私の頭の中には地方創生や地域活性化を謳っている皆様方の本気度を測るリトマス試験紙があるというお話をさせていただきました。
つまり、「この方々は、本気で地域をよくしたいと思っているのか、それとも言われたからやっている。あるいは頑張っていることに満足しているのか。」ということを見極める必要があるということで、それはなぜかというと、私の人生の持ち時間がだんだんと短くなっている中で、その残り時間を有効に使うためには、どういう方々と一緒にお仕事をするべきなのかを判断させていただくことが必要だからです。
さて、私がこのような考えを持つに至ったのは、かれこれ14年という期間、地方鉄道に取り組んできた中で得られたものではありますが、実はそれよりも前に、ある方の取り組みを見て、「なるほど」と思ったからです。
それがこの方、岡山県の両備グループを率いる小嶋代表です。
この写真は2012年に青い森鉄道さんにお邪魔した時に撮らせていただいたものですが、実は、ずっと以前に小嶋代表が地方鉄道の再生に取り組まれているシーンをテレビで拝見させていただいておりました。
2000年代前半の話ですが、小嶋代表が手を差し伸べようとした鉄道会社が2つありました。
1つは茨城県の鹿島鉄道(石岡-鉾田)と、もう1つは南海電鉄の貴志川線です。
私がテレビで拝見したのは、地元住民の集会に小嶋代表が参加した時のシーンです。
夜、住民たちが公民館のようなところに集まって、この鉄道をどうしようか集会を開いて意見を出し合っているんです。
茨城県の鹿島鉄道の集会では、おじさんおばさんたちが集まって、「どうせ乗らないでしょう、うちらは車だし。」「まぁ、あってもただ走ってるだけだしね。」「赤字なんだったらバスで十分じゃないの?」などと、あの独特のしり上がりの茨城弁で話していました。
それをじっと聞いていた小嶋代表。
もう1つの南海電鉄貴志川線の集会では、「この電車は大事だから何とか残したい。」「自分たちでできることとして、駅の待合室のベンチに座布団を置いたり、ホームの掃除をしている。」
こちらの集会でも小嶋代表はじっと皆様方の話を聞いている。
そして、結論として鹿島鉄道の方は廃止になり、南海電鉄貴志川線の方は存続したのです。
皆さん、ご存じですよね。
南海電鉄貴志川線というのは、今では観光客がわんさか訪れる、あのタマ電車の和歌山電鉄です。
廃止になりそうだった路線が、小嶋代表がかかわったことでタマ電車の和歌山電鉄になった。
片や、茨城県の鹿島鉄道の方は、言うなれば小嶋代表は「見限った」ことになります。
「この鉄道はもうだめだな。」と。
その違いは何かというと、住民たちの関心度です。
つまり本気度。
南海貴志川線の方は地域の人たちがなんとか残したいと本気で取り組んでいた。
茨城県の鹿島鉄道の方は、「どうでもいいんじゃない?」という態度だった。
たった一度の住民集会で、その鉄道の可能性を小嶋代表は判断したのです。
これが私が言うリトマス試験紙です。
彼の頭の中には、当時すでにリトマス試験紙があったのです。
お会いした時に、私はそのテレビで見たシーンを尋ねました。
小嶋代表はたった一言、「沿線住民の皆様方がどれだけ大切に思っているか。その気持ちがあればいくらでもできますよ。」
地域の夜の集会に出てみて、一発でリトマス試験紙の色が変わったということなのでしょう。
でも、だからと言って、いくら沿線住民に熱意があっても鉄道の再生なんてそう簡単ではありません。そこで必要なのは再生ノウハウを持った人物や企業ということになるわけですが、小嶋代表率いる岡山県の両備グループは、そういう地域貢献ができる会社だということですね。
わたくし的には茨城県の鹿島鉄道は大好きな路線でした。
とにかく景色が素敵で、今だったら観光列車を走らせれば首都圏からたくさん人が訪れる有名路線になったと思いますが、いくらコンテンツを磨こうとしても、地元の皆様方が興味がない、関心を示さない、どうでもよいと考えているところには、人とお金と時間をつぎ込む価値はないということなのでしょう。
正直申し上げて、沿線風景は南海貴志川線よりも格段に鹿島鉄道の方が良かった。
本当にもったいないことをしたと思いますが、地域の人たちが要らないというのであれば致し方ありません。
▲鹿島鉄道の始発駅石岡にあった車両基地。骨董品級のディーゼルカーが集まっていました。
▲首都圏にあって、なかなか良い味が出ていたのですが。
でも、地元の皆さんは自分たちが住んでいる地域の価値をなかなかわかりません。
そういう人たちが、まだまだ磨けば光るものをどんどん捨ててしまう傍らで、ないものねだりをしているのが、もしかしたら地方創生だと思っているとすれば、それは大きな勘違いですから、やっぱり、そういう地域はリトマス試験紙を当ててみたらすぐに判断できるのではないかと、私は思うのであります。
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