地域にはお金が落ちているということ

最近、若い人と話をしていて「日本人は変わったなあ。」と思うことがよくあります。
それは若い人が私の顔を見て「社長、お金を落としに来ましたよ。」と言ってくれることです。

レールパークもそうですし、観光急行の車内販売でもそうですが、「お金を落とす」つまり、お金を使いに来ているんだと皆さんはっきりとおっしゃるんです。

これはおじさん世代、お爺さん世代にとっては少々驚きです。
昭和の時代は「観光地物価」という言葉があって、観光地へ行くとふだんよりもモノの値段が高いということが当たり前でした。

例えば海水浴場の海の家(新潟では浜茶屋といいます)のラーメンやスキー場のカレー。
昭和の時代は町中の中華屋さんのラーメンが例えば250円だとすると、海水浴場の海の家のラーメンは500円ぐらいしてました。カレーも同じです。
駐車場もタダの原っぱのようなところが1000円もしたり。
こういうのが観光地物価と言って、旅行者たちは高いとは思いつつも、旅行中だから「仕方ないよね。」と言って、高いお金を払っていました。

観光地ですから需要が集中する。
そういう時はモノが高くなっても仕方がないよね。
というような感覚です。

ところが、今の若い人たちは、「せっかく来たんだからお金を使いましょう。」「地域の経済に貢献しましょう。」と言って「お金を落としに来ました。」と言うんですから、世の中変わったなあと思うのです。

田舎の事業者としては実にありがたいものですよね。

では、この「お金を落としに来た。」「お金が落ちている。」という言葉はいったいどこの誰が言い始めたのでしょうかということになりますが、実は私の11年前のブログに同じような内容が書かれています。

他にも言った人はいるかもしれませんが、実は私がいすみ鉄道の社長に就任した直後の2009年の7月に、国吉駅近くの苅谷商店街で用品店を営んでいる吉田さんという社長さんに、「ここにはたくさんお金が落ちていますね。」と申し上げたのです。

その時、吉田さんは多分チンプンカンプンで、「この人は何を言っているんだろうか?」と思われたと思いますが、あとになって、「社長が言われていたことがようやく理解できました。」と言ってくれた時はうれしかったです。

そして今では、そんな私のブログの愛読者の皆さんが、トキめき鉄道にやって来てくれて、私の顔を見るなり、「社長、お金を落としに来ましたよ。」と言って、皆さんニコニコしながら鉄道の旅をして、おいしいものを食べて、思い出を作ってくれているんです。


▲観光客でにぎわういすみ鉄道国吉駅(2014年)

下に今からちょうど11年前の2011年5月13日に書いたブログのリンクを貼っておきます。

当時は震災直後。
世の中が沈滞ムードにあふれていた時でしたが、大糸線かやらってきたキハ52が運転開始して、千葉県の房総半島に明るい兆しが見え始めた時です。

ここに書いてある内容は私は今も全く同じ気持ちですし、ポリシーとして持ち続けています。
当時はローカル線が観光客を呼ぶツールになるという仮説を立てて、ムーミン列車や古い国鉄形車両を導入してその仮説を実証している最中でしたが、トキめき鉄道ではすでに実証済みの手法を再度展開しているだけですから、知らない人から見たら「なんでこんなに人気になるのだろうか?」と不思議かもしれませんが、私としては実証済みのことですから全然不思議ではないのです。

あとはこういうローカル線という仕組みを上手に利用して、地域がどうやって伸びていくのかということを地域の皆さんが実践していくだけだと私は考えております。

つまり、きわめて当たり前のことではありますが、地域活性化というのは地元の皆様方のお仕事なのであります。

ゴールデンウィークが明けると夏休みの仕込みが始まります。
地域の皆さん、一緒に頑張りましょうね。

2011年5月13日のブログ記事