どうしてムーミン列車なのですか?

どうして、いすみ鉄道はムーミン列車なのですか?
いろいろなところで、よく質問されます。
答えは私の本 いすみ鉄道公募社長 危機を乗り越える夢と戦略 の56ページからに書いてありますが、そのために本を買えというのもいやらしいので、どうしてムーミン列車なのか、私なりの考えをお話しさせていただくことにしましょう。
【理由1】
ムーミンはファミリーみんなで仲良く暮らしています。
アニメーションのキャラクターは無数にありますが、たいていは相手をやっつけたり、たたきのめしたりします。
可愛い顔していても、戦闘能力があって、火を噴いたりするキャラクターが多くいる中、ムーミンファミリーは、みんな仲良く助け合って、相手を尊重しながら、平和に暮らしています。
【理由2】
ムーミンファミリーは、自然豊かな環境に住んでいます。
山があって、森があって、渓谷があって、川が流れていて、お花畑があって、遠くに海があります。
ムーミン達は、このような自然豊かなところで暮らしていますが、このシチュエーション、いすみ鉄道沿線の房総半島に似ていませんか?
【理由3】
ムーミンのお話には、1本筋が通った哲学があります。
リトルミイって、ひねくれもののように思われる方もいらっしゃると思いますが、実は、洞察力に優れていて、人間の本質を見抜いているのです。
スナフキンもそう。さすらいの旅人のようだけれど、スナフキンは基本的には物を所有しないのです。
スニフとか、スティンキーって、ずるがしこいけど憎めない。こういう人も周りを見渡すと必ずいますね。
ムーミンのお話って、きれいごとだけじゃなくて、人生の酸いも甘いもとりまぜた哲学を持っているのです。
だから、ムーミンのお話は決して子供向けのものではないのです。
【理由4】
どちらかというと男性よりも女性の方がムーミンのストーリーが好きです。
そしてムーミンは実は昭和のアニメです。
日本では昭和40年代にはじまりました。
そして、過去20年以上、テレビで新作アニメをやっていません。(再放送は除く)
ということは、小学生の時にムーミンを見て育った人たちは、若い人でも30代になっている女性なのです。
私の世代が岸田今日子さんのナレーションのムーミン谷をリアルタイムで見た世代の始まりですから、日本では30代~50代の女性がムーミン世代なのです。
そして、その年代の女性は、行動力があって、お財布のひもを握っていますから、購買層として重要な年代でもあるのです。
ムーミン列車を走らせてわかったのですが、30代~50代の女性が子供のころに見ていたムーミンは、その当時子育てをしていた60代~80代のおばあちゃんにもファンがたくさんいるのです。
それから、お母さんがムーミンファンの子供たちもムーミン好き。
つまり、日本において、ムーミンファンの層は、幼稚園生から80代のおばあちゃんまで、幅広く存在するのです。
ムーミンマーケットがこれだけ幅広く存在するのですから、現状では商品構成もまだまだ未完成かもしれませんね。
【理由5】
私の家内がムーミン好き。
原書や原画を読むほどですから、ムーミンの話は私よりも家内の方が数段詳しい。
だから、航空会社を辞めて、潰れそうないすみ鉄道に飛び込むにあたっては、家庭内の平和を最優先する必要があったのです。
日本全国共通事項として、女性がニコニコすれば、世の中は平和になると私は思っています。
いすみ鉄道を活性化させるために、ムーミンを選んだ理由はこんなところです。

[:up:]ムーミンの日用に大型ヘッドマークを取り付けるムーミン列車。
ところで、いすみ鉄道でのビジネスには失敗は許されませんから、こういうことを考えると同時に、やってはいけないことも並行して考えました。
私が絶対にやらないと決めたのは、今はやりの「ゆるきゃら」。
「ゆるきゃら」は、自治体など公共性の高い組織が、大きな予算を取って採用し、じっくりと育てていくものだと考えていますから、小さな企業がオリジナルのゆるきゃらを作って、それを営業に使用して成果を上げるためには、予算と時間がかかりすぎます。
私が就任した時点でのいすみ鉄道は、そんな時間もお金もありませんでしたから、オリジナルのゆるきゃらは絶対にやってはいけなかったのです。
それよりも、現時点で、すでに全国に広く知れ渡っているムーミンのようなキャラクターの知名度を利用させていただく方が即効性があり、効果も大きいのです。
低予算で時間がない場合、ビジネスプランにゆるきゃらを使用することはご法度であると私は思います。
これは、世界共通に言えることですから、航空会社でもゆるきゃらを即戦力として使用しているところはないのです。
ちなみに、千葉県で一番有名なキャラクターはご存知ですか?
そう、「チーバくん」ですが、国体でずいぶん知名度を上げたこのキャラクターも、千葉県以外の方はほとんどご存じないのが実情でしょう。
湘南に住んでいる私の甥が、チーバくんを見て、「あの赤いの何?」って言ってましたから、千葉県を一歩出ると、その程度なのです。
もちろん、地元に徹するのであれば、ゆるきゃらもいいと思いますが、いすみ鉄道を全国区にするという「当時の」私のビジネスプランには、ゆるきゃらは使えなかったのであります。
※私はゆるきゃらやチーバくんを否定しているわけではありません。
あの、「ゆるさ」はホッとしますから、それはそれでよいのですが、商品展開上の即戦力にはならないのです。
いすみ鉄道も、即戦力以外でじっくり育てていく余裕ができてきましたから、この秋ごろにはチーバくんとキハ52のコラボ商品の展開も考えているのです。