最低賃金を1300円にすると日本はどうなるのか?

世はまさに選挙戦の真っ最中。
まあ、あまり興味のない人たちにとってはどうでも良いのでしょうけど、今回の選挙で与党も野党も同じことを言っていることがあります。

それは最低賃金の引き上げ。

自民党は1000円に。
野党第一党は1300円に。
共産党は1500円に。

どういう根拠を持ってしてこの数字を出してきているのか。その辺りがよく分かりませんが、いずれにしても賃金は引き上げなければならないという点では一致しています。

そして、賃金を引き上げれば生活が豊かになっると言っている点も共通です。

おもしろいですね。

本当に賃金を引き上げると生活が豊かになるのでしょうか。

経済学者がいろいろな意見や見解を述べているようですが、私は専門家ではありませんから、いろいろ好き勝手に考えてみてるんですけど、おそらく皆様方にもそういう方はいらっしゃいますよね。

では、まず、今の時点での最低賃金って、いったいいくらなのでしょうか?

最低賃金は毎年だいたい夏から秋に発表されていますから、現時点での数字は2018年のものになりますが、こんな感じです。

東京 985円
神奈川 983円
大阪 936円
埼玉、愛知 898円
千葉 895円
京都 882円
兵庫 871円
広島 844円
静岡 814円
青森、岩手、秋田、鳥取、高知、佐賀、長崎、宮崎、沖縄など 762円
鹿児島 761円

1位は東京、最下位は鹿児島。
全国これだけの差があるんですね。

ということで全国平均は874円。
だいたい兵庫県と同じ金額です。

この874円を1000円にするということは、14%アップ
1300円にするということは、48%アップ
1500円にするということは、71%アップです。

この金額まで何年間で引き上げるかは問題ですが、野党第一党は5年以内と言っている。
まあ、参院選ですから、次の選挙は6年後ですから、5年と言わざるを得ないのでしょうけど、5年間でこの数字ということは、自民党の14%はまだ理解できるものの、48%とか71%とか、賃金のアップ率としては理解できませんね。

すごいと思いませんか?

60年前の所得倍増論と同じことを言っているのですから。

では、まあ、実際にニッポンのサラリーマンの平均月収がどういう推移を示してきたかというと、

1965年 30300円
1970年 58400円
1975年 131000円
1985年 237400円
2012年 326000円
2017年 304000円

こんな感じでしょうか。
(複数の統計を調べたのでこの数字はあくまでも参考ということで。)

1960年代後半から1985年まではすごい率で伸びていることが分かりますね。

まあ、当然と言えば当然ですが、この時代は昭和の狂乱物価の時代でしたから。

だから、当然他の物価も上がったわけです。

例えば国鉄の初乗り運賃

1965年 10円
1968年 20円
1969年 30円
1976年 60円
1978年 80円
1979年 100円
1981年 110円
1982年 120円
1984年 130円
1985年 140円

20年間に14倍になってる。

では今、いくらかと言えば、JRの初乗りは140円。

34年間同じなわけです。

当然JRになってからの企業努力は認めますが、そもそも物価全体があがっていない。
そして給料も足踏み。

では、最初の話に戻りますが、最低賃金を40%とか70%上げたらどういうことになるでしょうか。

給料を上げるということは人件費があがります。
人件費があがるということは、企業はその分を何らかの方法で解消しなければなりません。
どういうことが必要でしょうか?

・商品の値上げをする
・労働生産性を上げる
・企業の利益を減らす
・商売をやめる

他にもあるかもしれませんが、だいたいこんなもんでしょう。

商品を値上げすると、物が売れなくなるから消費が落ち込む。
確かにわかる気もするんですけど、でも、給料だって上がってるんですから、買えるはずです。
まして人件費が例えば10%上がったと言っても、商品価格が10%上がるはずはありませんから、単純に考えると可処分所得が増える。つまり、生活が楽になる。

労働生産性を上げる。
これは今まで5人でやっていたことを4人でやるとか、5時間かかっていた仕事を4時間でやるとか、そういうことだと思います。そのために機械化したりすることも必要でしょう。
だけど、最低賃金で働いている仕事って、これ以上労働生産性を上げることができない仕事が多いのではないでしょうか。
例えば2人で切り盛りしているコンビニや牛丼チェーン。
1.5人で良いんですけどって、無理ですからね。

企業の利益を減らす。
これは考えられますね。
どうせ企業が利益を出したところで法人税率下がってるんですから。そのことを引き替えに政府が経営陣にお願いしてる可能性もある。
コンビニなどのフランチャイズなら、各店舗は採算ぎりぎりだから人件費があがることに堪えられないかもしれませんが、本部が対応せざるを得なくなる。なぜなら

商売をやめる
という選択肢が出てくるからです。

これからの時代は、人口が減ってくる時代です。
そういう時に、今あるお店や会社が全部生き残れるわけでもありません。
安い賃金で成り立っているような会社、つまり個人の犠牲に転嫁して成り立っているような会社は遅かれ早かれ淘汰されることになるのですから、それがこのタイミングかもしれません。

だとしたら、会社が無くなるんだから、一般市民、特に低所得の方々の生活は苦しくなるじゃないか。

確かにそうですね。
ただ、それは一時的にはそうかもしれませんが、長期的に見たら「世の中人手不足」なのですから、労働市場として見た場合、結果として健全なのではなかろうか。

まあ、そんなこともあり得ますね。

ということで、良いも悪いもいろいろ考えられるんですよね。
だから正直言ってどうなるかわからない。
だったら、この際ですから、やってみたらよいと思います。

だって、今までずーっと物価が上がってこなかったんですから。

昔はね、それこそ狂乱物価の時代、「やんなっちゃうわ、物価が上がって。」と家庭の奥さん皆さんおっしゃってました。
じゃあ、物価が上がらなければ楽なのかというと、賃金が上がらなくなっちゃって、どうにもならない。
だったら、ここいらで何かやってみる必要があると思います。

韓国で最低賃金上げたら景気が悪くなって失業者が大量に出ているという話も聞きますが、日本と韓国とは経済の規模も社会の仕組みも違いますからねえ。

「やってみなはれ」

と、私は思います。

まあ、そんなことをしたら田舎の交通機関とか動かなくなるところもたくさん出てくるでしょうけど、この際だからあぶりだして、本当に必要なのかどうか、みんなで考えることも必要だと思います。
「株式会社なんだから赤字じゃ駄目。」と言っている人たちに、経済原理で淘汰されたらどうなるか知っていただいて、お考えを変えていただく必要もありそうですから。
つまり、それはそれで別の仕組みを作らなければならないということなのですから。

物価が上がれば経済が良くなるとは単純には言いませんが、
物価が上がらなければ、何も変わりませんから。
思い切って借金してビジネスを起こすなんてことを誰も考えなくなっちゃったから、こうなってしまったのですから。

ただし、物価が上がる理由が「増税」となるのが消費税ですから、そこには自由経済の原則など適用できないのです。
これが先日も話しした財務省の取れるところから取るという政策。
経済には全く関係ありません。

消費税なんかやめてしまって、酒税とタバコ税と料飲税と通行税等々を復活させて、累進課税を強化して、法人税を上げて、外国に逃げる金持ちと逃げる会社はいったい誰かということもはっきりさせてみたら面白いと私は思います。

アルコール飲料が1缶90円とか100円で飲める必要はないし、たばこはひと箱2000円ぐらいでも良いでしょう。
1人3000円以上の食事をしたら税金20%。
グリーン車は一律1000円アップ。
皆さん払うでしょう。

企業の事業規模に応じて交際費枠を与えて、例えば年間1000万円交際費を使いなさいとか言うのです。
そして、1年経って決算してみて600万円しか使ってなかったら、残りの400万円を税金で持って行くってのはどうですか。
そうしたら皆さん目の色変えて交際費を使い切ろうとするでしょう。
銀座のクラブだって活気を取り戻すんじゃないでしょうか。

取れるところから取るのではなく、持ってるところから取る。
これが経済原理に照らした場合の正しい税金の取り方です。

ということで、今夜もひとり言なので気にしないでください。

読者の皆様方のご意見やご見解は受け付けておりませんのでご了承ください。