日本は大丈夫かなあ。

総理大臣がサミット出席のためにイギリスに向けて出発しましたが、出発直前に政府専用機の機体に不具合が見つかり急遽予備機に変更したため、出発が遅れたようです。

どんな不具合かはわかりませんが、最高のメンテナンスをしているはずの政府専用機。それもまだ新しい機体なのに大丈夫なのでしょうか?

何がって、長距離飛行に堪えられるかどうかですよ。

以前はB747でしたからエンジンが4つありましたが、今のB777はエンジンが2つ。
4つだから安全で2つだから危険というわけではありませんよ。
今の飛行機のエンジンは昔に比べて性能が格段に良くなっている。
だから、エンジンが2つでも全く問題ありません。

と、そう言われてきまして、長年かけてエンジンが3つや4つの飛行機はいなくなって、エンジン2つの飛行機ばかりになってしまいました。

ところが、今の世の中はコロナでもわかるように、今まで当たり前と思われていたこと、疑いの余地もなかったことが、ある日突然そうではなかったことになるわけで、あれだけ安全だと言われていた原発をはじめ、コロナだって常識を覆されたし、安心だとか安全だとか信じて疑わなかったことが、コロッとひっくり返ることが起きるわけで、飛行機だってここ数年双発機のトラブルが続いていて、飛行中に吹っ飛んだエンジンの部品が民家に降って来て、こりゃ大変だと同じ機種が全部飛行停止になったりしているのであります。

まぁ、こんなコロナの時代ですから、飛行機が数十機飛べなくなって大量に欠航便がでたとしても誰も何も言いませんからテレビで大騒ぎにならないだけのことであって、日本の航空会社もしらッと該当する飛行機を運用から抜いて、アリゾナの砂漠へ運んで行っているのが現実なのでありますが、そういうこともニュースにすらならない。

でも、今日故障で戸惑った政府専用機も年式こそ違えど、同じ機種なのであります。
でもって、まだ新しいのに、大事な出番で壊れちゃうんですからねえ。

そのための予備機があるだろうというかもしれませんが、飛び上がってしまったら、すぐ横に予備機は並行して飛んでいたとしてもそんなものは無意味なわけで、なぜなら、「こちらの飛行機が壊れましたから、そちらに乗り移ります。」なんてことはできないからです。

前にもお話したことがあるかとは思いますが、双発機はETOPSというルールで運用されています。

ETOPSとはExtended-range Twin-engine Operational Performance Standardsの略で、どういうことかというと、飛行中に片方のエンジンが故障した場合、もう片方のエンジンでどれだけ飛べるかということなのですが、昔はETOPS60、つまり60分間飛行できますというルールでした。
ということは、飛行中に片方のエンジンが故障したら60分以内に緊急着陸しなければならないということですから、緊急着陸ができないような地域、つまり、海を越える飛行などは認められていなかったのです。

それが時代と共にエンジンの信頼性が向上してETPOSの数字が伸びて、今では180が普通になりました。
機体によっては200とか300とかいうのもあるようですから、すごいなあと思いますよ。

何しろETOPS180と言えば、飛行中にエンジンが故障したとしても、もう1つのエンジンで3時間飛び続けることができるとされているわけで、私など4発機のジャンボの時代に育った人間としては、「本当かなあ?」と思うのであります。

でも、世の中がその方向に行っているときには、航空業界の人間が「ETOPS180って本当に大丈夫なの?」などとは口が裂けても言える雰囲気ではないのでありますが、実際問題として羽田を離陸した飛行機が火を噴いたり、アメリカでは突然エンジンが爆発して民家の上に部品が降ってきたりする事故を見ると、「あの状態で3時間飛行するのは無理だろうなあ。」と感じるのであります。

大きな機体を2発で飛ばすということは、それだけ1つあたりのエンジンの出力が大きくなっているわけで、それがトラブルを起こした時には下手すりゃ機体に損傷を与えかねない。そうしたら3時間どころじゃありませんからね。

だから、飛行機製造国のアメリカでは大統領専用機は今でも4発のB747なわけでありますが、ではどうしても日本の政府専用機はエンジン2つの双発機かというと、簡単に言うと経済性なのです。

エンジン4つの飛行機に比べたらエンジン2つの飛行機の方が経済性に優れている。
航空機メーカーはそういうセールスをしていて、各国の航空会社に売り込んできましたので、日本の会社も4発のB747はやめてしまって、みんな2つの飛行機に変えてしまいました。

政府専用機の選定の時にも、最大限に求められたのは経済性で、安全性は「大丈夫だ。」と議論にもならなかったのです。
何しろ、政府専用機は国民の税金で運用するのですからね。

今の日本は消費税しか払っていないような人でも「俺たちの税金を無駄遣いするな」的な発言がまかり通る国になっていますから、選定の際に最大限に考慮したのは経済性なのであります。

でも、現実問題としてアメリカの大統領専用機はB747だし、韓国だって中国だって、遠くへ行くときには民間航空会社のB747を借り上げてそれに乗っていくのに、周囲を海に囲まれた日本の政府専用機が1発止まったら緊急事態宣言をしなければならない双発機なのですから、私は日本は大丈夫なのかなあと思うのであります。

今の日本は、目先のお金だけで物事を判断することが「正義」になっている。
だから、目先のお金だけを基準にして、本当に大切なのは何かというのを考えなくなってしまったように思います。

日本でワクチンが開発できなかったのも、行政がシステム化できていないのも、ローカル鉄道がどんどん廃止されていくのも、すべては目先のお金が基準になっている。

そんな気がしてなりません。

財務省が悪いのかどうかは別として、本当にこの国をどうするべきなのか。
考えなければなならないのではないでしょうか。

今回のコロナで、日本はものの考え方や判断基準も含めて、どうやら先進国ではなさそうだと誰もが感じたと思うのですが、いかがでしょうか。

総理大臣の飛行の安全をお祈りいたしております。