湾びいきなんだ。」

という理論が成り立つのではないかと思うのであります。

いやいやいや、
ハニートラップ?
そんなものありませんから。
20数年前から台湾へは出かけていますが、残念ながらそんなおいしいお話は一度もありません。
だいたい、中国大陸の話だってネットのざわごとかもしれませんし、そもそも中国大陸と台湾は全く違いますからね。

昔、イギリスでこう言われたことがあります。
「アキラ、日本人か?」
「そうだよ。」
「香港へはいつ帰るんだ?」
って。

ヨーロッパの人間から見たら日本も香港も一緒ですから。
海外旅行をしない日本人から見たら、中国も台湾も一緒でしょうからね。

ということで、私はハニートラップなどに引っかかったことはありませんので、変な噂を流さないように。
ていうか、あの~、65歳のお爺さんにはハニートラップは通用しませんので、誤解のないようにお願いいたします。

▼キャプテン・スティーヴの動画はこちら。
(Facebookにログインしないと見られないかもしれませんが。もちろん全編英語です。)
※あくまでもキャプテン・スティーヴの2日前の段階での見解ですのでご承知の上ご覧ください。(原因究明が進めば変わる可能性があります。)


https://www.facebook.com/share/v/1KZd8BPmBV