空飛ぶ電車

鉄道マニアというのは律儀というか義理堅いというか、とにかくまじめな人たちが多い。

別の言葉で言うと、頭が固い。

 

ネットでも「いすみ鉄道の黄色い電車」などと言うと、「いすみ鉄道はディーゼルカーなんだから『電車』じゃない。」というようなやり取りがすぐに始まります。

「電車じゃなければなんですか?」と聞くと、「列車だ」と言います。

でも、いすみ鉄道はほとんどの運転が1両ですから、こちらも正確に言えば「列車」ではない。

列車というのは2両以上つながってこそ初めて列車なのでありますから、単行運転を列車というのはそもそも間違っているわけで、でも、そんなことを言うと、「列車というのは定義の問題だから、1両だろうが10両だろうが列車だ。」と目くじらを立てる。

いやいや、定義の問題というのであれば、電車列車、気動車列車、客車列車のどれもが列車になるわけで、時刻表上の列車番号というのは当然電車にだって付されているわけですから、ディーゼルカーじゃなくてもみんな列車なのです。

 

とまあ、こんな具合で、収拾がつかなくなるのが鉄道マニアの悲しい習性。

話が堂々巡りなのであります。

だから、この国では40年経ってもローカル線問題というのが片付かないわけで、つまりは深い沼にはまって抜け出せないのが鉄道マニアなのですが、本人たちはそういうことにすら気づいていないまま、やれDMH17がどうだとか、VVVFだとか、TR47だとか、そもそもその沼から這い上がることをしようとしていないのですから、底なし沼を楽しんでくださいということしか私には言えません。

 

そういう鉄道マニアの人に問いたい。

だったらこういうのはどうだ!

 

 

というのがピーチの広告。

「空飛ぶ電車だぞ!」

どう説明してくれる!

 

我が親愛なる井上社長様が牽引するピーチ航空は飛行機を「空飛ぶ電車」と表現する。

これは鉄道マニア的にはどう説明しますかね。

 

実は私、普段は赤組ですが、基本的にはまんべんなくいろいろな飛行機に乗るようにしていて、用途に応じて使い分けているのですが、昨日も九州から帰ってくるときに乗ったのはオレンジの飛行機。

お仕事ではなくて個人的な用事、それも思い立ってすぐですから現在プー太郎の身には片道4万円などと言うお金は出していられませんし、行きは新幹線、帰りは飛行機などという時は車で羽田空港に行くようなことはしませんから、成田に戻ってくるのが便利なのです。

 

オレンジの飛行機だって、アイスクリームだって桃組だって、安いからと言って危険であるはずもなく、高いお金を払ったからと言って早く到着するわけでもなく、座席だって本格航空とほとんど一緒ですし、それに何よりいろいろな飛行機に乗る方が楽しいじゃありませんか。

でもって、このようなLCCと呼ばれる航空会社に乗って思うことはいろいろあるわけで、つまりはそれらがすべて発見なのでありますが、その一つに若い人たちが多いこと。ジジババの元気いっぱい団体さんなどは皆無で、私のようなオジサン出張族も1割いるかいないか。あとは皆さん若い人たち。つまり、こういう格安の航空会社がなかったら、まず飛行機に乗って旅行をしようと思わないような、そういう人たちがお客さんになっていて、そういう人たちで90パーセント以上の座席が埋まっている。新規需要の開拓というのがきちんとできているわけです。

酔っ払って終電逃してタクシーに乗ったら、お財布の中から数千円が消えてしまいますが、その数千円で北海道や沖縄に行かれるのですから、深夜バスに乗って成田空港に来て、そこから飛行機に乗って旅行をする方がはるかにValue for Moneyなのであります。

 

さて、では数千円で乗れる飛行機となると、非常に敷居が低くなるわけでありますが、これが「空飛ぶ電車」のコンセプトなわけで、つまり「電車に乗るようにお気軽にご利用ください。」というのが飛行機を電車に例えるゆえんなのですが、確かに機内を見渡すと、半ズボンのお兄ちゃんがサンダル履きで乗っているなどというのを何人も見かけます。

おもしろいですねえ、実に興味深い。

だって半ズボンにクロックスのようなサンダル履きですよ。

これ、5~60年前だったら着流しに下駄じゃないですか。 

私が子どものころは、和装の人がたくさんいて、よそ行きじゃない人たちは着流しに下駄をはいていましたから。

そして、そういう普段着姿の、下駄ばきでも気楽に乗れるような電車を「下駄電」と呼んでいたのです。

茶色い国鉄の旧型国電です。

当時は汽車に乗って遠くへ行くというと身構えておめかししていた時代ですが、下駄電ならちょいと隣町へ行く気分で気楽に乗れたのです。

 

これね。

こういう茶色い国電を「下駄電」と呼んでいました。

それから50年経って、今や飛行機がサンダル履きで乗れるようになって「空飛ぶ電車」になったのですから、ピーチの「空飛ぶ電車」という表現は、見事に言い当てていて、私には実にぴったりくるのです。

 

ところで、こういう国鉄の下駄電を私たちは旧型国電、旧国と呼んでいるのですが、私の友人の若い電車好きの男性が、

「115とか、117とかの旧国が好きなんです。」と言いました。

「ん? 旧国?」と思いましたが、鉄道マニアの皆様方は何と言いたいですか?

 

「君、何を言ってるんだ。旧国というのは国鉄の新性能電車モハ90以前の旧性能電車のことを示す言葉だぞ。」

 

とか言いたいんでしょう。

でも、そんなことを言うのはおじさんたちばかりの時代になってしまいましたよ。

彼に言わせると、旧国鉄の電車ですから、旧国電、つまり旧国。

これで良いのではないでしょうか?

 

世の中はどんどん変わっているのです。

若い人たちに向けて、偉そうに知ったかぶりをしてお説教する時代ではないのです。

 

今の時代はデコイチだってシゴナナだって、ともすれば電車なのですから。

 

 

あっ、そうそう。

 

 

 

こういう格安航空会社に乗って思うのは、機内誌の文字が小さい小さい。

いやいや、老眼のおじさんにはなんだか見えない。

そりゃそうだよね。客層としてのターゲットはおじさんじゃないですから。

こういうところにも世代を感じるのであります。

 

いやあ、勉強になりますねえ。

 

そうだ、今度、ピーチに乗ろう!

なにしろ現在サンデー毎日ですからね。