田舎でベンツは乗ってはいけない。(その2)

今夜もイヤミなベンツオヤジの話です。
気分が悪い方はスルーしてください。

さて、38歳で念願のベンツを手に入れた私は、毎日通勤で成田空港へ通ってました。

高速道路通勤です。
東関東自動車道は大きな事故が多くて、悪名高い区間です。
女房子供を抱えて食べさせていかなければならない私としては、不慮の事故で家族を路頭に迷わせることはできません。
でも、ベンツに乗っていれば安心です。
そう思って、毎日せっせとお仕事に通いました。

成田空港というところは、いろいろな車が来る場所です。
職員の中には通勤でベンツに乗ってる人もたくさんいますから、ベンツに乗っているからと言って奇異な目で見られることもありませんし、ベンツオヤジと呼ばれることもありません。

数年が経過してカミさんに与えたゴルフがダメになりまして(カミさんが車庫入れでぶつけて前輪が曲がってお釈迦になったことは内緒です。)、私が乗っていたE280ステーションワゴンがカミさんの車になりました。
ベンツオヤジと毛嫌いしていた自分がベンツおばさんになったのです。(笑)

そして私は同じステーションワゴンのE55AMGに乗るようになりました。

この子です。
この子もいい子でしたよ。

E55ですから排気量は5500cc。
しかも左ハンドル。
イヤミでしょう。
でも、乗りやすい車でした。
左ハンドルは意外としっくりくるものです。(考えてみれば飛行機も左ハンドルですし、電車も左ハンドルですから)

5500ccなんて恐ろしい車でしょう?
でもね、ベンツって意外と燃費がいいのです。

この子の燃費は半分下道、半分高速という通勤経路でリッター11㎞でした。
当時ハイエースの次にファミリーカーとして乗っていたデリカ・スペースワゴンの燃費がリッター7~8kmでしたから、ベンツの燃費の良さがわかるというもの。5500ccと言っても驚くことはありません。

次に乗ったのがCL500。
クーペです。
いろいろ乗ってきたけど、一度クーペに乗ってみたくなったんです。
で、乗ってみた。

この子もいい子でしたよ。
5リッターカーですが、燃費も悪くないし故障もしない。

で、いろいろ思い出してみたのです。

「ベンツに乗って考えることと、サニーに乗って考えることは違うんだ。」

という教官の言葉を。

はい、確かに違いますね。
どう違うか?

それはねえ、口ではなかなか表現できませんが確かに違うのであります。
心の余裕ですかね。
ベンツだと煽ってくるヤツもいないし、だからこちらもスピード出さずにおとなしく走るのです。
ふつうの人にはイヤミに聞こえるかもしれないけれど、乗ったことがある人であればご理解いただけるセリフなので、まぁ、やっぱイヤミでしょうね。
すみません、お許しください。

そうこうしている間に私の40代も終わりに近づきまして、ある日突然、田舎の鉄道会社へ通うことになりました。

そこで考えてみたのです。

公募社長でしょ。
外資系航空会社出身
当然英語も話せるし、海外経験もある。

田舎の人にとってみたら、それだけで嫌な奴ですよ。

そんな奴がベンツに乗ってるんですよ。

許せないじゃないですか。

うちのカミさんが、何の罪もない、人の良いお向かいのお家のご主人を「ベンツオヤジ、感じ悪い。」と頭ごなしに決めつけていたのと同じ。
でも、それが人情というものでしょう。

そんな奴がやってきて、
「今日から私がこの会社を立て直します。皆様協力してください。」
などと言ったって、説得力などあるわけがない。

「ふん、知ったこっちゃないわ」

となるのが世の中です。

だから私はベンツを家の車庫に置いて、デリカでせっせと房総半島の山の中へ通ったのであります。
ベンツの方がはるかに運転しやすいし、燃料代もかからないのに。
まして日本車は10万キロが一つの目安でしょ?
10万キロなんて毎日房総半島へ通ってればすぐですよ。
ところがベンツなら10万キロから調子が出てくるのですからね。

最初のE280ステーションワゴン。
この車は5年落ち、走行距離45000㎞で買いましたが、22万キロ達成の時のメーター。
この子は24万キロまで乗りましたよ。
260キロまであるスピードメーター。
もちろんそんなスピードは出しませんよ。
左側三分の一しか使いません。
つまり、車体と性能に余裕があるんです。
だから高速道路を100キロで走っていても、車に負担がかからないから故障しないし長く乗れるのです。

ということで、私はベンツは車庫に置いて、デリカでセッセセッセと通い続けて5年ほど経ちました。
その頃になると、鉄道会社の立て直しも軌道に乗り始めました。
いろいろなことがうまく行くようになったのです。

で、私の心にちょっとしたいたずら心が芽生えました。

田舎の町にベンツで通ったら、どんな反応を示すだろうか?

「私の言うとおりにすれば、ベンツに乗れるようになりますよ。」

って、当てつけですよね。
イヤミな奴です。

日本というのはおかしなところで「清貧」という発想がある。
でもね、海外ではそんなこと一切通じません。

日本の大学だと、経済学部の教授だってほとんどの人がなんだか貧乏くさいでしょ。
ていうか、ふつうの人ね。
ところがアメリカの大学で、経済学部や経営学部の教授が貧乏だったら、そんな奴信用できないでしょう?

偉そうにお金の話を学生たちに話すからには、まずは自分がその結果として今そうなっていないと。
貧乏な経済学者の話など誰も信用しませんから。

私は全くその考え方に同意していましたので、「俺の言うとおりにやっていればベンツに乗れるようになるよ。」と言ってみようと思ったのです。

なぜ、そう思ったかというと、田舎の町ではいろいろと言い寄ってくる人がいる。
何かにつけて。
で、そういう人が全員信用できるわけないじゃないですか。
だから、誰が信用できる人かどうか判別する必要があるなと考えたわけで、つまり人間不信のようなものです。
何しろ「社長、社長」ってみんなニコニコして近づいてくるのですから。

昔の話で恐縮ですが、ゴッドファーザーという映画がありまして、マフィアのボスが息子に言うんですよ。
「俺が死んだときに、葬式の席上で真っ先にお前に言い寄ってくるやつがいる。そいつが裏切り者だ。」って。
その発想ですよね。
私がベンツで通うようになったら、誰が何て言ってくるか。
それによって、そいつが信用できる人間か、そうでないかがわかる。
そんなことを考えたのです。

で、私はある時からデリカをやめてベンツで通うようになったのです。

そうしたら、おもしろかったですよ。

「なんだ、あいつは」
「生意気だ」
などという話が飛び交うようになってくる。

もちろんそうじゃない人もたくさんいますよ。
だけど、そういう人も出てくる。

まぁ、踏み絵みたいなものですかね。

同じ千葉県でも成田空港と房総半島では全く違うのです。

特に3セクという組織を下に見るような立場にある方々が、あからさまに敵対心を燃やすようになりまして。
たかだかベンツでね。
まんまと炙り出されてきたのです。
田舎っておもしろいなあと思うのです。

まぁ、はっきり言って私もイヤミな奴ですけど、人間不信に陥っている時というのは、そんな行動に出るわけでして、私は田舎の町では一部の人々から徹底的に嫌われるようになったのであります。

そして、ついにはその村社会の集団から排除されるに至ったのであります。

田舎でもベンツに乗っている人も居るには居るんですよ。
でも、そういう人はたいていは地元の人、旧家の出だとか、お金持ちだとか、その人がどういう人か皆さん知っている。
「あぁ、あの人ならそうだよね。」って納得できる人なのです。
そういうコミュニティーの中へ、よそ者がベンツで入って来たら、そのよそ者は排除されるのであります。

これ、私の経験から得た教訓。
日本の田舎の常識なのです。

ていうか、「やっぱりそうだったか」ということで、仮説を立てて実証されたのであります。

おもしろいですよ。

だから、田舎でベンツは乗ってはいけないのであります。

あえて火中に飛び込みたいのなら別ですけど。(爆)

グリーン車癖も復活したし、そろそろベンツ癖も復活しようかな。

天下の東海道なら皆さん知らん顔してくれるでしょうか?

ちなみに、ここに上げた写真の3台のベンツ。
E280ワゴン、E55ワゴン、CL500は3台とも購入価格は250万円です。
もちろんすべて中古ですよ。
当時、ハイエースのスーパーカスタムリミテッドが新車で400万円近くしていた時代です。

皆さんだったら新車のハイエースが400万で、中古のベンツが250万円だったらどちらを買いますか?
日本車はだいたい10万キロと言われているでしょう。
でも、例えばE280ワゴンの場合、5年落ちで走行距離5万キロ弱。
24万数千キロまで乗りましたから、乗った距離は20万キロ。
日本車の倍の距離を乗りましたし、車検も当時15万円ぐらいでした。
故障もほとんどありません。

Value for Money.

私はベンツを選んだのであります。

(おわり)

お値打ち価格のベンツの買い方は、オンラインサロン(有料記事)の方に書いておきます。
イヤミだねえ。