私のトキ消費

最近ではモノ消費からコト消費、そしてトキ消費という言葉も使われ始めています。

えちごトキめき鉄道の「朝から夕まで455」という商品はそのよい例で、朝8:43から夕方の17:08まで、ずっと列車に乗り続けるのですが、これは昔の国鉄時代に上野から盛岡や、大阪から九州方面へ向かう急行電車がこの455系だった時と同じ所要時間を体験してみましょうというある意味しょうもない企画。

私のコレクションの昭和40年代の時刻表を見ていた若いスタッフが、「社長、8時間とか10時間とか走り続ける急行列車があったんですね。」と、昔の長距離ロングラン列車に注目したのが始まりです。

今の若い人たち、と言ってもその彼も30代前半で、決して若くはないかもしれませんが、JRになってから35年が経過すると、その年齢の人でも国鉄なんてわからないのです。
だから、上野から夜行列車に揺られて一晩かかって雪の青森駅に着いたなんてことは、演歌の世界だけの話になっているわけで、そういう人たちから見たら、国鉄時代の車両に朝から夕まで揺られてみたいというのは、懐古趣味でも何でもないわけです。

もっとも、「朝から夕まで乗り続ける」という商品企画を会議に出したら60以上のおじさんたち管理職にボロクソに言われたのでありまして、それでも私が「おもしろいからやれ!」と言って世に出した途端に、瞬殺で満席になるという人気商品になったのでありますから、ボロクソに言ったおじさんたちは、今の世の中からは完全にズレているということを自ずから悟らなければならないのであります。

さて、そうやって実際に列車の中で長時間過ごすばかりがトキ消費ではないと私は考えます。
先日もご案内いたしましたが、深川を歩いていた時にとても懐かしくなりまして、そういえばこの辺をよく歩いたことを思い出しました。

2月18日のブログ 「私だけの観光地」
▲詳細はこちらをご参照ください。

私のように子供のころからカメラを持っていろいろなところを歩いている人生を送っていると、気が付けばすでに半世紀が経つわけですが、実は私は40過ぎぐらいから折に触れ、昔訪ねたところをブラブラと歩いているのであります。


▲沼津


▲浅草


▲川口


▲佐倉


▲網走(市議の近藤さんと)


▲国吉


▲大山

とまあ、こんな感じでありますが、これも私にとっては立派なトキ消費なのであります。
特別な観光地へ出かけなくても、こうして昔出かけたところを再び訪ねてみる。
そこに電車が走っているだけで、年代がわかりますから、見比べると面白いと思いませんか?

若い人たちにお勧めしたいのはこういう趣味なんです。

何か特別な列車が走るからって我先にと争って人に迷惑をかけて、結果的には他の人と同じような写真しか撮れないとすれば、今から将来を見据えてさり気ない一枚を撮っておくことの方が、自分だけの貴重な記録になるのです。

でもまぁ、そんなに何十年も待てないという方は、季節を変えて同じ場所へ行くのもお勧めですよ。


▲宗谷本線 音威子府

これなら今すぐにでも撮れるでしょう。

できれば有名な撮影地なんかよりも駅の構内や駅前で写したものの方が、あとになって場所の比較ができますから面白いと思いますよ。

趣味は人それぞれ違うものですから、我先にと場所取りをして雑誌に出ているのと同じような写真を撮っても仕方ないのではないでしょうか。

というのも、私は子供のころまともなカメラを持っていなかったんです。
うちは貧乏だったし、そもそも昭和40年代はカメラは貴重品でしたから。
そんなガキが小さなカメラを持って蒸気機関車を撮りに行くでしょう。そうするとお兄さんたちから笑われるのです。そして「どけ!」って言われる。
お兄さんたちは皆さん一眼レフ持っていて望遠レンズも付けているから威張ってるわけね。
望遠つけてるんだったら後ろから撮れ!って思うけど、小学生のガキとしてはそんなことは言えないわけで、悔しい思いをさんざんしたのです。

だから、子供ながらに考えて別の視点を開拓したってわけ。

コンチクショーって感じでね。

最近、Facebookでお爺さんたちが昔の写真をたくさん出してるのを見ると、私も行った場所があるから、私に向かって「どけ!」と言ったのはこの人たちかも知れないと思うのですが、当時のお兄さんたちは皆さん70を越えていますから、若い人たちの趣味活動に協力しなさいよ!という観点からモノ申しているのであります。

ということで、お爺さんたちはもう良いとして、若い人たちはぜひぜひ、自分なりのトキ消費を見つけてみてはいかがでしょうか。

今から「将来もう一度ここへ来てみよう。」と考えてシャッターを切るってのも、なかなか面白い趣味になると思いますが、いかがでしょうか。

お金あまりかからないしね。


▲「おい、邪魔だ! どけ!」と言われていたころ。